投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 2月16日(月)20時06分58秒
12日の投稿で<栗田氏の立場からすれば、ムバラク辞任から初めて民主的な選挙で選ばれたムルシー大統領の誕生までは「不可逆的変化」だったはずで、それがクーデターでひっくり返ってしまったのだから相当な驚きだったと思いますが>云々と書いてしまいましたが、これは私の全くの誤解でした。
今日、栗田禎子氏の「エジプト『六月三〇日革命』とオリエンタリズムの罠─中東に対する国際社会のまなざし─」(歴史科学協議会編集『歴史評論』763号<2013年11月号>、校倉書房)を読んだところ、栗田氏はそもそも「エジプトで起きたのは軍事クーデターではなく、国民によるムスリム同胞団体制打倒革命(=「六月三〇日革命」)という事態であった」(p57)というご見解だそうです。
なかなか珍しい見解だと思いますので、少し丁寧に栗田氏の論理を追ってみます。
ということで、とりあえず冒頭を少し引用します。
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はじめに
エジプトでは七月三日、ムルスィー政権が崩壊した。その後、現在(本稿執筆時)までの六週間の過程で強く印象に残るのは─現地の情勢のきわめて緊迫した展開は言うまでもないが─今回の事態をめぐるエジプト国民の多くの捉え方と、欧米や日本をはじめとするいわゆる「国際社会」の捉え方の驚くほどの乖離である。ひとことで言えば、今回のできごとがエジプトでは多くの国民によって二〇一一年のムバーラク体制打倒に始まる革命的プロセスの新たな局面と認識されている(特に左翼勢力の間では「六月三〇日革命」という呼称が用いられている)のに対し、欧米や日本ではこれに「軍事クーデタ」というレッテルを貼り、「民主化の後退」「アラブの春の終わり」と位置づける論調が圧倒的なのである。
そしてこれは、単なる「情報不足」や「誤解」の所産ではない。「軍事クーデタ」と規定することは、現実のプロセスにおいては、まさにそれを根拠に「国際社会」がエジプトに圧力をかけ、また「民主主義の回復」の名のもとに、いったんはエジプト国民に拒絶されたムルスィー政権(=ムスリム同胞団体制)を復活させようとする動きと直結している。事態を根底で規定している民衆の力をことさらに無視し、あくまで「軍」を主語に語ろうとする傾向、あるいはムスリム同胞団に代表されるいわゆる「イスラーム主義」勢力の性格をめぐる一種のステレオタイプ的描き方─こうした傾向は単なる「誤解」ではなく、現代の世界における中東と「国際社会」の関係性の中で生み出され、再生産され続けているものと言うことができる。
このような問題意識に基づき、以下では今回のエジプトの事態を糸口に、中東近現代史の捉え方をめぐる問題を考えてみたい。
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>筆綾丸さん
>呉座氏
なかなか活躍されていますね。
『現代思想』網野総特集も、呉座氏をはじめ「網野善彦主要著作10冊を読む」の執筆者となっている中堅・若手研究者にもっとスペースを与えて自由に書かせてあげたら遥かに学問的に価値のあるものになったでしょうが、出版社には営業的な事情もありますから、まあ、仕方ないのでしょうね。
>『後白河天皇』
私も今は中世前期に戻れないのですが、後で読んでみたいと思います。
>イラク国立交響楽団
ウィキペディアの記事を読んでみたのですが、2003年で終わってしまっていて、ちょっと中途半端ですね。
もう少し知りたいこともありますが、栗田氏の論文を読んだらなんだか少し熱が出てきてしまったようなので、今日は早めに寝ます。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
イラク国立交響楽団 2015/02/15(日) 22:24:07
小太郎さん
http://www.asahi.com/articles/ASH1M71Z5H1MUHBI03F.html
シンクレティズムのシンフォニー・・・どんな『巨人』か、聴いてみたいですね。
-------------
イスラム教スンニ派やシーア派、キリスト教、クルド人。様々な背景を持つ団員の奏でる音色が、ひとつの指揮棒の下で共鳴した。
-------------
http://en.wikipedia.org/wiki/Iraqi_National_Symphony_Orchestra
http://www.greekworks.com/content/index.php/weblog/extended/the_sweet_sweet_sound_ofwhat_exactly_the_iraqi_national_symphony_orchestra_/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AE%E5%B9%B4%E8%A1%A8
イラク国立交響楽団のワシントン公演(国務省後援)の2003年12月9日は、フセイン大統領拘束(12月13日)の直前だったのですね。
https://twitter.com/goza_u1/status/520714825727361024
今日、朝日新聞で呉座氏の連載を初めて目にしましたが、御座候さんも有名になりましたね。
http://www.minervashobo.co.jp/book/b190338.html
美川氏は後白河の評伝を完成されたのですね。後白河への関心は薄れてしまいましたが。
小太郎さん
http://www.asahi.com/articles/ASH1M71Z5H1MUHBI03F.html
シンクレティズムのシンフォニー・・・どんな『巨人』か、聴いてみたいですね。
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イスラム教スンニ派やシーア派、キリスト教、クルド人。様々な背景を持つ団員の奏でる音色が、ひとつの指揮棒の下で共鳴した。
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http://en.wikipedia.org/wiki/Iraqi_National_Symphony_Orchestra
http://www.greekworks.com/content/index.php/weblog/extended/the_sweet_sweet_sound_ofwhat_exactly_the_iraqi_national_symphony_orchestra_/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AE%E5%B9%B4%E8%A1%A8
イラク国立交響楽団のワシントン公演(国務省後援)の2003年12月9日は、フセイン大統領拘束(12月13日)の直前だったのですね。
https://twitter.com/goza_u1/status/520714825727361024
今日、朝日新聞で呉座氏の連載を初めて目にしましたが、御座候さんも有名になりましたね。
http://www.minervashobo.co.jp/book/b190338.html
美川氏は後白河の評伝を完成されたのですね。後白河への関心は薄れてしまいましたが。