投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2016年 8月31日(水)22時25分17秒
長谷部恭男氏等は内閣法制局の憲法9条解釈を「国民的熟議の賜物」を絶賛されていますが、憲法学者の中には内閣法制局自体を絶賛される人もいて、その代表は南野森氏(九州大学教授)ですね。
南野氏と内山奈月氏の共著、『憲法主義─条文には書かれていない本質』(PHP研究所、2014)には次のような記述があります。(p171以下)
------
内閣法制局という超エリート集団
この内閣提出法案をつくる過程に、日本の法律がきちんとできている理由、違憲判決が少ない理由があるのです。
唐突ですが、法律の文章って難解だと思いませんか?
◆内山 難解です。
そうですよね。理解するのも難しいけれども、書くのもすごく難しいのです。
たとえば、「又は」と「若しくは」の意味の違いってわかりますか?
◆内山 え? 同じじゃないんですか。どっちも「or」ですよね。
普通の日本語ではそうですが、法律の言葉では使い方が違うのです。詳しいことは、もっと法律に興味が出てきたら調べてほしいのですが、「又は」と「若しくは」で条文の意味する内容が変わってきてしまう。
◆内山 へー!! そうなんですか!
法律をつくるお役所の役人は専門家ですから、法律の言葉づかいには詳しくなります。それでも間違えてしまうことはあるのです。そこで、閣議に出す前に、内閣法制局という法律のプロに審査してもらいます。
-------
法律用語としての「又は」と「若しくは」の用法は非常に複雑で、以前少し検討した特定秘密保護法の「テロリズム」の定義の場合、著名弁護士や一橋大学名誉教授・村井敏邦氏あたりですら誤解するような事態になっていますね。
「サカルトヴェロ」(筆綾丸さん)
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/8122
ベートーヴェンに魅せられた日本共産党最高幹部
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/dc125b11a74cca3bcb23ee6d6a0ba92f
犬も歩けばテロリズム
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/e598f84f3344562d0dea26bca15a45bc
一橋大学名誉教授・村井敏邦氏の見解
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/e64f166b1041ad56604cd8bf9b132789
民科法律部会の人
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/b24999bfbff8dff89e26d857784b9af5
上記投稿をした時点では、私も誤解した側を批判していましたが、考えてみれば法律の専門家ですら誤解しかねない複雑な言い回しをする内閣法制局の側にも問題がありますね。
数字を使ったり、意味の上で纏まっている部分を括弧で括るといった新しい表現方法を工夫すれば、誤解の余地のない文章にすることは充分可能ですし、場合によっては複雑な文章構造の部分について条文とは別の解説を付するといった手段もあるはずです。
ま、それはともかくとして、南野氏の内閣法制局絶賛はまだまだ続くのですが、いったんここで切ります。
なお、「著者略歴」によれば、共著者の内山氏は次のような方です。
------
内山奈月(うちやま・なつき)
1995年神奈川県生まれ。人気アイドルグループAKB48のメンバー。愛称なっきー。2012年5月AKB第14期研究生オーディションに合格。13年6月日本武道館における研究生コンサートで日本国憲法を暗唱して話題となる。同年8月に昇格してAKB48Team4に所属。14年4月AKB48TeamBに移籍、慶應義塾大学経済学部に入学。同年6月AKB48選抜総選挙で初のランクイン。
------
内山氏が生年を明記しているのに対し、併記された南野森氏については「京都府生まれ」とあるのみなのがちょっと不思議ですね。
ま、別の本には1970年生まれと書いてありましたが。
>筆綾丸さん
>「ゲゲゲの鬼太郎」に出てきそうな感じ
小熊英二氏は、もしも世の中に貧乏神というものが存在するとしたら、きっとこんな風貌なのだろうなと思わせる人ですね。
>「明確な基準と厳格な手続き」
手続きはともかくとして、「明確な基準」について木村草太氏は定年制みたいなことを考えているのですかね。
私はそんなのは不要だと思いますが。
特別法ではなく皇室典範の改正で、という方向には賛成です。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
小太郎さん
「熟議」という奇妙な造語は「熟女」の影響かもしれませんが、「熟議の積み重ね」となると、奇妙を通り越して間抜けな感じがしますね。日本語として変だ、というごく普通の言語感覚はないのでしょうか。すでに「熟議」なのだから、「積み重ね」は不要です。漢語に通じた昔の知識人ならば、fined and refined に適切な訳語を与えたと思います。熟れ過ぎれば、あとは腐るだけ、というのが自然現象です。熟れ過ぎたメロンのような美徳のよろめき(?)。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12526867.html
25日付朝日新聞の同一紙面に、小太郎さんのお嫌いな小熊氏の写真がありますね。「ゲゲゲの鬼太郎」に出てきそうな感じで、いまどき、なぜ、こんな格好をして町中をうろついているのか、まったくもって不可解です。背後の電車が東急東横線だとすれば、慶應日吉キャンパスにおける講義の帰途かもしれませんが、車内の影が無賃乗車した歴史社会学的な妖怪のように見えてきます。
追記
小熊氏の『生きて帰ってきた男』(岩波新書)は、僭越ながら、良書だと思いました。
木村氏は、「生前退位のための明確な基準や厳格な手続きを設ける工夫が必要になるだろう」「生前退位を認めるなら、明確な基準と厳格な手続きを確立し、皇室典範にきちんと書き込むべきだろう」とされていますが、皇室典範をどのように修正すればいいのか、具体例が知りたいところですね。
追記
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO003.html
皇室典範第4条を、
「天皇が崩じたとき又は退位したときは、皇嗣が、直ちに即位する。」
とし、
摂政を規定した第16条は1項のみ残し、第2項を
「天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、又は高齢により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議を経て、退位する。」
とした上で独立の条文として第4条の前に置く・・・というようなことが考えられますが、これが「明確な基準と厳格な手続き」と言えるかどうか。また、退位後の身分規定は必然ですが、ニュートラルな巧い表現はないものか。なお、国事行為に含まれない公務に関しては、一切言及しないほうがいいと思います。国事行為に含まれない公務というのは語義矛盾かと思われるので、法としては従来通り見て見ぬふりをする・・・。