あまり本を読まない人は、この本を読むといい。絶対に本が好きになるから。薄くて読みやすいし。
妻子と別れ、孤独な生活を送る中年シナリオ・ライターが、ふと立ち寄った故郷浅草で、幼い頃に死別した両親そっくりの夫婦と出会うというファンタジックな小説である。彼をとりまく現在の孤独が、ノスタルジーの美しさを際立たせている。
淡々とした「軽い」文体で物語は展開する。この軽い文章で都会の孤独と、主人公が身を置くテレビ業界の虚飾があっさりと描かれる。主人公の一人称の語りでありながら、この距離の取りかたは怖い。人生への嫌悪と、死別した両親への愛惜。仕事ではある程度の結果を残したが感情生活のほうは何も残っていない。妻も息子も失った。いや、仕事だって、自分でなくても代わりが務まる人間はいくらでもいる。では、自分はこれまでの人生で一体何をやってきたのだろう、何もかも徒労だったのだろうか、というような。
自分にとっては何気ない瞬間が、別の誰かにとっては生死に関わるほど決定的な、重い瞬間になることがありうるという、とても恐ろしいことを書いているのだ。
そしてこの世のものではなかった、両親との別れの場面は泣ける。48歳になった息子が35歳の父親の前で「僕はちっとも立派じゃなかった。あなたたちの方がどれだけ立派だったか。」そうこの本は人生を教えてくれる。
映画も素晴らしい(最後だけはいただけないが)。見たらかならず泣くよ。
妻子と別れ、孤独な生活を送る中年シナリオ・ライターが、ふと立ち寄った故郷浅草で、幼い頃に死別した両親そっくりの夫婦と出会うというファンタジックな小説である。彼をとりまく現在の孤独が、ノスタルジーの美しさを際立たせている。
淡々とした「軽い」文体で物語は展開する。この軽い文章で都会の孤独と、主人公が身を置くテレビ業界の虚飾があっさりと描かれる。主人公の一人称の語りでありながら、この距離の取りかたは怖い。人生への嫌悪と、死別した両親への愛惜。仕事ではある程度の結果を残したが感情生活のほうは何も残っていない。妻も息子も失った。いや、仕事だって、自分でなくても代わりが務まる人間はいくらでもいる。では、自分はこれまでの人生で一体何をやってきたのだろう、何もかも徒労だったのだろうか、というような。
自分にとっては何気ない瞬間が、別の誰かにとっては生死に関わるほど決定的な、重い瞬間になることがありうるという、とても恐ろしいことを書いているのだ。
そしてこの世のものではなかった、両親との別れの場面は泣ける。48歳になった息子が35歳の父親の前で「僕はちっとも立派じゃなかった。あなたたちの方がどれだけ立派だったか。」そうこの本は人生を教えてくれる。
映画も素晴らしい(最後だけはいただけないが)。見たらかならず泣くよ。