音楽性の全く異なる今回の4バンド中、一番の大所帯がリーダー「本田雅人」率いる1997年結成のビッグバンド。メンバーは流動的なようでTPでエリック宮城氏、女性TBが参加する時もあるようです。
ビックリしたのはここのステージ後方中央が開閉してキャスター付の台に乗せられたドラムセットやアンプ群が速やかに移動セッテイングできること。
よくよく考えて見れたPMFクラシック・コンサートも開催されるのですから、このくらいのスペースは必要ですよね。ステージよりも裏スペースのほうが広かったりして。
ズラッと並べられたマイクスタンド、イス、譜面台だけでも壮観。
原田知代バンドの時には熱中症になりそうなくらいの暑さでしたが、若干ここにきて風がヒンヤリしてきました。
あれ!?ドラム・チェックのためにすでに則竹裕之氏が座っているではないですか。
30分の転換作業を終えて派手なBGMが流れ曲者バンドマン達が堂々の入場。そして万来の拍手に迎えられて本田雅人も中央フロントにスタンバイ。
開巻2曲ぶっ続けで超絶技巧のド迫力サウンドを披露。
ジャズ、フュージョン、ビッグバンドなどのファン達を一気に虜にしちゃうくらいの狂気乱舞、入魂のプレイ。
ビッグバンドを目前で生体験するのは初体験ですが、お口あんぐり状態で圧倒されっぱなしでした。すごい迫力でカッコイイ。あれだけ演奏できたらさぞかし気持ちいいでしょうね。
則竹氏のテクニックはあえて言うまでもありませんが、日本ドラム界屈指のテクニシャン。カウント一つとっても複雑なんですよ。
それを涼しい顔してさらっとこなしちゃうんだから参ります。
最初の本田氏のMCで「あまり有名ではないオリジナル2曲ではじまりましたが(笑)かなり以前にこの同じステージに出演した時はめちゃくちゃに寒かったのでメンバー達にちゃんと着こんでくるように!と言って全員乗り込んだのですが、正直言って今は暑いです!!」
全員が黒を貴重とした服装で統一。エンターテイメント性に富んだ音楽性の中、本田氏の合図で次々に正面中央のマイクに歩み寄ってきて入れ替わりでソロを吹きまくる名手達にも惜しみない拍手がおくられます。
個人的にはルックスもピカイチ個性的なトラペッター、ルイスバジェのハイノートヒットには思わず仰け反って鳥肌が立っちゃいました。絶対にメイナード・ファーガソン、ビル・チェイスの影響大でしょう。「チェイス」の影がちらほら垣間見えました。
彼は郷ひろみのビッグバンドでもテレビ出演していましたね。
長身ベーシストの井上陽介氏はウッドベース、エレキベースを交互に持ち替えソロからチョッパーと縦横無尽に弾きまくり。ミキサーのところにはいつの間にか、次に本番を控えている世界のスーパーベーシスト、ウィル・リーが見物。井上氏とおどけあっていました。そんな光景までマジかで見られるのもこの席の醍醐味。
ステージも中盤になった頃に、スペシャルゲストを本田氏が紹介。
アジアのジャズ歌姫マリーンです。
曲開始後のイントロで現れるのか、最初から出てくるのか一瞬本田氏はギクシャクしましたが無事「シング・シング・シング」でマリーンが艶やかにかつ満面のスマイルで登場!
原田知代は可憐な佇まいを終始貫いていましたが、マリーンは一転して妖艶でセクシー炸裂。スタイルも変わらず抜群でダイナマイト・ヴォイス。
たどたどしい日本語と巧みな英語MCも好印象。
大ヒット曲「マジック」も大受け。声域の広さ、高音域の伸びは衰え知らずですな。ここまでの2曲はB,Bステーションが彼女とのコラボレーションで発表したアルバムにも収録されているとのこと。
「暑いね。私脱いじゃうよ~(と、ここで客席に背中を向けて自分でムードミュージックを口づさんで上着を色気たっぷりにおどけてはだける)私、何やってるんだろう(笑・・・スタッフがジャケットを受け取りに来てくれたので一言お礼)。1986年角川映画キャバレーでレフト・アローンを歌わせてもらったんだけど、それからヒット曲がないんだよね。」(この曲はビリー・ホリディの伴奏者であったマル・ウォルドロンが彼女に捧げた1959年発表の追悼曲。ビリー作詞、マル作曲の素晴らしい永遠の傑作)
と、グランド・ピアノの横に歩み寄って「(ビッグバンドのほうを見て)一緒に演奏したいなら勝手にやってね!!(結局P&VOの2人のみでした)」。しっとりとしたバラードをエキゾチックに聞かせてくれました。うっとりするほどです。
ジャジーなアレンジを施したクィーンというよりもフレディー・マーキュリーの涙無しでは聞けない壮大なるロックアイコン(と私はずっと思っています)「アイ・ワズ・ボーン・トウ・ラズ・ユー」で盛り上がり。
マリーンは引き上げ際に照れる本田氏の右頬に熱いキス。
アンコールもお約束のビッグバンドサウンドをぶちかましてくれました。人数が多いので引き上げてからの再登場はタイムロスのためにその場で応えてくれて爆笑!やっぱりこういうものはCDではなく生で体験するのが一番と痛感した次第。
私の隣席のオジサンは前回もマリーンを観た事があるそうで、その時は映像収録があったらしくて衣装はもとより口紅、マニキュアから髪型、しぐさから表情にいたるまで、常にビジュアル面も考慮した意識の高さに「さすがプロフェッショナルだなあ」と感心したそうですよ。
写真は本田氏T-SQUARE最後のライブ映像が収められている「FAREWELL&WELCOME LIVE1998M」のレーザーディスク(!)。
7曲入り、53分。もちろんドラマーは則竹氏。
補足ながら「マンハッタン・ジャズ・オーケストラ」がブラスロック・トリビュートCDを発表して来日した際、国営放送の音楽番組に出演。
マリーンはゲストシンガーとしてブラスロックを余裕で熱唱してくれました。