元シカゴのオリジナル・テクニカル・ドラマー、ダニー・セラフィン率いる本格派アメリカン・ブラス・ロックバンド「カリフォルニア・トランジット・オーソリティ」奇跡の初来日公演!
この4月19日、東京ビルボード第2部で私の興奮度はピークに達します。
東京公演全4回制覇は私ぐらいみたいですよ。
ステージごとに、色々とテコ入れや変更事項が見受けられて面白いです。
ここいらへんともなると、超マニアな世界になっちゃうんだけど・・・。
さあ、泣いても笑ってもこれで私のCTAライブ観戦はラスト(次の日の大阪でジャパンツアーは締めくくり)。
力がメキメキと入っていますよ。CTAのメンバー達の意気込みも、ビシビシと伝わってきます。
今だにセット・リスト表へ書きこまれているのに、演奏されていない曲が2曲もあります(CTAセカンドアルバムのタイトル・トラックとシカゴ珠玉のロックナンバー)。
今までも私の個人的思い入れタップリにこのライブ・レポートを、ダラダラと長文、駄文織り交ぜて書き連ねて参りましたが、ここいらで佳境に達しそうです。
もうしばらくお付き合いくださいませ。よろしく!
第1部のライブが終了後、一旦ロビーにて清算(コンサートと飲食料金)を済ませて玄関へ。
すでに第2部の開演を待ち焦がれている入場者達がズラリと並んでいます。スタッフの案内に従い整理番号を呼ばれた順に中へ。(チケットはありません)
私はもう4回目なので、出たり入ったりしていてすっかりとビルボードとも顔なじみ。
階段を降りて、希望の席を確保してもらいました。
今度の席は正面でボーカリスト、トニー・グラントの位置。
テーブルに座って2人目ではありますが、ど真ん中。
音を重視して楽しむ方はちょっと後方真ん中を好むのですが、ミーハーな私は1mmでもミュージシャンに近いポジションを優先。
つまり今回の4ライブは、全て違う位置で観戦したというわけです。
ドニー、マーク、エド、そして今回のトニー。
かぶりつきなのは当然です。
一瞬たりともマバタキするのがもったいないくらい、この目に焼き付けておきますよ。
とりあえずはこれで見納めだ!
開場 20:45
開演 21:30
例によって、ドリンクはジンジャー・エールの甘口を注文。
周囲に着席している日本中から集結したシカゴ・ファン達と歓談、ステージをバックに写真撮影、近況報告、これまでに観たCTAライブの感想や今後のシカゴ・ファミリーに対する希望意見なんかを賑やかに述べ合う。
一般客(あ!?我々もですがね・・・笑)からしたら、私の存在はやはり異常な男に映るのでしょうね。
たしかに故郷の北海道でも同じ状況ではありますが、今回の東京では素敵な音楽好き女性達からたくさんお声をかけていただき写真にもご一緒に納まってくれて、良き思い出がたくさんつくれました。あ!?女性達とのツーショットはもったいないからここには載せません・・・あしからず!
オーダーを受けてメニューをテーブルに運ぶ際の食器音が響く中、ビルボード女性スタッフのアナウンスが流れて(注意事項含む)います。いよいよだ。
ステージ後方は一面ガラス張りで美しい大都会のビル群が望められたのですが、カーテンをひかれて準備完了。
それまでの穏やかなBGMが止まって、いきなりの暗転。
観客達の歓声が沸き起こる中、スタッフに導かれて階段を降りてきたCTA。
ダニーを先頭にメンバーの皆も、バイタリティに満ち溢れています。
東京ラストナイトだからなのか、意欲満々。
ステージに上がるまでファン達の握手攻めにあい、すでにグシャグシャ。
それでも余裕の表情で、CTAは笑顔を絶やしません。
もちろん私も、精一杯の声援をメンバーの名前とともに送ります。
すっかりと憶えてくれているらしく(4回目だもんなあ・・・)私のCTA黒キャップを目印にアイコンタクトを送ってくれたり握手してくれたり、クールに拳を突き出してくれたりします。
よくよく考えてみたら超至近距離で、CTAと合計6時間も自分がいられたわけだね。
締めくくりも、これまたライブらしいライブといえる内容となりました。
メンバー全員が、セットアップオーケー!
「ダニー!ダニー!」と熱烈に叫ぶ声と、拍手が静まった頃合いを見計らったようにダニーの背面頭上に掲げられた巨大スクリーンに映しだされたのは、若き日のダニー・セラフィンのドラムソロ(タングルウッドでのライブ映像)と、ダニーが多大なる影響を受けた伝説の故バディ・リッチのダニー評。
これが左右2分割に編集されていて効果絶大。
ダニーの2枚組教則DVDからの引用。
ロックの殿堂入りにおける、ダニーの嬉しそうなスピーチ(ピー音連発には大爆笑)。
低く渋い男性によるメンバー紹介から「AND NOW!PLEASE WELCOME!・・・C・T・A!!」
<2nd stage>
1. Introduction Overture
2. Make Me Smile~Now More Than Ever
3. Questions 67 & 68
4. Turn Your Love Around
5. You're the Inspiration
6. Turn Back The Pages ※Donny Ducas sings / from『STILLS』
7. Ain't It Time ※Donny Ducas sings / from『HOT STREET』
8. Dialogue
9. I Don't Wanna Live Without Your Love
10.Look Away
11.Ed Roth Piano Solo ~( Does Anybody Really Know What Time It Is???・・・Intro?)~Take Me Back To Chicago
12.Mark Bonilla Guitar Solo ~ Color My World
13.Hard Habit to Break
-Encore-
14.25 or 6 to 4
ダニー入魂のスティックカウントから「イントロダクション」でCTA戦慄の狼煙をあげる。
熱く炸裂するブラスロックサウンドで戦闘開始。これこそが往年のファン達が待ち望んでいたインパクトだ。
今時これほどに硬派で潔いバンドってあるかい?
トニーによるテリー・キャスとは一味違う、ハイトーンをフューチャーしたリード・ボーカルが何度体験しても新鮮だ。
シカゴのデビューアルバム幕開けを請け負った曲だけに、濃厚なエッセンスが凝縮されている極め付けがトップナンバーだ。これ一発で全員ノックアウト。でもこれだけではCTAは許してくれなかった。
ライブにおけるバンド・マスター・エドワードの大きなジェスチャーに誘導されて、間髪入れずにダニー4カウント。
「ぼくらに微笑みを」だ。
あまりにも有名なホーン・セクションによるイントロが飛び出すはずが・・・・あれれれ・・・・?
ブラスが鳴らないで、ギター、ドラムだけではじまっちゃった・・・。
メンバー達は苦笑いのままで曲は進行。
誰が間違ったのか、食い違ったのか・・・・不明・・・。
ダニーさんがライブごとに本番ギリギリまで、セット・リストが二転三転するからこういう事故が勃発しちゃうんだねえ。まあ、これはこれで貴重なものを見せてもらったということで、私にとっては痘痕も笑窪なんですがね(笑)。
ブラスリフはマークのギターがなぞっていき、ボーカル直前になってやっとブラス隊が合流してきました。
ボーカルはもちろんビル・チャンプリン。燻し銀のソウルフルな喉で目一杯に唸ってくれましたよ。これで無事にし切りなおしだ。
私も思わず唸ってしまったりして・・・う~ん・・・渋い・・・。
ダメオシとも言える「愛は限りなく」に突入。これ小曲なんだけれども、インパクト絶大なダイナマイトナンバー。一旦ブレイクする部分があるのですが、普通ならば瞬間的にダニーの素早いジャジーなドラムソロがはじまるところ、なかなか叩きださないのでそのうちに静寂が・・・・・とそのタイミングでダニーのあのスタジオ・オリジナル・バージョンのお馴染みフレーズが飛び出した!そこの部分をわかる人達は狂ったように「イエー!」。全くもう憎い男だねえ。もうこれで私は完全に息の根を止められてしまいました。だって今までこのアレンジでは、一度もやってなかったのさ。
もしかしたらイントロでのトラブルで喝を入れる、べくダニーが咄嗟に機転を利かせたお遊びだったりして。だとしたら究極の贅沢なスリルを我々は味わえたのかも。
無事にエンディングを迎え(今回はブラス隊のズレもなかった)「ダニー・セラフィン!」の名前が堂々とコールされました。
メドレーでエドによるピアノのイントロから「サタディ・イン・ザ・パーク」
ビルのハモンドが絶妙に絡む。
スキン・ヘッド・ベースのトラヴィスは、それまで控えめに黙々とプレイしていたのが、ここではリード・ボーカルも兼任。
フロントのマイク・スタンド前に立って、スポット・ライトを独占していました。
彼はロバートやピーターのパートを受け持つ多彩なミュージシャン。
小柄なんだけど、体格はガッシリしていて貫禄タップリ。
ダニーMC「トラヴィス・ディビス!」
ダニーはドラムハイハット横に置いてあるマイクを手に、MCもこなしているのです。時々はビルや他のメンバーからも突っ込みを入れられてたけど和気藹々なムードが漂っていて和やかです。
時にはカンニング・ペーパーをチラ見しながらも(笑)、リーダーとしての重責を全うしています。
「QUESTIONS67&68!!」「YEAH!!」
このタイトルが告げられただけでも絶叫、失禁モノだ。
「1・2・・・」からのドラムフィル。
次回には是非とも本家のように日本語バージョンで披露して欲しいなあ・・・なんて贅沢過ぎ?
CTAは単なる回顧主義のシカゴ・コピーバンドなんかではありませんよ。
ダニーの揺ぎ無い基本コンセプト。絶対にそうに違いない。
だからこそ、これだけのツワモノ実力者や元シカゴのメンバーや関係者らが終結しているわけだ。
もちろんダニーの人徳もあるのでしょう。
これはもう一つの立派なシカゴ。本家も、うかうかしていられないくらいの勢いだ。
ちょっと前までシカゴに在籍していたトリスも、十分すぎるくらいのベテラン・ドラマーとしてプレイしていました。
彼なりのこだわりとプライドと解釈で初期シカゴの曲を叩き、ダニーとはまた違った魅力を発揮。
でもそれを生み出したダニーのドラミングを聞いていると「ああ、本物だあ!まさかまたダニーに会えるなんて、夢見ているみたいだあ」と思い入れが改めて深まってしまうものなのですよ。
もちろんトリスのドラミングだって、申し分なしのテクと個性を誇っていますよ。人間性も折り紙つき。
全然2人はタイプの違うドラマー同士なので、そもそも比較するという事体が愚かなこと。
「サンキュー!トニー・グラント!イエー!」
ここでビルにMCバトン・タッチ。
前説「次の曲は私とジェイ・グレイドンとTOTOのスティーブ・ルカサーとで作ったもので、グラミーも受賞した曲。
ジョージ・ベンソンが歌って大ヒット!(と言って手を高々と上げる)私がセルフカバーしたんだけど(と、手を下のほうに持っていく・・自虐ネタ・・・もちろん大爆笑)・・・・ターン・ユア・ラブ・アラウンド!・・・1・2・1・2・3・・・・」
ビルの指パッチン・カウントに導かれて、ダニーの真骨頂でもあるジャズ・ドラムが轟く。さすが昔取った杵柄だけに、そんじょそこいらにいっぱい転がっているロックドラマーには、決して真似のできないグルーヴだ。
なんとタカくんが、エモーショナルなサックスソロで彩を添えてきた。
それまでの流れとは一変。
このビルボード会場にジャスト・フィットする一場面。
ダニーのシンバル刻みが痺れさせてくれます。
これ以降はビルのコーナーに突入。
序盤での落ち着いた歌心に満ち溢れたパートでは、女性の観客達もウットリと聞き惚れていましたが、後半へ向かうにつれてスィングの度合いが増してゆき、ビルのオルガンソロでグイグイと牽引しつつもパワーアップ。
ジョージ・ベンソンのバージョンとは、かなり違う解釈のもとにアレンジされたこれもまた大人のロックだ。
「ビル・チャンプリン!・・・・17アルバム・・・ピーター・セテラ!!」
もうこれでわかったでしょう!「ユア・ザ・インスピレーション」だ。
ここではドップリとシカゴの大ヒット・パワー・バラードに、浸りつくしちゃいましょう。
天高く突き抜けるほどに、爽やかな高音で歌い紡いでくれるトニー。
マークの繊細なるギターソロのトーンも特筆モノ。
CTAって持ちうる時間内で、色々な世界を目まぐるしく垣間見せてくれるバンド。
「トニー・グラント!」と高らかにコールするダニー。
さて、次に飛び出すのは何かな?
ギターを抱いたドニー・ディカスがゆっくりとステージに上がってきた。今回最大のサプライズと来日直前プロモーション告知ビデオの中でダニーとビルが謳っていたのがこれ!
ほとんどの観客が、ドニーの姿を観るのは初。
「ドニー!ドニー!」と皆に絶えず呼ばれて、本人もご満悦。
「ヘイ、エヴリバディ!ドニー・ディカス!・・・ドニーサン(笑)」
皆も「ドニーサン!ドニーサン!」
ダニー曰く「オー!ドニー・ボーイ!」(日本では「ドニー」と発音しますが、本来はダニー」と発音します)
すかさずマークが「ダニー・ボーイ」のフレーズをギターでお披露目して口ずさんだら、これがすこぶる受けちゃった!
「ターン・バック・ザ・ペイジス」(スティーブン・スティルスとの共作でアルバム「スティルス」のトップに収録されていた、これぞ典型的なるアメリカン・ロックの真髄)
とにかくメンバー中、一番アクティブにアクションを繰り広げていたのがドニー。ギターに歌にと一つところにジッとしていない。
だからシンバルやベースヘッドにぶつかりそうになるも(見ているこちらサイドがヒヤヒヤもの)そこはそれで百円練磨のドニーくん。
ひらりと鮮やかにかわしてみせる。トレードマークの仰け反り大股開きのポーズもバッチリ。
スラリとした体型も若々しくて、スィート・ヴォイス。
これだけ元気なのにドニーくん、なんでもっと早く我々の前に現れてくれなかったんだよ。日本のファンたちはずっと気を揉んでいたんだよ、マジでさあ。
と、ここで今回の来日公演中最大のトラブルが勃発!!
なんとトラヴィスのベースの音が出なくなってしまった!!
さあ、大変だ。でも当の本人たちは至って余裕の表情でトーク。こんなシーンを間近で目撃できるのも貴重だ。
トラヴィスを中心にビル、ダニー、更にはエドも加わってああでもない、こうでもないとヒソヒソ(でも私には生声が聞こえる)。ビルボードの男性スタッフも飛んできて色々とチェック。
アンプの裏側を確認してみたり、エフェクターのインプット部分を抜き差ししてみたり。
「ケーブルじゃあないの?」「DIじゃあないの?」「なんてこったい!スケアリー・べースだあ・・・(笑)」
スペアのケーブルに接続するも症状は変わらず。
ダニーは場ツナギとしてトーク・ショーを開始(ダニーの声がたくさん聞けるのも楽しいものだ)。
「サンキュー!長い間のご無沙汰!」といって頭頂部を見せてくれる(大爆笑)
「次に来る時はそんなに待たせないよ、ジャパン!」感動の拍手だあ!
「次にお送りする曲はシカゴのアルバム・ホット・ストリートから・・」と言いかけたら「ブツブツ!」と大きなノイズが発生。
これはちょっと深刻な事態だ。
女性のスタッフも加わって、エフェクターも調べる。
もしかしたらベースに問題があるのかも?と判断したのか4弦ベースのアイバニーズを持ってくる(トラヴィスは5弦のフェンダー・ジャズベース・ナチュラル)。この場面ではなぜだか大きな歓声が沸き起こった。それどころではないんだけどなあ・・・。
このアイバニーズは全く私が持っているものと色も同じなのでビックリ。でもこれとトラヴィスのとではプレイヤー自身に違和感があるのでは?かたやパッシブ、かたアクティブ回路のアンプ。そしてネックのグリップ感覚が両極端。
トラヴィスはそれを肩にかけてみてチューニング。エドが音を送る。でも結局は音が出ない・・・。
もうかなりの時間が経過。1曲分はロスしたでしょうね。
でもメンバー達の愉快なおしゃべりでちっともだれない。珍しい光景だもんね。ライブは一時中断だ。
アンプのヘッドを、アンペグからギャリエン・クリューガーに載せ変えた。
その最中、ビルと、ダニー、マーク、タクくん、エドらによる即興がはじまった。
手拍子にのってブルース・ジャムセッション。
ビルのミディアム・テンポ・オルガンを主軸にタカくんのヒステリックなサックス・ソロ、そしてダニーの職人技ともいえるアタック・ビートが延々とプレイされた。
ヘッドが故障の原因と判明!問題解決だ!
明るく振り返りながら、トラビスが観衆に問いかけた「ハロー、エヴリバディ!!」
「イエー!」
トドメはマークのハンマリング・オンで。
ライブ再開だ!!「サンキュー!」
ドラムのオカズから「エイント・イット・タイム」
ダニーとドニーによる共作。
「ホットストリート」の解説ではフェイド・インするイントロがまるで回転舞台を連想させる、と書かれていた、ひじょうに印象的でへヴィーなリフを主体とするロック。中間部にドニーが「ハイ!」と合の手を入れていたんだけど、ここでは残念ながらやってくれなかった・・・まあ、それをやっても、ニヤリとするのは私ぐらいのものか。
シングルにはなっていないけど、ドニーにとっては思い出深き1曲だからこそ選んだのでしょう。
ドニーが繰り広げる真剣な表情でのギター・ソロは、年季の入ったフィンガリングばかりで説得力があって聞き応えありますよ。
通常、一番有力候補で妥当なとこは「アライブ・アゲイン」なんだろうけど(実際にUSツアーにおけるドニーは、この曲をトニーとのツインボーカルで披露しています)、そうとうなこだわりがある模様。「ターン・バック・・・・」しかり。
ダニーMC「ドニー・ディカス!」
今度はマーク・ボニーラによる乾いたコード・カッティングが響き渡る。
「ダイアログ・パート1&2」
ドニーはフェンダーだったけど、マークはマーシャルJCM1ハーフのヘッドとトップSPでのコンビネーションアンプ。
これにヤマハ・パシフィカギターを接続。
往年のアニメ・キャラクターがビッシリと貼り付けられたボディがとてもキュート。
マークはアニメ・マニアなのかなあ?
ビルとトニーによる、対話形式のシカゴⅤからのヒット曲。
オルガンとベースが縦横無尽に暴れまくるラインを経て、パート2での会場全体大合唱が一つの山場として大盛り上がりだ。
この一体感が最高に至福のヒトトキ。本家よりも時間の都合でエンディングでのアカペラは短めだけど、かえってくどくなくて潔し。バッチリぶつ切りエンドも気持ち良かったしね。
「ビル・チャンプリン!トニー・グラント!」
「サンキュー・オールライト!オーケー!」
ここでドニーはいったん、ステージを後にします。
皆が「ドニー!」と呼ぶ声を背に受けながら・・・。
再度ビルのダンディなコーナーです。
ドラマティックなキーボードのイントロから、シカゴの「I Don't Wanna Live Without Your Love」
ビルのように震えるほどの魂の熱唱が備わったのならば、私は寿命が多少縮んでも一向にかまわないよ。
しかし改めてこうして聞き入ってみると、やはり心に染み入る名曲中の名曲ですなあ。
当然のごとく万雷の拍手。
ダニーとビルとの、やりとりの後は「ルックアウェイ」
ビルが唯一ギターを手にして弾き語りではじまる、これもシカゴのモンスター級ビッグ・ヒット。
もうこれもビルのソロとして歌い継がれていく、代表的金字塔ですね。
ほどよくエフェクターがかけられた、ギターの音色も素晴らしい。ボスのコンパクトが主体でコーラス、リバーブ、ディレイなど。
それをフェンダー・ストラトキャスターに連結(鮮やかなレッド・サンバーストが美しい。PUは白のセイモア・ダンカンSSH配列)
ダニーはこのようにシカゴの曲を主体にすえて、各メンバーのソロやボーカルを均等にまんべんなくフューチャーして散りばめた、セット・リスト作製に毎回苦慮するわけだ。
ダニー「ビル・チャンプリン!オールド・ガイ!」ビル「オールド・ガイ!?」
ダニー「エド・ロス・・・・ピアノ」エド「ビー・クワイエット(笑)」
エドの存在は正直な話、CTAまで全く知らなかったのですが、この人の才能は計り知れないほどですよ。
これから要注目のミュージシャン。
グランド・ピアノに座りなおして弾かれる鍵盤タッチが幻想空間へと誘ってくれます。
「フリー・フォーム・イントロ」
前半部分はアヴァンギャルドなクラシック調。
一旦、止まって「エキュスキューズ・ミー」
何を始めるのかと思ったら、まさかまさかのディープ・パープル「スモーク・オン・ウォーター」
イントロのリフから歌メロまでをも、ずっと弾き続けて手拍子の要求。
最後の最後は、ジャズ・テイストで締めくくってくれました。
当然この流れからいけばあの曲です。
ダニーがスティックを叩いて「1・2・3・・・(ドカドコッ)・・・・」
あれ・・・?ドラムとかろうじてベースだけが追随した「一体、現実を把握している者はいるだろうか?」のイントロ。
またミスっちゃったね・・・・。
混乱を招いちゃった。さすがにこれでは演奏ストップ。珍しい現象だ。メンバー同士でなにやら言い合っているけれども、誰が犯人かな(笑)。
一瞬だけど、ダニーだけの「一体、現実・・・の触りが聞けた!」と密かにほくそ笑んでいる私は異常??
「エクスキューズ・ミー、バンザイブラス」
どうやらダニーの勘違いだったみたい。わかっていたけど(笑)
ビルとエドがここぞとばかしに、突っ込みを入れまくり。「ハハハ!オーケー、オールライト!」と爆笑の渦。
気を取り直して、マークの空ピッキング「カチャカチャカチャ・・・」に乗って、ダニー渾身のドラムソロ。さっきまでニコヤカだった顔が、途端に近寄りがたいほどの男気溢れる気迫に満ちたドラマーの顔に切り替わっている。
「シカゴへ帰りたい」
シカゴの弟分といわれたマデュラや、チャカ・カーンが在籍してたルーファスの主要メンバーだったデヴィッド・ホウク・ウォリンスキーと、ダニーによる共作だ(テリー・キャス最後の参加アルバムでもあるシカゴXIに収録。日本ではシングルカットされなかったけど・・・)。
トニーの張りのあるボーカル、タカくんのサックス、マークのギターへと目まぐるしいくらいに曲調が変化するダニーお気に入りの1曲。
CTAデビューアルバムは殆どがシカゴのカバーで占められていたけど、セカンド「サクレッド・グラウンド」はオリジナルが中心。でもこの曲が新たなるアレンジで収録されています。これが日本ライブで聞けるのは初。本家シカゴも日本では披露してないのです。
「サンキュー!トニー・グラント!マーク・ボニーラ!バンザイ・ブラス!」「万歳!!」
マーク・ボニーラが深呼吸してボスのボリューム・ペダルを踏み込んでのギターソロ。
「ぼくらの世界をバラ色に」
ボリューム奏法って難しいよね。センスが問われる。イモなギタリストはただやたらにベタベタと野暮ったく踏みこんで曲を台無しにしちゃうんだけど、マークの場合は足の裏がギターと神経が繋がっているような、微妙な感情表現で引き出す。
これはシカゴでは「ぼくらに微笑みを」を第1楽章に、この曲は第5楽章として組み込まれているんだけど、CTAの解釈として単独のものとしてとらえているようです。
実際ファースト・アルバムでも、そのような扱い。
ここでもピアノの旋律やフルート・ソロは、全てマークによるギターで演奏。
前半はボリューム奏法で、後半はそれまでの感情が一気に爆発。でも本来のメロディは崩さないで、編みこまれているのです。
静と動の対比が絶妙。マークはへヴィーメタルからプログレッシブ、ジャズからフュージョン、スパニッシュまで何でもござれの器用なテクニカル・ギタリスト。
そして、トニーのボーカルも出色。彼のここでの最大の聞かせどころはこれでもかあ!というくらいにエクスタシー全開で吠えまくる歌の最後。
こういう「カラー・マイ・ワールド」も、ものすごく感動的だ。
ダニーは単なるドラマーだけに収まらずコンポーザー、そしてプロデューサーとしてもその手腕を発揮していただけに、こういったところに光るものを感じとれます。
ダニーによるメンバー紹介「レディース&ジェントルメン!」との前置きで、一人一人を丁寧に呼びかけます。
ビルを筆頭に順序良くね。
トラヴィスの時には、トラヴィス自ら「トラブル・メーカー!」と言ったのは意外だった。
勝手に寡黙なイメージをもっていたんだけど、このようなお茶目な部分もあるんだね。
ダニーもリスペクト込めて「グレート・ベーシスト、トラブル・メーカー、トラヴィス・デイビス」とコール!
更には「WOW!OH、GUY!TAKA、TATSU、CC、BANZAI・BRASS!」と声を大にして紹介。
ビルも続いて、彼等ホーンセクションに賛辞を贈っていました。
「忘れ得ぬ君へ」でもキーボード哀愁のイントロに、タカのフルートの調べが流麗に華麗に彩を添えていました。
ああ・・・もうあとわずかでCTAともお別れの時間が迫ってきているんだなあ・・・とここで思い出してしまって、グッとこみ上げるものがありました。
感無量とはこのこと。
この曲がこれまた最初から最後まで、ずっと泣かせてくれるんだよネエ・・・・。
よく練り上げられた、完成度の高い名曲中の名曲だ。
アンコール・・・・・
「長い夜」
ついにここまで来てしまった。
頭のヒューズがぶっ飛んでしまったよ。
歌詞は1番、2番、3番と全てトニーと一緒になって歌いまくってしまったよ。
それまでは、おとなしくイスに座ってコンサート鑑賞をしていた全観客が、この時ばかりはドドドッとステージめがけて押し寄せてきた。
そりゃあそうでしょうね。このギター・イントロをぶちかまされたら、ひとたまりもありません。
発作的に無意識の内に、体が反応してしまったのでしょう。
メンバー全員、持ちうる限りのエネルギーをここに全注入。
ドニーも再登場してマークとのギター・バトルで火花を散らす。マークは敬意を表して、テリー・キャスのギターソロを完コピで弾きまくる。
正直な気持ちとしては「このまま、終わらないで欲しい」だ。
万歳ブラスのタツが放つハイ・ノートが耳をつんざく。
メインのリフは後半では、コードごとにブレイクして皆「ヘイ!」と拳を突き上げるのはCTA流。
血沸き肉踊るとはこのこと。佳境に差し掛かってきました。
バンドも観客も皆、汗だく。
トニーの絶叫とともにフィナーレを迎えた。
ダニー「アリガトウ!WE LOVE YOU!!」
こちらこそアリガトウだよ。よくぞ来日してくれました。想像していた以上にやられまくっちゃいましたよ!
照明が点されて現実に戻されちゃった。
女性スタッフによるアナウンスが流れています。
「皆様にお知らせがあります。
ただ今よりエントランス・ロビー内においてアーティストによるサイン会があります。」
待ってました。
最後の最後まで堪能させていただきますよ。
これを読んだあなたに、あの熱く燃えたぎるCTAステージの雰囲気の一部分でも伝わっていたとしたら幸いです。
~~~サイン会編へと、まだ続く(笑)~~~