私が持っている 花の百名山の本に コマウスユキソウが咲く花として 中央アルプス 三の沢が載っていた。 駒ヶ岳へ行くときに分岐から覗いていつか行ってみたい山と思っていた。
分岐から見る山は 緩やかな尾根歩きに見えて 楽そうだった。 本でもそうきつい山とはされていなかった。 ネット仲間の宮さんが奥様といらしたときに 奥様がとても苦しんで登られたと言う話を聞いたので 不安でもあった。
ジオンさんからお誘いを受けたのが 先週の火曜日 お天気が悪くて 赤沢に転進したものの 一度行くと決心して 行きそびれると気になるもの 31日こそ決行だー。
とはいえ 何か虫が知らせたと言うのだろうか? 最近山登りに目覚めた息子を無理矢理引っ張り出す。彼は 山の知識全くなくて利尻の一番危険なコースを上ってしまったりしている。そのことを知ったのは最近。 これは一緒に連れてあるいてジオンさん達に 山登りの鉄則を教えてもらわねば・・・
「私ね 疲れて帰り運転できないかもしれない。 頼むよ 運転手と割り切ってつきあって。」このことが 後で ほっと胸をなで下ろす結果になる。
さて 先週に引き続き 何となく変な天気。昨日から何度も何度も天気予報の確認。 初め雨が残るかもしれない予報だったのが 曇りのち晴れになる。 嬉しいような 不安なような微妙な気持ちのまま決行。
恵那駅でジオンさん 長さんを待つ。 阿繍さんも参加予定だったけれど 捻挫した足が治らず 欠席。残念だけれど 足の為にはその方が良いね。
途中フロントガラスにぽつんぽつん あれ? あれ? あれれーぇ? 絶望的 駒ヶ根を降りても山は雲の中。 なーんだ 今回は転進する予定もなく 天気予報だけを頼りに行くことにする。 バスは出た後だけれど 直ぐに臨時便が出る。 きっと付いている。
しらび平までくねくねと進むうちに ん? 何か空明るいよ。 きっと良くなる兆し。ロープウェーに乗って千畳敷まで進むうちに ロープウェーの中は 歓喜の声に変わる。
わー 良い天気 空真っ青だよ。 富士山見えるよ。
雲海のしたには駒ヶ根の町が見えるはず。 直ぐに見えるようになるでしょう。
実は中央アルプスと私の相性はあんまり良くないらしく 殆どの場合 雨
いつかお正月に 山登りをしないで遊んだ千畳敷以来初めての青空。 やったー
さて 千畳敷で宝剣岳を確認して 左の方に折れる。 可愛らしい神社がある。 ここでお参りしようとしたけれど お賽銭を用意していないことに気づき リュックを降ろすのが何となくおっくうで・・・「無事帰ってきたら お礼しますから お願いしますね。」とお参り。 これが良くなかったらしい。
左からの登山道は 極楽平へ出る。 初めて歩く道。 乗越浄土ほどきつくは無いけれど ジグザグの道は 直登ならば かなり急な道。 長いこと ここが歩けるとは知らなかった。
ゆったり歩いていくと たちまち差が出てしまう。でも焦らない。 ここではいつも 標高差の割に非常にきつい山歩きを強いられるので 酸素を食べて 飲む(気休め 気休め)
所々大きな岩がごろごろしているけれど これから先の景色を思ってわくわくしてあるく。30分程歩いただろうか? 極楽平に着く。 ロープが張ってある尾根を 宝剣の方に歩いていく。 足もとには 竜胆や シオガマ ミネウスユキソウなど 花が咲き誇っている。
御岳も見える。 振り返ると 島田娘(何じゃ?それ と思っていたら これもアルプスの雪形の一つで 雪解けの頃 丸髷の娘のような雪形ができるらしい) その向こうには空木岳への道が・・・「行きたいな」というジオンさんの言葉にぶるぶる
宝剣から降りてくる人が見える。 やはりかなりな岩場。 下りには使いたくないな。 「帰り 使っても良いか」と息子。 お天気も良かったし ジオンさんと 息子 長さんは乗越浄土経由でも良いなと思って 快諾。
ジオンさんも 少し 高山病。 頭が痛くて気分悪いと言うことで ゆっくりしていたら 息子は 一人でお弁当広げてぱくぱく。 ま 良いけど
みんな揃ったところで 三の沢目指して出発。
稜線は 比較的ゆったり見えるし きつい山とは思えないのだけれど。。。所々アップダウンがあるのは見えるのだけれど。 何でも鞍部は千畳敷よりも低いらしい。 とは言えたかだか標高差 400ぐらいの筈なのに
初めは岩の転がった見通しの良い開けた道を歩く。 登山道に 点々と人の様子が見えるけれど このコースを歩く人は少ない。
ノロノロの私は 遠くに見え隠れする シャツの色を確認しながら あそこまで あそこまで・・・と歩く。
やがてハイマツの中を歩いていく。 このハイマツ 人がやっと通れるくらいの隙間しか無くて 時々手足をひっかく。 頭の上の大きな岩がそそり立っている所を 通り
岩場大好きのジオンさんに声をかける。「岩の上に乗ってみないの? 」「無駄な体力は使いません。」 あ ジオンさんでも そんなことがあるんだ。
岩に腰掛けて お昼食べているおじさん。 そろそろ休憩しないと・・・と想ったけれど先遣隊は すでに遠くに点となっている。 仕方ない 歩くか
下る下る どんどん下る。左の谷は 結構凄いな。 先週 赤沢の方から見た中央アルプスは 雪渓でできているのかしら?と思うくらい 白かった。 今思えば ザレタ斜面だったのだ。 今年は コバイケイソウが花盛り。二年に一度しか咲かないそうで 確かに 去年は葉っぱばかりが目立っていた。 下の方まで びっしりのコバイケイソウの群生
先遣隊は 二つ目のピークを越えようとしていた。 もう 声も聞こえないし 手を振っても見えないくらい。 体が弱くて 学校休んでばかりいたはずの息子は 知らぬ間にたくましくなって ぐんぐん歩いていく。 ただ怖いことを知らないことが 今の私の気がかり。
御岳が見えたり 振り返ると 宝剣から中岳 木曽駒ヶ岳までの登山道がはっきり見えるようになると 所々 歩きにくい岩場になる。 昔はフィックスロープがあったらしい岩は 私の力では ぎりぎりだった。 と言っても行くしかない。 手をかけられる岩を探して登っていく。 「嫌だな 帰りどうするの?」
やっとよじ上って降りる頃 クラブツーリズムのツアー客が 登ってくる。 コバイケイソウの群生の中 綺麗な絵だった。みんなに先に行ってもらって 止まって休憩。
分岐から稜線を見たとき この辺が最後のピークに見えた。 息子達も ここにいると思っていた。 ところが ここはまだまだ通過点で その先には かなりの長い下りがあった。 みんな 何処へ行ってしまったのだろう? ついさっきまで見えていたのに。
疲れがピークに来ているのを感じていた。携帯を取り出して 待っていないで 戻っておいでと言おうとした。 ソフトバンクは圏外。あらら AUは繋がるのだけれど 息子がソフトバンク 同じ携帯を持っているジオンさんに連絡を取ろうとしたけれど 彼女は今日は携帯を忘れたのだった。 そして悪いことに 最近 私のAU充電器の不調で 電池はぎりぎりになっていた。 もしもの時の為にとっておかないと・・・ いくしかないのかあ
降りてきたところは ケルンがあって 少し広い見通しの良いところ。 元気な時は何でもなさそうな傾斜も 見上げるとひっくり返りそうな傾斜に見える。 登っても登っても頂上と思われる所は 高い。
降りてきたご夫婦に聞いてみる「あとどのくらい?」「20分ぐらいだよ」
20分かぁ いーち にー さんー・・・と30まで数えながら歩く。 その後50数えないと歩く気になれない。背中がどくどく言っている。 自分との戦いだった。 早くみんな降りてこないかな? 今がんばってもこれで終りじゃないもの 帰らないといけないもの・・・
岩に座り込んで 戦う また歩き出す。
そんなことを繰返していたときに 上から声が
ああ やっと会えた。 彼らも 15分くらい前についただけなのだと・・・私を気遣ってか慰めてくれる。 息子は4-50分前には来て一眠りしたのだそうな
せっかく ここまで来たのだから 頂上まで行かないと促されて がんばってみる。 りっくをデポしたので すいすい。(今回は きつい山と覚悟していたので リュックは25Lだったし 重くないのだけれどな)
頂上したのお花畑で見事な花を見る。 通り道でしかないけれど ここまでこないと見られない綺麗な景色。さほど広くないエリアには 沢山の花が咲いていた。
「頂上は ここから少し岩を登ったところだよ。」 その少しがいけなかった。 覗いてみたけれど みんなを待たせるのも嫌だったし 岩を見たとたん 気持ちが失せる。仁和寺の桜の様に 少し残念さが残ったけれど
さて とりあえず 追いついたのだから 今度こそがんばらないと・・
息子がハイペース ジオンさんと二人で歩いていく。
それを遠くから見ながら 長さん 私と歩いていく。長さんも大分疲れたらしい。 ひょいひょいと追いつくペースでは無いけれど 直ぐ目の前にいつも彼女の姿がある。 安心
しかし 見えているのに 何と遠いことか。 例えば双耳峰の山に登ることがあるけれど 遠くに見えていても 20分もすれば 次のピークに付く。 先ほどのケルンまで来たら また長い長い登りが続くのだ。
偽のピークまでも長かった 長さんが止まっているのを見て何となく安心するのも変だけれど
ここが一番きついのだろうか?急勾配に 姿が消える。
ロープウェー最終時間は17時 間に合わなかったら 帰れない。車の鍵は私と 息子が持っている。 もしもの時を考えて 二つ持ってきた。
山の中で 寝るしかないのか? 雷さえなければ眠れるかもしれない。 寒さはどうする?
暗くなるまでに 千畳敷へ辿り着けば 山小屋に泊めてもらえるだろう
それにしても連絡する方法が・・・
何とか 極楽浄土に16時までに着かないと・・・・ いけるか いけそう
そんなことを いつも頭の中で考えながら ぐるぐるしている。 見れば 宝剣に赤い姿が・・・ あれ 息子が宝剣に登っている。 ひえー
あのフィックスロープがあったらしい岩は 腰を下ろして滑り落ちた。 それが一番安全で 時間もかからない気がした。 ずるっ ずるっ の連続で また少し下る。 最後の登り返し 「無駄な体力は使いません」と笑っていた岩場のきつかったこと
長さんも少し手こずっていたようだけれど やがて 極楽平へ登っていって 手を振っている。 時間を見た。 あ 間に合うかもしれ無い。
気を取り直して 極楽平に着いたのは4時前 間に合った
千畳敷までは がんばれば30分でいけるだろう。 長さんと撮り残した花を探しながら歩く。 直ぐに 島田娘への分岐へ来て 降り始める。 息子達は もう着いているかもしれない。
少し 焦る気持ちもあったのだろうか?後数百メートル 千畳敷のロープウェーの屋根の高さまで降りてきたと思ったときに 事件は起きた。
気づいたときには低い さほどどうってことない 階段に腰をかけていた。ぼんと音がした。 滑って転んだのだ それに気づいたとき「あ 折れた」と思った。 前に骨を折ったひとが 冷や汗をだらだら流してがたがた震えていたのを見たことがある。
左手の手首をしっかり押さえて 痛みや体調に変化が無いかを考えながら待っていた。 何も変わらない。 副木になるものを思いつかなかったので 首に巻いていたタオルマフラーを抜いてぐるぐる巻きにして 手が動かないようにして残りの道を歩いた。
その後の顛末記は書くまでも無いので 今回は止めておく。 何もかも虫が知らせたと思える一日だった。 でも楽しかった。 びっくりするほど苦しかったけれど 何とか行ってこられた。 ひょっとしたら もう少し涼しかったら 頑張れたかもしれないと 懲りもせずに考えているぐらいだった。
そして 宝剣越えのジオンさんと 息子 息子に至っては 駒ヶ岳まで挑戦したらしい。私が足を引っ張ったので 中岳で諦めて帰ってきたらしいけれど・・・・
なんだかんだと 色々の収穫のあった山登りだった。
この記事は7月31日のレポですが 日にちを合わせると過去に消えてしまうので 今日の日付でアップします。