「山田と申します」
ありふれた名前を使うものだ。
想像していたより、声は若い。
「このたびはお世話になります」
と一応の挨拶を述べるとすかさず本題へ突入する。
「私は5つほど会社を経営してるんですが、
どうも小数点がきらいでして、3,5なんてやめて、4倍にしましょう」
なるほど結構な話だ。
それに本人(?)だけに話も早い。
「それはありがたいお言葉ですね」
ボクもいったん持ち上げておいて
「つい先ほど、充てていた資金で全部ドルを買っちゃいましてね。
社債を買いたくても、生憎今自由に動かせる資金が手元にないんですよ。
「すぐ、4倍で買い戻すんですよ」
「分かってます。どうでしょう、山田さん」
一呼吸して、こちらから提案を持ちかけた。
「私の口座に今すぐ200万振り込みませんか。
そしたら、すぐに社債を買いますから、あとは差額の600で済みますよ」
われながら、Good Ideaだ。
サア、どう出る山田さん。
返答を待つ。
「実は、以前にもそう言われて持ち逃げされたことがありましてね。
今、3件の訴訟を抱えてまして8000万損をしたんですよ。
それぞれ顧問弁護士を立てて対処させてるところなんですけどね」
「私が持ち逃げすると?」
「分かりませんが、
私にしてみりゃ、どうってことない金額ですけど、騙されるのは嫌ですからね」
「それはお互いさまですよ」
軽く受け流してボクは続けた。
「実は、娘がニューヨークに留学してまして、部屋を探してたんですよ。
そしたらちょうど、トランプタワーの一室に空きが出ましてね。
ご存知ですよね、5番街のトランプタワー。
スピルバーグが最上階のペントハウスに住んでるんですけど、
ちょうどその下の階の部屋が空いたそうなんです。
スリーベッドルーム、ツーバスルーム、30畳ほどのリビングルームとあまり広くないんですけど、
300万ドル(90円換算で2億7千万円)と格安で、
今日84円でドルを買いましたから、おかげで1800万円ほどは浮きました。
イヤー、娘のためとはいえ、ちょっと無理しましたよ。
こういうのを親バカってゆうんでしょうねー、ワハッハー」
間
「こうしませんか?」
マニュアルを見たのだろう、
山田氏は気を取り直して再び口を開いた。
「今、半額の100万円を振り込みます。
あとの半分を何とか都合付けて200万で社債を買っていただけませんか?」
なるほど、そうきたか。
差額の100万円を稼ごうという算段に出たらしい。
「じゃあ、その100万円で社債を買いましょう」
「それは困りますね。あくまでも半分です」
投資家(?)らしからぬミミッチイ話だ。
「じゃあ、とにかく100万円私の口座に振り込んでください」
どうせ口先だけだと思いながらも勝負に出た。
「チョッと、今秘書から連絡がはいってるんで、ちょっと待ってください」
そう言うと、「また明日電話します」、という言葉を残して電話は切れた。
相手は明らかに逃げ腰だ。
ありふれた名前を使うものだ。
想像していたより、声は若い。
「このたびはお世話になります」
と一応の挨拶を述べるとすかさず本題へ突入する。
「私は5つほど会社を経営してるんですが、
どうも小数点がきらいでして、3,5なんてやめて、4倍にしましょう」
なるほど結構な話だ。
それに本人(?)だけに話も早い。
「それはありがたいお言葉ですね」
ボクもいったん持ち上げておいて
「つい先ほど、充てていた資金で全部ドルを買っちゃいましてね。
社債を買いたくても、生憎今自由に動かせる資金が手元にないんですよ。
「すぐ、4倍で買い戻すんですよ」
「分かってます。どうでしょう、山田さん」
一呼吸して、こちらから提案を持ちかけた。
「私の口座に今すぐ200万振り込みませんか。
そしたら、すぐに社債を買いますから、あとは差額の600で済みますよ」
われながら、Good Ideaだ。
サア、どう出る山田さん。
返答を待つ。
「実は、以前にもそう言われて持ち逃げされたことがありましてね。
今、3件の訴訟を抱えてまして8000万損をしたんですよ。
それぞれ顧問弁護士を立てて対処させてるところなんですけどね」
「私が持ち逃げすると?」
「分かりませんが、
私にしてみりゃ、どうってことない金額ですけど、騙されるのは嫌ですからね」
「それはお互いさまですよ」
軽く受け流してボクは続けた。
「実は、娘がニューヨークに留学してまして、部屋を探してたんですよ。
そしたらちょうど、トランプタワーの一室に空きが出ましてね。
ご存知ですよね、5番街のトランプタワー。
スピルバーグが最上階のペントハウスに住んでるんですけど、
ちょうどその下の階の部屋が空いたそうなんです。
スリーベッドルーム、ツーバスルーム、30畳ほどのリビングルームとあまり広くないんですけど、
300万ドル(90円換算で2億7千万円)と格安で、
今日84円でドルを買いましたから、おかげで1800万円ほどは浮きました。
イヤー、娘のためとはいえ、ちょっと無理しましたよ。
こういうのを親バカってゆうんでしょうねー、ワハッハー」
間
「こうしませんか?」
マニュアルを見たのだろう、
山田氏は気を取り直して再び口を開いた。
「今、半額の100万円を振り込みます。
あとの半分を何とか都合付けて200万で社債を買っていただけませんか?」
なるほど、そうきたか。
差額の100万円を稼ごうという算段に出たらしい。
「じゃあ、その100万円で社債を買いましょう」
「それは困りますね。あくまでも半分です」
投資家(?)らしからぬミミッチイ話だ。
「じゃあ、とにかく100万円私の口座に振り込んでください」
どうせ口先だけだと思いながらも勝負に出た。
「チョッと、今秘書から連絡がはいってるんで、ちょっと待ってください」
そう言うと、「また明日電話します」、という言葉を残して電話は切れた。
相手は明らかに逃げ腰だ。