櫻井 智志
*この文章は「統一戦線への確かな現実の現段階」を全面的に書き直した文章である。ぜひ比較していただけたら幸いである。
日本共産党と主要野党と市民団体とが同席し定期的に協議していくことを確認したことの意義は大きい。ここでいう野党とは、すでに共闘を確認している日本共産党・社民党・生活の党と山本太郎となかまたちに加えて、民主党と維新の党も出席し、安倍政権に対抗する野党がすべて一同に介した 。
これらの政党は、「オール沖縄」を参加者がひとつのモデル例として肯定的に認識している。そして政党だけでなく、市民団体が恒常的に協議して統一戦線の重要な一翼をになうことが銘記されたことも画期的である。
いままでの統一戦線とは、革新統一戦線にしても政党の共闘が中心で、市民団体は外郭的な関わり方であったり、実質は野党の系列下の団体であることが多かった。美濃部亮吉都知事を生んだ母体である「革新都政をつくる会」も、主には社会党と共産党の共闘が中枢を占めていた。
ここまで統一戦線が進んだ原因のひとつとして、志位和夫委員長のすぐれた識見のもと日本共産党のたくみな戦略があげられる。民主党の一部に警戒心が働いて共闘が頓挫しそうになっても、短絡的に決裂せず、中期的な展望として「反戦争法制廃止の国民連合政府」を堅持し続けると、待ちの姿勢を示した。このような大局的な展望を示し続けていることが、今回のような大きな成果へと連なっていると見ることができよう。
安倍政権はこのことに早くも警戒心をもち、菅官房長官は、「共産の連立構想は選挙目当て」と記者会見で公的に発言している(東京新聞10月17日朝刊12版6面)。あたりまえだろう。安倍政権のすべての施策は選挙の票目当てのアドバルーン以上のものは何もないではないか。大きく異なるのは、自公与党が選挙で求めるのは利権と儲けに終始しているのに比べて、国民連合政府樹立を目指す選挙構想は、わが国民を戦争法制から解き放ち、確固とした憲法擁護の立憲主義を回復し擁護しようとする政治の大義を獲得しようとしている。おなじ「選挙目当て」でも、安倍=菅政権と「共産党らの連立構想」とでは雲泥の差があるということだ。
政党も大切だが、「安全保障関連法に反対する学者の会」・「安保関連法に反対するママの会」・「SEALDs自由と民主主義のための学生緊急行動」・「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」・「立憲デモクラシーの会」などの諸団体を大切に擁護し、今後もその存在を大切にしようとしていることも大きな特色である。
私はSEALDsのホームページを見ているが、賛同以上に誹謗と中傷、女性学生へのセクハラ書き込みなど、SEALDsへの世論の一部の悪質さは、リーダー奥田愛基さんへの殺害を記した威嚇も含めて卑劣きわまりない風潮が一部にあることを見過ごしてはいけない。これは他の市民団体や市民運動家に対してもいえる。官邸前デモ行進で13人も公務執行妨害で連行されたことは、沖縄の辺野古移転反対闘争にまつわり、有名な市民運動家が市民を抑制している最中に、米軍が後ろからひきずりこみ無理矢理基地内に体を入れさせて逮捕拘束した事実も今後も起こりうる。
政党の共闘を見ていて、安倍晋三と盟友の橋下徹は、今後油断できない。維新の党の破壊行為を含めて最大限この野党の連携を破壊するための安倍尖兵としての位置にいて、妨害工作を進めていくだろう。橋下徹には政治的展望はない。ピノキオのような操り人形となって強権政治の使い走りしかその存在の意義は薄い。
今回の共同の協議は、見事な第Ⅰ段階としてのスタートが始まったといえる。この取り組みはマスコミはベタ記事扱いにとかしないだろう。大手新聞社やテレビ会社の幹部が、安倍総理と夜の宴会接待を受けるようになって久しい。最近毎日新聞の報道が以前よりも改善されているが、新聞社全体は60年安保闘争の時のように体制側にある。テレビではTBSの「報道特集」「NEWS23」、テレビ朝日の「報道ステーション」、日本テレビのこれはもうかなり昔から続く週に一度の深夜の「ドキュメンタリー」、NHKの「クローズアップ現代」など散発的にでも報道の良心を示す報道人は存在する。
国民がSNS、ツイッター、ブログ、フェイスブックなどで伝えて拡大していくことが、集まった政党、団体の誠意に応じる営為であろう。そしてオウム返しにリピートすることでなく、自らの思考と吟味がなければ、たやすくデマを流す結果となることもあることを心しておきたい。