・最初に葉を食べられたアカシアは、災害が近づいていることをまわりの仲間に知らせるために警戒ガス(エチレン)を発散する。警告された木は、いざというときのために有害物質を準備し始める。それを知っているキリンは、警告の届かない場余に立っている木のところまで歩く。あるいは、風に逆らって移動する。香りのメッセージは空気に運ばれて隣の木に伝わるので、風上に向かえば、それほど歩かなくても警報に気づかなかった気が見つかるからだ。
・驚いたことに、このメッセージの伝達には化学物質だけでなく、電気信号も使われているようだ。しかも秒速1cmという速さだ。人間に比べたらこれでもずいぶん遅いが、動物の世界であれば、クラゲやミミズなど、木々と同じような速度で刺激の伝達をしているもがたくさにる。情報を受けとったナラは、いっせいに痰飲を体内に駆けめぐらせる。
木の根はとても大きく広がり、樹冠の倍以上の広さになることがある。それによって、まわりの木と地中で接し、つながることができる。だが、いつもそうなるとはかぎらない。森のなかにも、仲間も輪に加わろうとしない一匹狼や自分勝手なものがいる。
・だが、遺伝子の多様性を保つためには、これ(いっせいに花粉を飛ばすと自家受粉)はけっしていいことではない。そこで針葉樹はさまざまな戦略を立てる。トウヒをはじめとした多くの種属は、まず”時間“に注目した。雄花と雌花が開く時間を数日ずらしたのだ。そうすることで、雄花がほかの木の花粉を受粉する可能性がぐっと高くなる。
一方、受粉に昆虫の助けを必要とする広葉樹のミザクラは、そういう時間差作戦を実行できない。一つの花のなかに雄しべと雌しべの両方が含まれているからだ。ミザクラはミツバチを主な受粉手段としている数少ない森林種の一つである。ミツバチがたくさんの花のあいだを飛び交い、花粉を運ぶからこそ受粉ができる。
そのため、自分の花粉が自分の雄しべに付着する危険性も高いのだが、ミザクラはとても敏感で繊細にできている。雌しべについた花粉が卵細胞に向かって管(花粉管)を伸ばすと、雌しべがチェックする。もしそれが自分の花粉なら花粉管をストップし、それ以上の侵入を許さない。ほかの木の花粉、言い換えれば“有望な”遺伝子を含む花粉だけを受け入れ、種子をつくって実をつける。
・生存率がもっと低い木もある。たとえば、ポプラは毎年最大で2,600万個の種をつくる。自分がブナだったらよかったのに、とポプラの種は思っていることだろう。なにしろ、大人のポプラは寿命がくるまでに10億を超える種をつくり、綿に包んで風に飛ばす。それでも統計上はたった一本しか勝者はいないのだから。
・樹木のためにこれだけの”ケーブル網“を広げてあげる以上、キノコはそれなりの見返りを要求し始める。菌類は自分で栄養をつくることができないので、ほかの生き物の栄養を必要としている。どうちらかというと動物に近い存在といえるかもしれない。栄養が手にはいらなければ餓死する。そこで、パートナーの樹木から糖分やほかの炭水化物を譲りうけるのだが、少しの量では満足できない。インターネットサービス(菌糸網)料金として、木がつくった栄養の三分の一をよこせ、と迫るのだ。
これほどの量の栄養がかかっているのだから、サービスに手を抜くことはない。まず自分が接する根の先に耳を傾け、木がどんなことを考えているのかを察知する。さらに必要に応じて、たとえば植物ホルモンを放出して、木の細胞の成長を後押しすることもある。フィルターとして役割を果たし、重金属を濾過することもある。重金属は菌類にとっては無害だが、根にとっては害だからだ。濾過した重金属は、空きになると子実体に現れる。子実体とは、私たちがいわゆる“キノコ”として習慣する部分のこと。1986年のチェルノブイリ原発事故で地面に拡散した放射性セシウムがキノコのなかに見つかることが多いのは、このプロセスによるものである。
・キノコは医療サービスを提供する。バクテリアや有害な菌類などの侵入から木を守り、何も問題が起きなければ、キノコと木は数年間いっしょに生活する。しかし、たとえば空気中に有害物質が増えるなど、状況が変わったとたんに菌は死んでしまう。そんなとき、木はたいして悲しまずに、次に足元にやってきた菌類と仲良くするようだ。やってくる菌がいなくなったときだけ、木の健康が脅かされる。
・それでも菌類は、生活に困窮すると狂暴になる。ストロープマツという木に共生するオオキツネタケがその例だ。窒素が不足すると、オオキツネタケは毒を地面に放出し、トビムシなどの小さな生き物を殺してしまう。そして、死んだ生き物が分解されるときに窒素を木とキノコが利用する。岩が自家製の肥料だ。
・ビーバーは森の一部を破壊する。しかし、”水“に焦点を当ててみると、ビーバーは生態系に対して有益な効果をもたらしている。池や沼の環境を好む動物にすみかを提供するからだ。
・甘露蜜
ミツバチもアブラムシの排出物を利用する。アブラムシが排出した甘い汁を集めて巣に運び、濃密なはちみつをつくるのだ。花の蜜がまったく含まれていないのにもかかわらず、このはちみつはとても人気の高い商品となる。
・ヤマナラシのことだ。少しの風でも揺れて葉を鳴らすことからこの名前がついた。不安で震えることをドイツ語では”ヤマナラシのように震える“と言ったりするが、もちろんこの木は不安におびえているわけではない。特殊な枝についた葉が風にはためくと、表と裏の両面に日光が当たる。おかげで、ほかの樹種では葉の裏面は呼吸のためだけに使われるのに対し、ヤマナラシは葉の両面で光合成ができる。こうして、ヤマナラシはほかの木よりも多くのエネルギーをつくり、シラカバよりも早く成長できる。
感想;
木は自分で移動できないが、同じ仲間の木や菌類などとコミュニケーションを取っていることを知りました。
自分が生き続けるため、子孫を残すために常に進化し続けているようです。
自然はすごいです。
木のなかにはコミュニケーションを取らない木もあるとのことです。
木にも変わったやつがいるようです。
でもそれが自然界に存在しているということは必要があるからなのでしょう。