(前編)から続く パナソニック ホールディングス(HD)傘下の電子部品事業会社、パナソニック インダストリー(パナインダ)で発覚した品質不正問題。11月1日に公表した外部調査委員会の報告書によると、顧客の目をごまかすため、専用のプログラムを作成していた事例も発覚した。 【写真を見る】報告書によると、品質不正93件のうち62件が「意図的」だった パナインダの子会社、パナソニック スイッチングテクノロジーズ(パナST)では、顧客が製造工程を確認しに来た際に設定する「スペシャルモード」を用意していたというから呆れる。
■専用プログラムで自動的に捏造・改ざん
2000年代以降にパナSTが製造していたリレー製品は、不良品の比率を表す工程不良率が5~10%と通常よりかなり高かった。顧客から改善を求められると「従業員の応対負荷が増大する」(調査報告書)可能性があったことから、工程不良率のデータを改ざんし、顧客に提出していた。 さらに顧客が製造工程を見学する際、不良品が数多く発生してデータを改ざんしていることが発覚しないように検査機器のプログラムを変更し、「スペシャルモード」と呼んでいた。2010年代後半以降は設定変更のためのマニュアルも作成され、担当者間で引き継がれていた。
不正のためのプログラムは、他の拠点でも発見されている。四日市、南四日市、上海(中国)、アユタヤ(タイ)各工場で確認された成形材料や封止材料のロット番号を改ざんする不正では、専用のプログラムを用いた検査結果の捏造や改ざんが行われていた。 不正の対象になった成形材料や封止材料では、顧客に出荷する前に製品の性質を測定する検査を実施することになっていた。しかし「人員や設備が不足していた」(調査報告書)ため一部検査が実施されておらず、実施した場合に検査結果が不合格でも出荷するという不正が横行していた。
こうした不正は2012年に品質情報システムが導入される以前はエクセルファイルを用いて手動で行われていたが、導入後はシステム上で自動的に行われていた。 極めつきは、パナインダの社長である坂本真治氏自らが関与した不正の存在だ。 1985年頃から2021年まで島根県の松江工場で製造されていた電子部品(フィルムキャパシタ)について、坂本社長は2022年1月に認証規格を充足しない製品が出荷されていた事実を知らされていた。にもかかわらず、顧客や認証機関に対して報告していなかった。
しかも坂本社長は、2022年に報告を受ける以前からこの製品の問題について知っていた可能性が高い。パナインダ社内では2009年2月にこの製品に関する企画会議が開催されており、その場でもこの製品についての問題が議題に上がっていた。 坂本社長はフィルムキャパシタビジネスユニット長(当時)という事業責任者の立場でこの会議に参加していた。 坂本社長は外部委員会の調査に対し「技術的な見地からは実際の仕様様態に照らして安全性に問題が生じることはない」と回答。報告しなかったのは「あえて認証機関や顧客に報告して市場に混乱を招くという選択肢をとる必要はないと考えた」からだと説明している。
■本社に不正は伝わらなかった
外部調査委員会は今回の不正について「品質不正の存在が上位層を含めた広い範囲の従業員の間で共有され、長年にわたって継続されてきた」ことが他社の事案と比較した際の最大の特徴だと指摘している。 実際、不正事案の中には開発部門や品質部門など現場の管理職だけではなく、ビジネスユニット長や事業部長など、経営層でありながら本社に不正を報告せず、品質不正の是正や調査を指示しなかったケースがあった。
こうした点も踏まえ調査委員会は「経営者自身の品質保証に対する認識の甘さが今回の品質不正の遠因、背景になっていた」と結論づけている。その上で「より効果的な品質コンプライアンス体制の整備、運用に向けた不断の努力を期待したい」と報告書を結んでいる。 しかし、会社側の信頼回復に向けた取り組みには疑問符が付く状況が続いているのが実態だ。 パナインダは報告書の提出を受けて、11月1日に記者会見を開催した。だが、この会見は大阪の機械記者クラブで実施された。クラブに所属していないメディアには開催が通知されておらず、東洋経済も会見には参加できなかった。
パナインダは2024年2月に東京・虎ノ門に本社機能を移転している。その理由は「ステークホルダーとの“共創”を加速」(同社ウェブサイト)するためで、今年5月には新オフィスで坂本社長がメディアの合同取材に応えている。
■月額報酬50%を4カ月分自主返納
東洋経済が入手した会見の録音データによれば、坂本社長は冒頭で「このたびは当社の品質不正によりましてお客様をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様にご心配ご迷惑をおかけしたことを深くお詫びします」と発言している。
本当に「すべてのステークホルダー」に謝罪するのであれば、少なくとも開かれた場で記者会見を行うべきだったのではないか。過去に品質不正を起こした企業と比べても、情報開示に後ろ向きといわざるを得ない。 一連の不正を受けて坂本社長とパナソニックHDの楠見雄規社長は、それぞれ月額基本報酬の50%を4カ月間自主返納すると発表した。パナソニックHDは、グループ全体の不正調査も進めている。徹底した調査による全容解明が待たれる。
梅垣 勇人 :東洋経済 記者
感想;
確信犯の不正行為です。
パナソニック本社の対応もまずいです。
確信犯の人にはきっちりと処罰すべきです。
社長の減給は処罰ではないです。
パナソニックの品質保証も落ちたものです。
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