・歴史的事実をめぐるこうした問題を別の観点から整理すると、<事実><解釈><意見>の三層に分けて検討することができるかもしれない。
・ナチスの家族政策に関して忘れてはならないのはこうした支援策の対象となったのが、
①ナチ党にとって政治的に信用でき、
②「人種的」に問題がなく、
③「遺伝的に健康」で、
④「反社会的」でもない人々だけだったという点である。
社会主義者や共産主義者などの政治的敵対者やユダヤ人、障害者や「反社会的分子」とされた人々は、そこから排除されていた。
・しかしそうした「団結」や「調和」にはもちろん、裏の側面があった。それはユダヤ人、シンティ・ロマ(ジプシー)、政治的敵対者(共産主義者・社会主義者)、同性愛者や障害者など、「共同体の敵」とされた人々を徹底的に排除するという側面だった。
・実際にも、ナチスはヴィマール時代を通じて左翼政党と激しい抗争を繰り広げ、政権掌握後には社会主義者と共産主義者を一斉逮捕して強制収容所に送るなど、徹底的にこれを弾圧した。
・こうした状況を一変させたのが、1929年10月に始まる世界恐慌である。1928年5月の国会選挙で2.6%の得票にすぎなかったナチ党は、1930年9月の選挙で18.3%の票を獲得し、一気に第二党に躍り出た。・・・1932年7月の国会選挙では37.4%の票を得て、ついに第一党の座を占めるに至った。
・ヒトラーも一人の人間で、角の生えた悪魔ではなかったというのはたしかにその通りだろう。だが仮にヒトラーに「優しい心」があったとしても、それはユダヤ人虐殺を命じた事実を否定する根拠にも、免責する理由にもなり得ない。
・さらに第一次世界大戦に敗北すると、ユダヤ人などの内部の「裏切り者」のせいでドイツは負けたのだという、「背後からの突き」伝説が唱えられるようになった。こうした状況のもとで、1918年以降反ユダヤ主義的な扇動や暴力、差別が急速に拡大していく。ユダヤ人が路上で極右に襲われるということが珍しくなくなったのである。
・たとえばユダヤ人が職(大学教授や医師、弁護士のポスト)を失うことで、ドイツ人が職を得ることもあった。東部へ移送されるユダヤ人の財産は、ドイツ人によって安く買いたたかれ、不動産業者や銀行、弁護士などもそのおこぼれにあずかった。家具や絨毯、毛布などは空襲被害者や新婚夫婦に優先的に割り当てられたほか、一般市民ににも捨て値で売りに出された。気に食わない相手を追い落とすために、「ユダヤ人と親密な関係にある」と(場合によってはでっち上げの内容をゲシュタポ(秘密国家警察)に密告する人々もいた。これらの多くは、イデオロギー的な革新というよりは個人的な動機によるものであった。ナチ体制のもとでユダヤ人迫害に関与することで、個人的な利益が得られたのである。
・軍需・戦時経済
1)巨額の負債でまかなわれた軍需経済
2)収奪の経済
①占領地からの収奪
②ユダヤ人からの収奪
ナチ・ドイツによるユダヤ人財産の略奪総額は、アリーの推計によると150憶ないし200億RM(約8兆6千億~11兆5戦億円)に達し、ドイツの戦時収入全体の5%弱に相当するという。
③そして外国人労働者こ強制労働
1944年9月の段階で戦争捕虜を含めて約760万人なしい890万人の外国人労働者、さらに強制収容所の囚人約50万人がドイツ国内で働き、ドイツ労働人口のおよそ1/4~1/5に相当する数に達した。
・そこでヒトラーは政権を握るとすぐに左翼政党や労働組合の弾圧。解体に乗り出し、それに代わるナチ的な労働者組織の設立に着手した。労働組合の活動家やメンバーが逮捕される一方で、5月初めには全国の労働組合が一斉に占拠。解体され、その資産をもとにナチ党付属の労働団体であるドイツ労働戦線が設立された。
・「母親名誉十字章」
子ども四人産んだ母親には青銅、
六人産むと銀、八人以上で金の十字章が与えられた。
しかしそれ以上によく知られているのが、母親に対する経済的支援であろう。
結婚カップルに1000RM(現在の価値で約71万4千円)が貸与され、一人産むごとに1/4が返済不要となった。
・家畜用運搬車にぎゅうぎゅうに押し込まれ、十分な食事も水も与えられることのないまま、少なからぬユダヤ人が移送の途上で命を落とした。「必要な配慮」「必要な空間」「十分な飼料や水分」、いずれも与えらえなかったのだ。・・・
「排除」すると決めた人間を胴部以下の扱いにして何が悪いのかという、開き直りにも似た姿勢があったことも忘れてはならない。
・本書に目を通せば、「ナチスは良いこともした」などという主張がいかに不正確で一面的であるかがよく理解できるはずである。
感想;
自分たちの仲間、アーリヤ人は大切にするが、差別する対象の人々は家畜以下で財産だけでなく、強制労働させ、その揚げ句には殺害したのです。
忘れてはいけないことは、ヒトラー一人ではできなかったのです。
多くの賛同者や協力者、ヒトラーの考えを実践したのです。
斎藤兵庫県知事は問題です。
でもその知事に従う人、擁護する人も問題だということなのでしょう。