幸せに生きる(笑顔のレシピ) & ロゴセラピー 

幸せに生きるには幸せな考え方をすること 笑顔のレシピは自分が創ることだと思います。笑顔が周りを幸せにし自分も幸せに!

「機長の危機管理 何が生死を分けるか」桑野偕紀(JAL機長)/前田荘六(ANA機長)/塚原利夫(JAS機長) ”機長から危機管理を学ぶ”

2024-06-15 03:22:22 | 本の紹介
・危機管理の観点に立って
 ・設計者   誤反応されないようにデザインする
 ・整備士   誤操作されないように整備する
 ・マニュアル制作者   誤解されないようにマニュアルを提供する
 ・パイロット   誤認しないように努める

・危機管理
 ・危機の排除   危機の芽を摘む
 ・危機の回避   危機を回避する
 ・危機の克服   危機を乗りきる

・危機管理の成否は、日常生活の中でいかに前もって整備をきちんとしているかにかかっています。
  例えば、夜の10時に成田を出発するニューヨーク便に常務することになると、パイロットは2、3日前から夜更かしを始め、徐々にその業務のために体を慣らそうとします。

・私たち機長は数手先まで読むために、確かな「次の一手」にこだわっているわけです。

・機長には、飛行機の性能や装置などの知識ばかりでなく、気象や工学、法規などの学問も欠かせません。さらに、人間の意識や能力に関するものはもちろんのこと、チーム・リーダーとしての行動などについても科学的な理解をしていなければなりません。その水準が機長の危機管理能力を左右しますから、機長はそのために日夜励んでいるわけです。

・機長は、雨に打たれ雪にまみれながらウオーク・アラウンドし、清掃や物品の搭載などでごった返す機内に立ち入って整備や旅客の担当者と打ち合わせを済ませ、チーム・パーサーと最終の調整をしてから、おもむろにコックピットに向かうわけです。
 機長にとってこうした何気ないうおーく・アラウンドも危機管理をするために大変重要なことなのです。

・ヴァーチィゴ(めまい)には視覚性のものと内示耳のものがあります。

・パイロットの技能は、これらの情報の流れに合わせて、次のように分けられているわけです。
 ①ボトム・アップの情報の流れ・・・フライング・スキル
 ②トップ・ダウンの情報の流れ・・・エアマンシップ

・「形から入りて形から出でよ」
 ①「形から入りて」 まずは人様の形を真似しなさい(模倣;半自動化)
 ②「形から入りて」 形が身につくまで繰り返しなさい(習熟;全自動化)
 ③「形から出でよ」 形が身についたら自分の型をつくりなさい(工夫;ひ自動化)
 これらの三つの階層化された人間の行動は、認知心理学の分野ではよく次のように表現されます。
 ①全自動化  スキル・ベースの行動
 ②半自動化  ルール・ベースの行動
 ③非自動化  ナレッジ・ベースの行動
これはSRKモデルと呼ばれる、ある認知心理学の分類ですが、簡潔でとてもわかりやすいので世界で使われています。

・知識は次の3つに階層化できます。
 ①記憶力  再生できること
 ②参照力  検索できること
 ③理解力  説明できること

・実技は次の3つに階層化できます。
 ①習熟力  操作を流暢にこなせること
 ②模倣力  手順を型どおりにできること
 ③適応力  課題を工夫しながら処理できること

・パイロットが避けなければならないものといえば、「酒と女にトラフィック」
 トラフィックとは他機のことですが、それに「鳥」を加える機長もいます。渡り鳥の群れに突っ込んで墜落した航空機もありますから、フライトにかけては大先輩の鳥を蔑ろにして空を共有することはもちろんできません。
 航空機によくぶつかるのはトンビ、ほとんどぶつからないのがカラスです。

・緊急事態などに出遭った場合に、戦略思考なくしては始まらないことを意味していいます。
 ・戦術思考  未経験のことには対処できない
 ・戦略思考  新しいことに対応できる、工夫や創造ができる。

・戦術思考と戦略思考には次のような傾向も存在します。
 ・戦術思考  安定
 ・戦略思考  不安定

・危機管理能力は、「管理能力」を次のように3つに階層化するとわかりやすくなります。
 ①業務管理能力  係長級の管理能力
 ②危険管理能力  課長級の管理能力
 ③危機管理能力  部長級の管理能力

・機長にとって、ノーブレス・オブリージとは何なのでしょう。
危機を避け、危難を乗り越える心得を見につけた機長を育成するためには、古来からのノーブレス・オブリージの考え方に大いに学ぶところがあるように思います。

・機長 エアマンシップ思考 意識  信頼感
                  感性
                  心的態度
              能力  危機管理能力
                  危険管理能力
                  業務管理能力
    フライング・スキル(行為) 知識  理解力
                     参照力
                     記憶力
                 実技  応用操作
                     手順操作
                     操縦操作

・一般的に、人の論理の構成や展開は次のように分けることができます。
 ①公理演繹型 普遍的な命題から特殊な命題を導き出したり、また組み立てた理論によって特殊な命題を説明する
 ②事実帰納型 個々の具体的な事柄から一般的な命題や法則を導き出す。
 ③直観感情型 判断や推理などの思考作用によらず、観念や感情が作用して対象を直接了解する。


・組織の構造は3つのポイントで見ることができます。
 ①どれくらい複雑であるか
 ②どれくらい標準化されているか
 ③どれくらい集中化されているか

・マニュアルの良し悪しは基本的に次の二点で決まるのではないかと考えられます。
 ①利用者思考であるかないか
 ②危機管理の考え方が組み込まれているかいないか

・自動化に対する考え方は、する側とされる側では異なるものです。
される側に立てば、基本的には次の3つの要件が前提になります。
 ①使いやすい 人間の動作に近く操作を習熟しやすい
 ②確かめやすい 人間の知覚にとどまりやすく、作動の様子がわかりやすい
 ③代えやすい ほかの手段に容易に切り替えられる

セイフ・ライフ構造とは、疲労による損傷について十分な余裕を見込んで設計するという考え方であり、フェイル・セイフ構造は、疲労により構造の一部が損傷したとしても、ただ日に危険な状態に至らないよう残りの部分が果汁を受け持つ考え方です。つまり、「壊れても安全」というわけです。

SSIと呼ばれる整備方式も確立されてきていいます。
 これは、航空機の使用に伴って発生する疲労による損傷を、危険な状態に至る前に発見して処置するものです。

フェイル・バッシブとは、ある機器や装置などが故障しても、それがほかのシステムにまで悪影響を及ぼさないようにその部分を自動的に遮断する設計です。
 フェイル・オペレーションとは、ある機器や装置などが故障した場合に、それを常時監視しながら待機していた別のシステムが自動的に取って代わる設計です。

・イギリスの首相ウィンストン・チャーチルが、
「改良とは変化することであり、完全とは常に変化していることである」と言っているように、日ごとに移りゆく姿は完全であり健全なのかもしれません。

ボーダム・パニックとは、自動化システムが順調な場合には人間は特にする仕事もなく暇を持て余す一方、突然自動化すステムが故障したりすると、高度で重要な役割が一気に人間に回ってきてパニックに陥ることです。

二重系(並列)と二元系(直列)

・「人はエラーするものである」との前提に立ったエラー・トレラントという考え方が取り入れられるようになりました。つまりエラーが発生しても、それを重大な事態に発展させないようにする施策で、ヒューマンエラーを「あってはいけないもの」とするのではんく、「人の自然なありさま」として認め、それを事故に結び付けないようにソフトウエアやハードウエアでバックアップする考え方です。
 自己の原因を単なる当事者のミスとして一件落着させる責殷追及型の考え方は、もはや過去の者となりつつあります。

・飛行機を飛ばすうえでパイロットが最も注意しているのは、高度と速度です。

・人間の仕事が次々と手順化されてきたのは、手順化には次のようなそれなりのメリットあったからです。
 ①訓練が簡素化できる
 ②品質を均一化できる
 ③生産を量産化できる
 ④安全が確保できる
 手順化されたものは状況の変化に対して「融通がきかない」という大きな欠点を持っています。
 また手順の枠に縛られる結果、ベテランが育たないきらいがあります。
 手順が「何のために?」「問題はないのか?」「結果は果たして?」などといったことについて考えながら行われないと、「手術は成功したが、患者は死んだ」というような心ない結末になってしまうでしょう。

・航空業界では、自分の失敗をみんなの財産にしようという活動があって、特にアメリカではASRSが完備していて、匿名、記名を問わずに、「ヒヤリ! ハッと!」の体験を公的な第三者機関に提供できるようになっています。・・・
 ところが日本ではこの制度がなかなか根づきません。それは基本的に次のような理由によるものと考えられます。
 ①失敗を知られたくない
 ②知られると不利な扱いを受ける

・リスク・マネージメントには一般的に次のようなプロセスが含まれます。
 ①リスク・アウェアネス 潜在するリスクそのものに気づくこと
 ②リスク・アセスメント どのようなリスクか評価する
 ③リスク・ストゥラティジー リスク対策をし、優先順位を付け戦略を練る
 ④リスク・モニター 対策が有効か新たなリスクが発生しないか監視する

・コミュニケーションは次のような原則があり、それは立派な技術です。
 情報を提供する側は
  ①有用な情報を
  ②無駄なく
  ③具体的に
  ④順序よく
 それに応答する側は、
  イエス・ノーをはっきりとすることを心がけます。

感想
 失敗についての概念を根底から変えなければいけないようです。
人は失敗するとの前提でマネジメントする、システムを構築する。
人が失敗したからと言って、個人の責任追及するのではなく、なぜ失敗が起きたかを追究する。
 失敗を防ぐにはやはり教育がとても重要だとあらためて実感しました。

 リスクを減らすために、常に研鑽を積まれているのは凄いと思いました。
その日々の研鑽が生死を分けるのでしょう。
 自分が研鑽に努めているか。
それは仕事に誇りを持っていることにもつながっているように思いました。

参考

7.3 航空分野におけるインシデント情報の報告、活用体制
(1)米国におけるASRS(航空安全報告制度:Aviation Safety Reporting System)
 航空界の先進国である米国は、世界に先駆けて航空分野の安全に取り組んでいたが、1940年代から減少を続けてきた航空機事故の発生率が、1970年代半ば頃から横ばい傾向になり、一向に減少する兆しを見せなくなったことから、1975年、「安全情報を水平展開できるような制度を国が責任を持って作るべきである」というNTSBの米国航空局に対する勧告を受けて、直ちにインシデント報告制度を発足させた。
 しかしながら、航空に関する監督権、処罰権をもっている機関が自ら運用に携わったため、これが失敗に帰し、翌1976年、第三者研究機関であるNASA(米国国家航空宇宙局)のエイムス研究センターにインシデント報告制度の運用を移管して、そこでASRS(航空安全報告制度)が初めて成功し、その後、同システムが急速に世界各国に波及していった。
 安全報告制度の具備すべき要件として、
・免責性(報告者が処罰されないこと)
・秘匿性(匿名性を堅持すること)
・公平性(第三者機関が運用すること)
・簡易性(手軽に報告できること)
・貢献性(安全推進に貢献していること)

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