英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その4

2012-10-06 18:59:21 | 将棋

 62手目まで「その3」で紹介した第17期竜王戦第7局▲森内竜王×△渡辺六段(タイトル・段位は当時のもの)戦と同じ手順を踏襲している。
 前回記事を復習すると、この竜王戦の2005年の段階でも、この定跡はかなり確立されていて、第7局も55手目までそれに従って進行していた。56手目の△8八歩が後の先手玉の脱出ルートをあらかじめふさいでおくという手で、渡辺六段の新手であった。この新手が現在のこの戦型での定跡となっている。
 森内×渡辺戦で問題となったのが第2-4図。飛車を取れれば後手良しと考えていたが、実際にはそうではなく、この△4四同飛に107分の長考をしている。渡辺六段はここで▲6五歩と桂を取られる手を心配していた。
 自戦記より引用すると
「▲6五歩以下△4六飛▲4五角△2二金に▲5八桂(第3図)が妙手。


この桂は△4五飛▲同桂△1八馬の時に△6六香を消していて、▲4七歩より勝る。
 その後、新手△8八歩は定跡となり第3図から△3七馬▲4六桂△同馬で銀損ながらも後手も指せる、という結論になっている。
 ただし、対局中はこの△3七馬で指せるという発想はなかったので、どうなっていたか。
 自信はなかったが、仕方なく△4四同飛(第2-4図)と指したら森内竜王は▲6五歩ではなく▲4五銀と来た。この▲4五銀がどういう手なのかと言う前に、恐れていた▲6五歩ではなかったので、えらくほっとしたという記憶がある」

 実戦は▲4五銀以下△8四飛▲3五桂△2四金(好手)▲4三桂成△4二歩▲3三成桂△5二玉と進み後手優勢となった。

 谷川×羽生戦は、渡辺六段が危惧していた▲6五歩△4六飛▲4五角△2二金に▲5八桂と進み、その後も定跡手順となっている△3七馬▲4六桂△同馬を踏襲した。
 この辺り、逆先を取る応酬で、第3図では後手は△4九飛成▲同銀△3七馬の金・桂との2枚換えより桂2枚との2枚換えを選択する。
 これに対し先手も▲4八飛(第4図)と角取りを受けつつ馬に当て返す。


 やはり、続く……

【参考記事】
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その3 ~第17期竜王戦第7局と同一~」(10月1日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その2」(9月30日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その1【追記あり】」(9月26日記事)
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『将棋世界』8月号 実戦に役立つ5手7手詰 【解答】

2012-10-06 00:18:46 | 詰将棋
『将棋世界』8月号 実戦に役立つ5手7手詰(9月27日記事)の解答です。



 初図で第一感で▲3四馬△同玉▲3五馬の筋が浮かびます。こう進めば詰みですが、▲3四馬(第一感図)に


△1五玉(失敗図)とかわされると


詰みません。

 そこで、一工夫が必要になります。
 ▲3三馬と寄り道をして、△2五玉(途中図)と2五の桂馬を取らせるのがテクニックです。

2五の桂馬が消えたので、馬の利きが1六まで通り△1五玉と逃げられても▲1六玉で詰みます。で、▲3四馬に△同玉となり目論見通り▲3五金で詰み上がります。


 この作品の素晴らしいのは、2五の桂馬が単なる邪魔駒ではないことです。

 仮定図は初図から2五の桂馬を取り除いたものですが、ここから▲3三馬だと△1三玉と逃げられて不詰。また、▲3四馬でもやはり△1三玉で詰みません。


【詰手順】
▲3三馬△2五玉▲3四馬△同玉▲3五金まで、5手詰





 初図より、平凡に▲2五銀は△1五玉で不詰。また▲2五龍だと今度は△同銀▲同銀△1五玉で詰みません。
 1六の駒が銀なので下手に動くと脇を抜かれてしまうのです。そこで、相手の守備駒も銀なので、その弱点を突いて▲1五歩△同銀▲2五玉が手筋です。
 ところが、3四に龍がいるので▲1五歩が打ち歩詰となってしまうのです。
 そこで、攻め駒を捨てる攻撃力減少化の手筋を駆使します。

 ▲2三龍です。
 これには△同歩の一手でこれで龍の利きがなくなったので、

▲1五歩が打ち歩詰とならず、先ほどの手筋が使えます。
 △1五同銀に▲2五銀で詰みです。



【詰手順】
▲2三龍△同歩▲1五歩△同銀▲2五銀まで、5手詰
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