英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『平清盛』 第39話「兎丸無念」

2012-10-07 21:01:16 | ドラマ・映画
生き急ぐ清盛、修羅の道を行くのか?
……………………………有耶無耶にしてしまった清盛の信念


清盛と兎丸の決別
・禿による恐怖政治について意見が対立
・大輪田泊の工事を急かす清盛と、民や工夫の身を思う兎丸、二人の間に決定的な亀裂が入る
・盛国の忠告も耳を貸さない清盛
・桃李の説得に揺れる心の兎丸

有耶無耶(うやむや)になった清盛の信念
清盛「わしの目指す国の形は、既に若き日の兎丸が思い描いておったもの。その国の形が出来た時、すべては報われよう」
清盛「天下に示すのじゃ。この国の頂に立つのは、この平清盛であることを」
清盛「長年我らを見下してきた王家や朝廷を見返す絶好の機会。瑣末なことでこの機会を逃すわけにはゆかん」
兎丸「悪をひっくり返そうと思ってお前についてきた。お前のやってることは悪や。悪と悪がひっくり返っても、また悪がてっぺんに登るだけや」
兎丸「お前の国造りは、盗賊がモノ盗むんとおんなじや」
清盛「分かるまい、お前にも兎丸にも誰にも…」


 これら、特に清盛の言葉から察すると、清盛の目指す国造りが「生き生きとした豊かな国を作る」から「平家がのし上がること」に変質してしまったようだ。
 よく分からないのは、「分かるまい、お前にも兎丸にも誰にも…」という清盛の言葉。
 何が分からないのか?清盛の目指す国造りが何なのか?それとも、それを目指すために非常に徹している清盛の覚悟なのか?

 さらによく分からないのは、兎丸が亡くなった後の
「それでも進みますか、この修羅の道を。殿のお心に中にだけある国に向かって進み続ける覚悟が、お有りにございまするか?……………………………ならば、盛国も共に、命を賭して殿に食らいつき、この修羅の道を共に参ります」という盛国の言葉だ。
 修羅の道とは、清盛の描く国造りのために、非道なことに手に染めることなのだろうか。それとも、目指す国造りが「豊かな国」ではなく「この国の頂点に立つこと」になってしまったことなのか?


 結局、二人が決別し、二人が再び対決することなく、禿の暴走によって兎丸が命を落としてしまうことで、清盛の信念がどういうものだったかを有耶無耶にしてしまった。
 清盛が、工事を焦ったために、事故が起こり、兎丸が工夫を庇って命を落としてしまったとかいうのなら、兎丸の死の原因を清盛が背負うことになるが、禿の暴走で兎丸が命を落としたのでは、あまりにも間接的である。せめて、禿に指示を出していたのが清盛自身であったならと思うが、「禿の暴走」で済ませてしまうのは、あまりにもきれいごと過ぎる。

 挙句の果てに、
「兎丸の志こそが、新しき泊の礎じゃ」と言って、人柱の代わりに経文を書いた石を沈めると詭弁を使い、さらに、清盛と兎丸との回想シーンを流し、
若き日の兎丸の「生き生きと豊かなよい国を作る、その手伝いならしたっても良い(しても良い)」の言葉を思い出し、綺麗にまとめてしまった。
 最低の捌き方であった。


 あまりの出来だったので、他の事に言及する気にならないが、あとで振り返る場合もあると思うので、少しだけ。

弁慶と義経(遮那王)の出会い
・運命の出会い(再会)であったが、刀狩り(千人斬り)より義経(牛若)を探すのが第一であろう
・急いでいるのなら、逃げればよいのでは?
・弁慶と義経の間に、何のために禿が乱入?……暗殺集団と化した禿の暴走振りを表現したのだろうか
・二人の会話は、漫才ぽかった……賛否両論はあると思うが、私は好きである

西行、久々の登場
 驕れる平家に、行く末に陰を感じる

★トラックバックする際、他の方のブログの記事を読んで、なるほどと思ったこと
①時忠の禿を容認したことがしっぺ返しとなって、兎丸を失ってしまったこと
②よいことをしたという思いの表情で庭陰に禿の顔が哀れ
③禿を収束させるために兎丸を利用した脚本

 どれも納得でき、うまいなあと思える脚本だ。
 しかし、そういった上手さでその場限りの面白さに走り、本筋を蔑ろにしているのが、残念でもあり、腹立たしささえ感じてしまう今回の大河である。



【ストーリー】番組サイトより
 京では、平家の密偵・禿(かむろ)の振る舞いに、人々は恐れをなしていた。
 五条大橋で禿退治をしていた弁慶(青木崇高)は、遮那王(のちの義経:神木隆之介)と運命的な出会いを果たす。
 そのころ、福原では大輪田泊の工事が大詰めを迎えていた。清盛(松山ケンイチ)は宋と正式な国交を結ぼうとするが、朝廷は猛反対。後白河法皇(松田翔太)だけが理解を示す。宋からの手紙で外交使節が三か月後に来日することを知り、清盛は工事を急ぐように命じる。だが事故で多くのけが人が出ると、兎丸(加藤浩次)は志を忘れ、自らの利を追求しているだけだと清盛を責める。清盛と決裂をし、一人で酒を飲む兎丸の前に、時忠(森田剛)が放った禿が現れる。
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A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その5

2012-10-07 12:52:22 | 将棋
 簡単に振り返るつもりでしたが、幸か不幸か、第17期竜王戦第7局、森内×渡辺戦と同一進行だったので、予定外に細かくなってしまいました。そういう理由はあるのですが、もともと、「簡潔」という能力がないので、森内×渡辺戦がなくてもこういう状況になっているような気がします。

【参考記事】
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その4」
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その3 ~第17期竜王戦第7局と同一~」(10月1日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その2」(9月30日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その1【追記あり】」(9月26日記事)


 第4図は、後手の羽生二冠が駒の損得より角取り(△4六同馬)と手番を優先させた手に対し、▲4八飛と角取りを受けつつ馬当たりと逆先を取ったところ。
 自陣に飛車を手放した手だが、間接的に玉頭を睨んでおり、うっかり△7三馬と引きようものなら、▲2三角成△同金▲4三飛成で大変なことになる。当然羽生二冠も△2四馬と引く。
 この辺りは前例はあり、ここで▲2三歩が2局、▲4四歩が1局あるとのこと。▲2三歩を初めて指したのが後手番の羽生二冠であるが、羽生二冠は▲郷田棋王×△羽生二冠戦(2012年7月・大和証券杯最強戦)では郷田棋王に▲4四歩とされ敗れている。
 本局の谷川九段は▲2三歩を選択。これに△同金は▲同角成~▲4三飛成なので△3二金とよろけるが、▲3三歩と追撃され、こんな所に拠点を作られては持ちこたえられないので△3三同金とし▲2二歩成(第5図)のと金作りを甘受する。


 第5図の局面については、中継サイトの解説を引用させていただくと
「駒割りは先手の銀得。さらにと金もできている。普通に考えれば先手が大優勢といってもおかしくない。しかし、先手は8八銀が壁形で4八飛やその周辺の金銀の働きが悪い。後手が、先手の悪形が解消される前に手を作れるかどうかの勝負」とある。
 先手陣の右側の金銀は飛車の打ち込みを防いでいるが玉の直接の守備には働いていない。左翼の銀は壁になっているだけに等しい。その結果、5七の地点が玉1枚で支えることになっており、しかも飛車のコビンにもなっており、先手の最弱点となっている。6筋の玉頭の隙間も大きな弱みだ。
 後手としては、その弱点を突きつつ先手の飛車を働かせたくない。そこで、△4四桂。この手は先手の飛車の利きを遮りつつ、次に△5六桂打の王手飛車を狙っている。この手で前例は1局となったとのこと。
 「▲羽生善治四冠(当時)-△三浦弘行八段戦(2005年5月・棋聖戦)だ。その将棋は先手の羽生が勝っているが、後手の三浦が途中詰みを逃がしたもので、内容的には後手が勝っていたと言われている。
 (局後の感想戦では)△4四桂が結果的に働かなかったようだ。「本譜で悪いとすれば単に△5二玉としてどうか、というところですか」と羽生。」
…中継サイトより)
 △4四桂は5六の地点だけ利いているのに対して、▲6七金は5七と5六の2地点をカバーしている。また、△4四桂は先手の飛車の働きを抑制しており、▲6七金は先手玉の懐を広げている。これらを総じて考えると、この2手の交換は若干先手が得しているように思う。
 ▲6七金以下、△5二玉▲6四歩△5四歩▲7八玉△6四歩▲7七銀(第6図)と進む。

 ここまで進むと、先手の左翼の壁になっていた金銀が働き玉も5七の薄みから逃れ安定したのに対し、後手玉は6、7筋の薄みが気になる。駒損の後手の主張点がなくなりつつあるように思える。△4四桂の狙いの半分の△5六桂打の狙いも消えている。

 続く。
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