英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2023王将戦第5局(2022年度) その1「 大長考の応酬だったが…」(1日目概要)

2023-02-25 19:31:24 | 将棋
昼食休憩を挟んでの大長考(消費時間としては2時間)の末、藤井王将が指した41手目は▲4五桂だった

 桂を4五に跳ねる手は、横歩取り戦に於いては基軸として考えたい手だが、跳ねた桂が取られてしまう危険が伴う、さらに、3七に隙を作るので、もろ刃の剣でもある。
 第1図でも桂の居なくなったところへの△3七歩という反動が生じている。▲3七同銀なら△2七歩成とされてしまう。

 しかし、藤井王将は当然ながらそれを承知で跳ねているのだから、“隙あり”と簡単に飛び込めるものではない。
 今度は羽生九段が長考に沈んだ。

 藤井王将の▲4五桂では、▲2三歩成や▲2五桂が有力とみられていた(互角か若干先手良し)。
 ▲4五桂は△3七歩もあるので、控室でも意外だったようだ。評価値的にも評判?が悪く、▲4五桂の局面は-200~-500点の評価だった(いろいろサイトを覗きました)。

 で、△3七歩と指すとどうなるのか?
 ▲3七同銀△2七歩成と銀取りの先手でと金を作らせるのは、さすがに痛い。また、手抜きで攻めるという選択肢もあるが、△3八歩成より優る手段はなさそう。なので、▲2九銀と引き△2七歩成と進むのが妥当。

 ここで、▲6五桂が本命だが、▲2三歩成を利かせる手もありそう。△同金と取らせてから▲6五桂や▲3五飛かなぁ…(▲3五飛は後手の3七の歩の裏をくぐる銀取り)。それに、変化図から▲8三角もあるかもしれない。
 まあ、私が書くまでもなく、相当深い変化まで読んだはずだ。

 ………2時間21分後、羽生九段は2六の歩を掴んだ……△2七歩成。△3七歩の次に有力と考えられた手だ。
 △2七歩成▲同銀に△2九飛かと思ったが、飛車の打ち場所は2九ではなく2五だった…△2五飛?
 確かに、銀桂両取りだが、4五桂は▲5三桂成△同玉と玉を危険地帯に引っ張り出す常套手段を備えており、せっかくの両取りも、”玉の危険度大”と桂得”の取引に持ち込まれてしまう上、返す刀で銀取りを受けられてしまう可能性が高い。
 本譜も、一旦、▲2三歩成を利かされ、△2三同金に勇躍▲5三桂成とされてしまった(ように見える)。


 この▲5三桂成に33分考えて羽生九段が封じ手をした。
 ▲5三桂成には△同玉と△同角があり、悩ましい。玉の安全度を重視するなら△同角だが、△1九角成がなくなってしまい、先手もゆっくりできる。強く△5三同玉としたいが、△5三同玉には▲2六銀が生じる。取ると▲3五角の王手飛車。そこで、△2四飛と逃げることになる(悔しい)が、更に▲2五歩とされ、飛車が窮屈というか危険。こんなことなら、飛車は2五ではなく2九に打つんだった……
 いや、それなら、第1図では△3七歩だった……

 評価値云々より、藤井王将が2時間考えて《△3七歩は大丈夫、成算あり》と4五に桂を跳ねたのなら、2時間20分考えて《▲4五桂は悪手ですよ》と△3七歩と打ってほしかった……
コメント
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