エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

エルソル大阪物語■44■「スキーブーム」

2018年01月25日 | エルソル大阪物語

■44■


武ちゃん「ウチの店のみんなでスキーに行くんやけど、一緒に行かへん?」

福嶋も誘い、高校時代の修学旅行以来のスキーに参加しました。
世間もスキーブームで、スキー場周辺では車が渋滞したり、
ゲレンデでも長時間のリフト待ちは当たり前でした。

「ハチ北」「神鍋」「びわこバレイ」「箱館山」「ちくさ高原」、
日帰りで行ける近畿圏のスキー場を休みの度に攻めました。

関西の理美容店の定休日は月曜日が多く、
土・日の大混雑を避けられた事もハマった理由の一つでした。

数をこなせば当然少しずつ上手くなり、
ついにスキー道具一式を買うことにしました。
「なんばCITY」の地下2階にある大型スポーツ店でバーゲンがあり、
武ちゃん、福嶋と共に向かいました。
上田「レンタルばかりやと高くつくもんな~」

ウェア上下、板、ビンディング、ブーツ・・
10万を越える買い物なんで慎重になります。

武ちゃん「うわ~高いな~」
    「アカン!ウェアは安いつなぎのヤツにするワ」
現実的な武ちゃんは格好より値段で選んでいました。

  上田「カッコええなー!これに決まりやな」
格好から入る僕は見た目で勝負です。

  福嶋「ろしにょ~~る?これってエエんか?」
イントネーションもおかしな福嶋はブランド名を気にしました。

3人みんながその場で現金払いだったので店員の機嫌も良く、
バッグやワックスなどいろんなオマケが付きました。
福嶋「なかなかエエ店やのう」

道具が揃えば足も軽くなります。
ついに日帰り出来るギリギリの場所、信州「おんたけスキー場」に行きました。
本場信州の雪質は素晴らしく、
関西のベチャ雪でならしたスキーの腕前がさらに上手く感じます。

武ちゃん「そろそろ一泊しよか」

  上田「そしたらあそこに行きましょうや」
    「半泊でイケますワ」

武ちゃんとラーク美容室のみんなで信州に向かいました。

行き先は「白馬八方尾根スキー場」です。

  福嶋「腹へったのう」

  上田「お前さっきカレー食ったばかりやろ、」
    「高速降りて11時過ぎやから、もう開いてる店無いワ」

武ちゃん「アカン、吹雪いてきたな・・・」
    「チェーン付けるか・・」

福嶋がイビキをかいて寝始めた頃に宿に到着しました。

宿は関西の民宿のような感じではなく綺麗で、屋上には露天のジャグジー風呂がありました。
まだ風呂に入っても構わないということで、急ぎ足で屋上に向かいました。

暗闇の中でライトアップされた風呂は、湯煙がもうもうと空にのぼっています。

もう他の客は誰も居なくて貸切り状態です。
ジャグジーのボコボコしたあぶくが全身をマッサージしてくれます。
武ちゃん「うお~っ、最高やな~」

  福嶋「生き返るのう、湯の中は温かいけど外は寒いんやろうな~」
    「おい上田、ちょっと立ってみ!」

言われるままに立ち上がりました。

武ちゃん・福嶋・梅やん「おおぉぉ~~~!!」

  上田「え!?どうした?」

  福嶋「お前の体から湯気がブウォーっと大きく出てスゲかったワ」

梅やん「メッチャかっこエエわ」
   「ライトアップされてるし、何か漫画みたいやな~」

調子に乗って、風呂に入っては出て入っては出てを繰り返し、
ボディービルダーの格好をしてみたり素っ裸で騒ぎました。

翌朝、
上田「ハーークション!」

福嶋「お前アホやろ、風邪ひいたやろ?」

上田「大丈夫や、これからひと汗掻いたら直るワ」
  「汗どころか、今日は大変やでたぶん」

「八方尾根スキー場」は、
リフト25基、コースも10コース以上の大型スキー場です。
ゲレンデには標準語の女性なんかも多く、関西人の僕達にとってはリゾート気分でした。

梅やんはスキー経験が豊富で、お手本のように颯爽と目の前から消えていきます。

上田「よ~し、上まで行こうや!」

リフトを乗り継いで向かった先は「兎平」と呼ばれるコブ斜面です。
「兎平」のコブ斜面はとても有名で、上級者コースなのです。

武ちゃん「うわ~~っ、えげつないなーこれ」

  福嶋「これはスゲーのう・・、来るんやなかった」

  上田「滑らんことには始まらん、真ん中から行くぞ!」

先頭をきってスタートしました。
土・日に削られたコブ斜面は思ったよりも溝が深く、
3個目のコブで早くもスキー板がはずれました。

板を拾って上を見上げると、
上級者達が「邪魔だから早くどけ!」といわんばかりに待ち構えています。

福嶋がスタートしました。
最初のコブでバランスを崩した福嶋は、
次のコブで信じられないジャンプをして真っ逆さまに転げ落ちました。

その様子を見て恐怖を感じ取った武ちゃんは、コースの端を恐る恐る降りていました。

3人とも何度も転がりながら何とか降りてきました。
上田「ハハハハッ、凄かったけどオモロイな~」

福嶋「アカン、足がもうパンパンや、攣りそうや」

武ちゃん「ちょっとしばらく平坦なところを滑ろうや」

上田「じゃあ麓まで一気に滑りましょか!?」
  「はぐれた場合は中間地点のレストハウス前で・・」

3人で再びスタートしました。
さすが信州、雪質も良くて長い距離が滑られます。

福嶋「あ~~アカン!あ~~~~~」

足に力が入らない福嶋がコースアウトして別コースに向かいました。

標識を見ると「チャンピオンコース」と書いてありました。

上田「武ちゃん、アイツどエライコースに落ちて行きましたよ」

武ちゃん「ハハハハ、生きて会えるかな~」

麓まで滑りきり、リフトに乗ってレストハウスに向かいました。
死にかけの福嶋と無事合流して食事にしました。

武ちゃん「失敗や、このつなぎのウェア、」
    「小便するとき全部脱がなアカン・・」 

上田「ハーークション!」「ハーークション!」

福嶋「お前、だんだんヤバくなってないか?」

上田「ちょっと頭痛と寒気もきたな・・」
  「まあイケるやろ、食ったらまた兎平攻めようや」

夕方4時まで思う存分滑りきりました。

帰りの車、僕は後部座席で震えました。
「カツカツカツカツ・・・・」
悪寒がひどく、歯がカツカツと鳴り止みません。

武ちゃん「上田君風邪やな、もう寝とき、家まで送るワ」

  福嶋「熱出そうやのう、あのジャグジーが原因か」

  上田「カツカツカツカツ・・・・」

  福嶋「上田のカツカツで音楽聞こえへんワ」   

翌朝、体温計は予想通りの高熱を示しました。
「39.8度」

とりあえずフラフラしながら職場に向かいました。
久里マスターは風邪より日焼けのほうに驚いた様子でした。

晴天のスキー場の日焼けはとても危険です。
積もった雪からの照り返しもキツく、どうやらケロイド状に日焼けしていたようです。

しかし、奥さんの目は誤魔化せませんでした。

奥さん「アンタ、熱あるやろ!?」
   「そんなフラフラで接客されてもお客さん迷惑やで」  
   「今日は休んで病院に行き!」

皆勤手当1万円をあきらめて病院に行きました。

気持ちが切れたとたんに症状は悪化して、3日間も寝込みました。

■44■

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エルソル大阪物語■43■「お化け屋敷」

2018年01月25日 | エルソル大阪物語

■43■

武ちゃん「ウチの美容院でパーティーするからおいで~や」

「武ちゃん」は大阪北部の千里中央の美容院を辞めて、
東住吉区針中野駅前の美容院に勤めていました。
武田先生時代の教え子「梅やん」の親が経営する繁盛店に誘われたようです。

「福嶋」を誘いました。
福嶋は白いホンダプレリュードで迎えにきてくれました。

上田「ホンマにお前の車か?マトモすぎやん・・」

福嶋「大人やけんのう」
  「窓も電動や、閉めてみ!」

上田「おお~!」(窓を閉める)

福嶋「・・・・んんッ」
  「プ~~~ッ、プスプス~」

上田「んむむっっ、カチッ、カチ、カチカチ・・」(開かない・・)

福嶋「窓ロックもついとんねん!恐れ入ったか!」

福嶋「ハハハ!ようし行くぞー!」

武ちゃんが勤める「ラーク美容室」は針中野駅前の一等地にあり、
お店も広く、たくさんのスタッフがいました。

「梅やん」は僕と同い年でしたが、僕が関美で助教師をやっていたのを知っていて、
しばらくの間「上田先生」と呼びました。

後に僕が「アドロ」と名付けたファンキーな明るい女性スタッフは、
僕の事を漫画「ハイスクール奇面組」のゴウ君に似ていると、
しばらくの間「ゴー君」と呼びました。

武ちゃん、梅やん、アドロ、
明るいスタッフがいるラーク美容室はアットホームで好感が持てました。

美容室でのパーティーは定期的にやっているようで、
店内にはカラオケ機器までありました。

福嶋「一番行かさしていただきます!」

酒が飲めない福嶋はカラオケで目立とうとしました。

福嶋「♪あ・な・た・が・わ・た・し・に・くれたもの~♪」
脇をワキワキしながら場を盛り上げます。

福嶋「♪だいすきだったけど~~~っっ!!ブホッ!」
福嶋の口元から前歯の「差し歯」がぶっ飛びました。

「ギャハハハハ!!」店内は大ウケでした。

福嶋「探スてくれ~」
カラオケを止めて、全員で福嶋の「差し歯」を探しました。
しばらく探したけどなかなか出てきません。

「あ、アレちゃう?」
梅やんが四つん這いの福嶋の靴を指しました。
福嶋の「差し歯」は、自分の靴の裏に貼りついていました。

汚れた「差し歯」を簡単に水で流しただけで、再び元の位置に差し込みました。

上田「お前、それ汚いワ!」
福嶋「ねえ(無い)よりマシや!」

美容室パーティーではモノ足らず、
近くのカラオケボックスになだれ込みました。

みんなで焼きソバを食べた後、福嶋が立ち上がりました。

福嶋「一番行かさしていただきます!」
  「と、その前に・・・」

予防として自ら「差し歯」を抜き取り、空の皿の上に置きました。

福嶋「♪きぃ~みぃ~がぁ~いた なぁ~つぅ~わぁ♪」

「歯抜け」の顔は反則で、みんな腹を抱えて笑いました。

最後まで歌い終えた福嶋が席に戻って言いました。

福嶋「オレの歯がねえ(無い)!」

歌っている間に「差し歯」を乗せた空の皿は店員に下げられたようです。

「ギャハハハハ!!」

歯抜けの福嶋が部屋を出てダッシュしました。

上田「あきらめろーー!!」

福嶋の「差し歯」は戻ってきませんでした。

カラオケも時間になり、
福嶋のプレリュードに乗り込みました。

福嶋「上田、今日ウチに泊まってくれるか?」
  「お化けがおるんよ、怖くてな~」

上田「見たんか!?」

福嶋「いや、お化けは見てねえ」
  「寝とったらな、天井の板が開いたんよ」
  「ス~って」

上田「風ちゃうんか?」

福嶋部屋に泊まる事になりました。
3階のアパートには躊躇せずに土足で上がりこみました。

部屋の中は随分と片付いて、ダンボールが目立ちました。

福嶋「マスターとケンカしてな、店変わるんよ」
  「この部屋も怖いしなぁ」

上田「で、天井の何処が開くんや?」

壁に手をつかせ、福嶋の肩に立ち上がり、
「開いた」という天井部分の薄い板を横にずらしてみました。

天井板は重く「ズズズー」と砂をかむ音がしました。

懐中電灯を照らし、屋根裏に首を突っ込み辺りを伺いました。
天井板が重かったのはレンガが乗せられていたせいでした。

天井裏はクモの巣も無く、梁が複雑にクロスしていて
人間が通るのは不可能でした。
埃もたくさん積もっていて猫や鼠が通った形跡も見当たりません。

上田「何もないぞー」
  「お前の差し歯、ココにも無いぞーハハハハ」

とりあえず開けた天板をそのままに福嶋の肩から降りました。

福嶋「おかしいのう、確かに開いたんやけどなぁ」
  「何か重シでも乗せるかのう・・」

上田「え?あの重シ、お前が乗せたんちゃうんか?」

福嶋「何のことや?」

上田「開いた天井板の上に赤いレンガが乗せてあったぞ・・」

福嶋「・・・・前の住人か」
  「やっぱりこの部屋、何かあるワ・・」

上田「んなわけあるか、風やって」

もう一度福嶋の肩に乗り、天井板の真ん中にレンガを乗せて
しっかりと元に戻しました。

上田「これでもう大丈夫や!」
  「寝るぞ~!」

福嶋「お前勇気あるのう、来てもろうてよかったワ」

上田「【北】はどっちや?北枕だけはやめておくワ」

座布団を二つ折りした枕で仰向けに横たわりました。

福嶋「じゃあ電気消すぞ」

真っ暗な部屋で天井を気にしながら見ていました。
(確かに、誰が何の目的でレンガを置いたんやろう・・)

「ズ」

暗闇の静寂のなかで、少し砂をかむ音がしました・・
視線を天井板に集中しました。


「ズズズズー」

上田・福嶋「ワァ======!!」

逃げるように二人で部屋を飛び出しました。

上田「ハァハァ、アカン、今日はウチに泊まれ・・」

次の日、福嶋は引っ越しました。

■43■

福嶋と・・

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エルソル大阪物語■42■「ぷっつん全開」

2018年01月25日 | エルソル大阪物語

■42■


新居のマンションは北野田駅から徒歩15分の所にありました。

引越し荷物を乗せた車の中では「引越し部隊」がご機嫌でした。
武ちゃん「次のトコロも1階なんやろ、楽勝やな!」
  福嶋「上田太っ腹やなぁ、みんなに焼肉って・・ゴッチョー!」

しかし到着すると、上機嫌の「福嶋」が静かになりました。

『グリーンハイツヒロタ』は
下を小川が流れる崖の斜面に建っていました。
車通りの一階部分はこのマンションでは3階にあたり、
僕の住む一階は【地下2階】になるのです。

重たい荷物を持った福嶋達が
「だまされた!だまされた!」と言いながら階段を降りました。

すぐ目の前には桃山大学があり、マンションの住人の殆どは大学生でした。

部屋の横は竹やぶだったので、よくムカデが出ました。
ムカデはタバコのヤニが嫌いというので吸殻を並べました。
ドアの外にも大量に吸殻をきれいに並べたので
「変な宗教でもやってるんじゃないか?」と学生達は僕に近づきませんでした。

『ターニン河内長野店』は、
河内長野近くの駅から「211段」もの階段を登った高台にありました。
「だまされた!だまされた!」と言いながら登りました。

50坪の巨大なお店は、総ヒノキ張りでした。(四万十産ヒノキ)

店内は「理美容」にする予定だったらしく、5台のセット面が左右に分かれてありました。

OPENまでの3日間は朝からずっとポスティングでした。
新興住宅街らしく、どの家にも「猛犬注意」の張り紙があり、
ドキドキしながらチラシを入れました。

美容師さんがOPENまでに間に合わず、
OPEN直後は「理美容」というチラシを見た主婦が殺到して大変な事になりました。

バックシャンプーの出来る僕は戦力になりましたが、
久里マスターのレディースカット(特にパーマ)は評判悪く、
数日後には女性客はまばらになりました。

結局その後も美容師は入らず、チラシ効果も消えた頃になるとお店は随分暇になりました。

・新興住宅街でまだ家の建ってない区画がたくさんある
・ほとんどがサラリーマンで平日に家にいるような人がいなかった
・新しい住宅ばかりでお年寄もほとんどいない

暇になった店はマスターと僕でお客さんの全てをこなしてしまう為、
困った後輩は辞めてしまいました。

そんなある日、思いもよらない奴が突然お店に現れました。

「上田君久しぶり~、元気してた~?」
『ぷっつん女子・富長』でした。

富長「もう終わるやろ?」
  「車で来たから、家まで送ったるワ~」

閉店後、赤いシビックに乗り込みました。

上田「おいおい、ちょっと待てよ~・・」
  「お前、どうやってココが分かった?」
  「3~4人しか知らんはずやで?」

富長「ふふふ、分かんねんって、だいたい」

上田「お前な・・相変わらず怖いぞ・・」

富長「ふふふ、まあまあ、それより家何処よ?」
  「この道でええの?合ってる?」

上田「合うとるがな・・」

富長「スーパーとか無いん?ご飯作ったるワ」

上田「マジ!?」

オートロックのワンルームに富長を招き入れました。

富長「うわ~っ、出世したな~上田君」
  「でも安心しいや、もっと出世すんで~」
  「綺麗な部屋やな~」

富長がササッと作った野菜炒めを食いました。

上田「お前、急に来て・・何か話がありそうやな・・」

富長「うおー、分かるかー、天才ちゃう!?」

上田「もうええワ、何よ?・・ん?ウマイな野菜炒め」

富長「直球で言うわな」
  「保証人になってくれへん?」
  「ちょっと個人宅配やるねんけど、」
  「友達保証人っちゅうのがいんねん」
  「アタシ、家出して実家に帰られへんからな~」
  「こんなん頼める友達そうそうい~へんのよ」

上田「今何処に住んでるんや?」

富長「男のトコよ」
  「小説家の卵でな~、そのうち絶対に売れんねんよこれが・・」
  「ピアノ弾きながら口説かれてサ~、ポロロンってな」
  「カヨさん!小説売れたら一緒になって下さい・・いうのよ~」
  「ひぃー」

上田「ちょっとしたお金なら貸せるけど・・」
  「保証人はアカンな、人の保証なんか出来るほどのお金は無いワ」

富長「上田君マジメやからな~、やっぱ無理かぁ~、う~」

上田「ゴメンな」

富長「じゃあ今からSEXしよか?」

上田「・・・ヨッシャ、やろか」

富長「く~~、場数踏んどるな~、反応オモロ無いワ」
  「アタシな、色々あってな、それこそ場数踏んでんねん」
  「経験人数60人やで」
  「ふふふ、有り得ひんやろ?」
  「その辺の男はみんなオンナの体目当てや」
  「生きていくために随分利用させてもらったワ」
  「でも上田君は違うんよな~」
  「アタシの周りで肉体関係のない男友達って上田君だけなんやで~」
  「信じへんと思うけどな・・」

富長「・・・よ~し、ちょっとドライブ付き合って」

上田「何処行くんや?」

富長「お宮かな?ふふふ、今から行かなアカンねん!」

上田「はぁ!?ウソやろ?もう11時過ぎてるぞ!」

富長「か弱い乙女に一人で行かすわけにはいかんやろ」
  「フフフフッ」

シビックの助手席に乗せられ、河内長野の山道を走りました。

富長「キャアーーッ!!」
突然踏んだ急ブレーキのせいで、フロントガラスにぶつかりました。

上田「な、何やっ!?」

富長「今、白いウサギが横切ったやろ?」

上田「そんなモンおらんかったワ!危ないワ!」

富長「上田君、アルビノって知ってる?」

上田「何やそれ?知らんがな」

富長「最近アタシのまわりには白い動物ばっかり出てくんねん」

上田「またワケワカランことを・・」

車は外灯の無い山道を少し走り続けました。

すると確かにお宮の階段のような石段のたもとに到着しました。
階段は山の上に長く続いています。

富長「行くで上田君!」

上田「え?オレも行かんといかんのか!?」

無言で石段を上りはじめた富長の後ろを、あわてて追いました。

富長はもう喋ってくれません・・

時刻がちょうど0時を迎える頃、石段の頂上に大きな鳥居が見えました。

富長が鳥居をくぐったその時、空に稲光が光ました。

もう怖さも限界で、富長をおいて階段を駆け下りました。

少しして富長が跳ねるように下りてきました。

富長「いや~良かった良かった、これでヨシッ!家まで送るワ、」
  「ゴメンな~、さすがに一人じゃ怖いからな~、助かったワ」

車はマンションに向かいました。

「キイィィィーー!!」

急ブレーキを踏まれました・・

富長「今、白いインコが・・」

上田【もうええっちゅうねん!!!!!】

■42■

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