わすれぐさ たねとらましを あふことの いとかくかたき ものとしりせば
忘れ草 種とらましを 逢ふことの いとかくかたき ものと知りせば
よみ人知らず
相手を忘れられるという忘れ草の種を採っておけばよかった。あの人と逢うことがこれほど難しいと知っていたならば。
「忘れ草」は萱草(かんぞう)の別名。身に着けると心の憂いを忘れさせるとされ、恋の苦しみを忘れるという文脈でしばしば歌に詠まれており、古今集でもこのあと 0766、0801、0802 に登場します。第二句の「まし」は末尾の「せば」と組み合わさって反実仮想を表します。「そうと知っていたら種を採っておいたのに、知らなかったからそうはしなかった」ということですね。