こぬひとを まつゆふぐれの あきかぜは いかにふけばか わびしかるらむ
来ぬ人を 待つ夕暮れの 秋風は いかに吹けばか わびしかるらむ
よみ人知らず
やって来ない人を待つ夕暮れの秋風は、どのように吹けばこんなにつらいものになるのでしょう。
「秋」には「飽き」のニュアンスも含まれているのかもしれません。また、冒頭、同じフレーズで始まる藤原定家の歌も思い出されますね。百人一首(第97番)にも採られた「新勅撰集」採録の名歌ですが、百人一首も新勅撰集も定家自身が撰者ですから言わば「自薦」。定家自らが自認する自信作といったところでしょうか。
こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 見もこがれつつ
藤原定家
(新勅撰集 巻第十三「恋歌三」 第849番)