こふれども あふよのなきは わすれぐさ ゆめぢにさへや おひしげるらむ
恋ふれども 逢ふ夜のなきは 忘れ草 夢路にさへや 生ひしげるらむ
よみ人知らず
恋しく思っても逢える夜がないのは、人を忘れるという忘れ草が夢の中にまで生い茂っているのでしょうか。
「忘れ草」を詠み込んだ四首(0765、0766、0801、0802)のうちの一首。「さへ」は現実の世界ではもちろん夢の中にまで、の意。そう歌われているのは直接的には忘れ草が生えているということですが、現実世界はおろか夢の世界でも愛しい人に逢えない、ということが当然含意として詠み込まれていますね。