ときすぎて かれゆくおのの あさぢには いまはおもひぞ たえずもえける
時すぎて かれゆく小野の 浅茅には 今は思ひぞ たえず燃えける
小野小町姉
時期が過ぎて枯れてゆく小野の浅茅に、野焼きの火が燃えているように、愛された時を過ぎてあなたが私から離れてゆく今、私の胸ではずっとあなたへの思いの火が燃えているのです。
「かれ」は「枯れ」と「離れ」の掛詞。「思ひ」の「ひ」は「火」が掛かっています。どちらもよく見られる修辞法ですね。
作者の小野小町姉は詳細不詳で、出自や経歴はわかっていません。古今集のこの一首の他、後撰和歌集にも二首が採録されています。