うゑていにし あきたかるまで みえこねば けさはつかりの ねにぞなきぬる
植ゑていにし 秋田刈るまで 見え来ねば けさ初雁の 音にぞなきぬる
よみ人知らず
早苗を植えたきり、秋の田を刈る時期になってもあの人が帰って来なかったので、今朝初雁が鳴いていたのと同じように、私も泣いてしまったことです。
「なき」が「鳴き」と「泣き」の掛詞なのは和歌の常套手段ですね。田植えの時期から秋の刈り取りの頃までの長い無沙汰を嘆く歌。足だけでなく気持ち自体が作者から離れて行ってしまっているのかもしれませんね。作者自身、そう思ってはそれを否定する繰り返しの日々であることが想像される悲しい歌です。