しでのやま ふもとをみてぞ かへりにし つらきひとより まづこえじとて
死出の山 ふもとを見てぞ 帰りにし つらき人より まづ越えじとて
兵衛
死出の山の麓を見て引き返してきました。私につれないあなたより先には越えまいと思って。
詞書には、病気で具合が悪かった時、親しい仲であった人が見舞いにも来てくれず、治ってから見舞いをよこしたので詠んで送ったとあります。心細くて、見舞いに来てほしいときに来てくれず、元気になってからのこのこと(?)やって来た相手に、皮肉たっぷりに「あなたより先にだけは死ぬまいと思って、死出の山を麓だけ見て帰って来たのよ」と詠み送ったということですね。
兵衛(ひょうえ)は、平安時代前期の貴族藤原高経(ふじわら の たかつね)の娘とされる人物で、0455 以来の登場。古今集への入集はこの二首となります。