ゆめにだに あふことかたく なりゆくは われやいをねぬ ひとやわするる
夢にだに 逢ふことかたく なりゆくは われや寝を寝ぬ 人や忘るる
よみ人知らず
夢でさえ逢うことが難しくなってゆくのは、私がつらい思いで寝られないためなのか、それともあの人がわたしを忘れてしまったからなのか。
「われや」「人や」の「や」は、反語の意味でも使われますが、ここでは疑問ないし問いかけの意の係助詞。「や」に呼応して文末は「寝ぬ」「忘るる」と連体形で結ばれています。幾度も出てきていますが、相手が自分のことを思ってくれていると、その相手が自分の夢に現れるという当時の俗信がベースにある詠歌ですね。