いましはと わびにしものを ささがにの ころもにかかり われをたのむる
今しはと わびにしものを ささがにの 衣にかかり われをたのむる
よみ人知らず
もうこれでお別れだと辛い思いでいたけれど、蜘蛛が着物にまとわりついて、私に期待を抱かせるのです。
「今しは」は「もはやこれまで」の意の「今は」に強調の「し」がついた形。「ささがに」は蜘蛛の別名で、当時、蜘蛛が現れるのは待ち人が訪れて来る前兆と信じられていました。そんなはずはないと分かっていながらもそうした迷信を信じようとしてしまう、切ない恋心ですね。