漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0782

2021-12-20 19:34:28 | 古今和歌集

いまはとて わがみしぐれに ふりぬれば ことのはさへに うつろひにけり

今はとて わが身時雨に ふりぬれば 言の葉さへに うつろひにけり

 

小野小町

 

 もうお別れということ。私の身はあなたにとって古びたものになってしまったのでしょう。時雨が降って木の葉の色がうつろうように、あなたの言葉も色あせてしまいました。

 「ふり」は「古り」と「降り」の掛詞。小野小町はこの語法が好きだったのかもしれませんね。この一語によって、「時雨が降ったので木の葉が色あせる」情景と「相手にとって古びてしまった自分なので相手の言葉が色あせる」という自身の境遇とが、見事に重ね合わされています。この次の 0783 に返しの歌があることから、この歌で思いが向けられている相手は小野貞樹(おの の さだき)であることがわかります。二人を夫婦と見る向きもありますが、良くはわかっていません。