こよろぎの いそたちならし いそなつむ めざしぬらすな おきにをれなみ
こよろぎの 磯立ちならし 磯菜つむ めざし濡らすな 沖にをれ波
よみ人知らず
こよろぎの磯をさかんに歩き回って磯菜を摘む少女を濡らす出ない、沖にいなさい、波よ。
詞書には「相模歌」とあります。「こよろぎ」は相模国(今の神奈川県)の地名で、後には「磯」にかかる枕詞として使われるようになりましたが、ここでは「相模歌」ですから実際の地名(「小余綾」)を表しているのでしょう。0874 にも出てきた語ですね。「めざし」はもともとは目にかかるほどの長さで前髪を切りそろえた子供の髪型の意で、そこから少女そのものを指すようにもなりました。ここでは後者の意味ですね。