人の家の池のほとりの松のしたにゐて、風の音聞ける
あめふると ふくまつかぜは きこゆれど いけのみぎはは まさらざりけり
雨降ると 吹く松風は 聞こゆれど 池のみぎはは まさらざりけり
人の家の池のほとりにある松の下にいて、風の音を聞く
松籟の音は雨が降っているかのように聞こえるけれども、池の水量は増えてはこない。
耳に聞こえる松籟に、雨が降っているのかと錯覚するけれども、目に見える池の水は増してこない、その視覚と聴覚の矛盾する感覚に面白みを感じての詠歌。屏風歌ですから、松籟も水が増えないのも実像ではなくすべて想像の世界です。歌人の感受性と言うか、創造性の高さを感じさせますね。
この歌は拾遺和歌集(巻第八「雑上」 第454番)にも入集しています。