うゑしうゑば あきなきときや さかざらむ はなこそちらめ ねさへかれめや
植ゑし植ゑば 秋なき時や 咲かざらむ 花こそ散らめ 根さへ枯れめや
在原業平
こうして植えたからには、秋が来なくて咲かないなどということがあろうか。例え花が散ったとしても、根までが枯れてしまうことがあろうか。秋が来ないことはないし根が枯れることもないのだから、毎年必ず花が咲くのだ。
非常に難解ですね。「うゑしうゑば」は、同じ言葉を繰り返すことによる強調表現。そのあとの句は反語を用いて逆に強い肯定を表しています。詞書には「人の前栽に菊に結び付けて植ゑける歌」とあり、これ自体難解ですが「人の家の庭に植えた菊に結び付けて詠んだ歌」ということでしょうか。プレイボーイとして名高い業平の歌ですから「人」とは思いを寄せる女性。その愛しい人に菊を贈って自らの手でその庭に植え、秋が来るたびに必ずこの菊が花を咲かせることこそが自身の思いの強さなのだ、といった解釈がしっくり来るように思います。