わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
わが庵は 都の辰巳 しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
喜撰法師
私の草案は都の東南。そのような場所でおだやかに暮らしているが、私がこの世をつらいと思って隠れ住んでいる宇治山だと人は言っているようです。
百人一首(第8番)にも採録され、良く知られた名歌ですね。自分は気ままな隠遁生活でのどかに過ごしているのに、世間の人たちは私が世を憂いて隠棲しているなどと言っている、というわけですね。
作者の喜撰法師(きせんほふし)は平安時代初期の真言宗の僧。六歌仙の一人ですが、古今集への入集はこの一首だけで、喜撰法師の歌自体、他には玉葉和歌集採録の次の一首が伝わっているのみです。
このまより みゆるはたにの ほたるかも いさりにあまの うみへゆくかも
木の間より 見ゆるは谷の 蛍かも いさりに海人の 海へ行くかも
(玉葉和歌集 巻三「夏」 第400番)