いささめに ときまつまにぞ ひはへぬる こころばせをば ひとにみえつつ
いささめに 時待つまにぞ 日は経ぬむ 心ばせをば 人に見えつつ
紀乳母
かりそめに時を待っている間に日が経ってしまった。私の思いだけは知らせているのに。
愛しい人に思いを伝えるだけつたえてただ待っている間に、時だけがいたずらに過ぎ去っていくむなしさというところでしょうか。隠し題は「いささめに ときまつまにぞ ひはへぬる こころばせをば ひとにみえつつ」と、「笹」「松」「枇杷」「芭蕉葉」の4つもの言葉が詠み込まれています。(「ばせをば」以外はたまたまという気も正直しますが、まあそれは言いっこなしですね ^^;;)
作者の紀乳母(き の めのと)は平安時代前期の女官で、紀全子(き の ぜんし)のこと。第57代陽成天皇の乳母であったことからこう呼ばれていたようです。古今集には 1028 でもう一度登場します。