あしひきの やまたちはなれ ゆくくもの やどりさだめぬ よにこそありけれ
あしひきの 山立ち離れ 行く雲の やどりさだめぬ 世にこそありけれ
小野滋蔭
山を発って離れて行く雲のように、とどまる場所を定めることもない世であることよ。
風に流れてひとところに留まることのない雲に準えて、世の無常を詠んでいますね。隠し題は「やまたちはなれ」と詠み込まれた橘です。
作者の小野滋蔭(おの の しげかげ)は平安時代前期の貴族にして歌人。古今集へはこの歌が唯一の入集で、勅撰和歌集全体で見てもこの一首のみのようです。