はなのきに あらざらめども さきにけり ふりにしこのみ なるときもばな
花の木に あらざらめども 咲きにけり ふりにしこのみ なるときもばな
文屋康秀
花が咲く木ではないのに咲きましたね。年老いたわが身も、このように実のなるときがあると良いのですが。
詞書には「二条の后、春宮の御息所と申しける時に、めどに削り花させりけるをよませたまひける」とあります。「めどに削り花」は、0431 でもご紹介した古今伝授三木のひとつで、「削り花」は木を削って作った造花のこと。本来花の咲かない木に造花を挿した情景を詠んでいるということのようです。「このみ」は「この身」と「木の実」の掛詞ですね。隠し題は「あらざらめども」に詠み込まれた「めど(=萩の一種)」です。