なみのはな おきからさきて ちりくめり みづのはるとは かぜやなるらむ
波の花 沖から咲きて 散り来めり 水の春とは 風やなるらむ
伊勢
波しぶきの花は沖から咲いてこちらへ散ってくるようだ。水の春は、風がもたらすものなのだろうか。
波しぶきを花と見立て、それが風にあおられて沖からこちらに近づいてくる情景を詠んだものですね。「水の春」という表現は、水にも季節があるという前提に立っており、同じく水の季節を詠んだ歌の 0302 でもこの歌をご紹介しました。隠し題は「みづからさきに」ということで、ひとつ前の 0458 と同じく「唐崎」です。