をぐらやま みねたちならし なくしかの へにけむあきを しるひとぞなき
小倉山 峰立ちならし 鳴く鹿の 経にけむ秋を 知る人ぞなき
紀貫之
小倉山の峰を平らにするほどに歩き回って鳴いている鹿が、幾たびの秋を過ごして来たのか、誰も知る人はいない。
巻第十「物名」に収められた歌の中で唯一の折句の歌。各句の最初の文字を拾っていくと「をみなへし」となります。個人的には少し違和感がありますが、編者たちは折句も物名歌のひとつと位置付けたわけですね。それにしては折句はこの一首のみですし、逆に 0410 の業平作「かきつばた」の折句は羇旅歌に分類されていますから、ちょっと編集の意図がわからない気がします。