漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0458

2021-01-30 19:27:42 | 古今和歌集

かのかたに いつからさきに わたりけむ なみぢはあとも のこらざりけり

かの方に いつからさきに 渡りけむ 波路はあとも 残らざりけり

 

阿保経覧

 

 あちら側に、いつの間に先に渡ったのだろうか。波の上には通った跡も残ってはいない。

 「いつからさきに」に詠み込まれた「からさき(唐崎)」は琵琶湖西岸の地名。なので「かの方」は琵琶湖の対岸のことと思われますが、先に渡って行ってしまったのが誰(あるいは何)なのかは、この歌だけからはわかりません。
 作者の阿保経覧(あぼ の つねみ)は平安時代前期の貴族にして歌人。古今集への入集はこの一首のみで、勅撰集では新拾遺和歌集にも一首が採録されています。