うちつけに こしやとはなの いろをみむ おくしらつゆの そむるばかりを
うちつけに 濃しやと花の 色を見む 置く白露の 染むるばかりを
矢田部名実
ちょっと見ると、なるほどその名の通り濃いな、と花の色を見るだろうか。置いた白露が色を染めてみせているだけなのに。
「うちつけに こしやとはなの」と「けにごし」を詠み込んでいます。「けにごし」とは、漢字では「牽牛子」と書いて朝顔のこと。歌の内容としても朝顔のことを詠んでいて、その名に「濃し」と入っている通りなるほど色が濃い、というわけですね。
作者の矢田部名実(やたべ の なざね)は平安時代前期の官人。古今和歌集への入集はこの一首のみです。