朝の5時に目が覚めた。
この季節のドイツは陽が長く、外はもう明るくなっている。
曇り空が続いて、すっきりしない天気だけれど、
シャッターの隙間から明るい光が差していた。
なぜ、目が覚めたかというと、夢を見ていたからだ。
僕は中学2年生で、3年生を送り出すお別れ会の準備をしていた。
その時に隣の席に座っていた女子生徒と話をしている夢だった。
ある人は演奏のための楽器の準備をしていたり、
ある人はコーラスの練習をしていた。
僕はどうやら、学年代表として3年生に言葉を送る立場のようだ。
巻き物を手にして、ぶつぶつ言っていた。
そして、学年の列に並ぶ。
そわそわしている僕の隣で、その女生徒が話しかける。
「緊張してるん?頑張ってね。」
「ああ。」
緊張してる僕を解そうとしているのか、
「あの先輩が格好よかった。」とか「この人のサインを貰いたい」
とか、いろいろと話しかけてきていた。
2年生の時は、僕は前から数えた方が早いくらい背が低かった。
その女生徒はすらりとしていて背が高く、僕より少し目線が上だった。
でも、緊張してうつむき加減の僕を下から覗き込むように話しかけてきた。
少しドキリとしたけれど、初めてみんなの前に立つ緊張感で、
僕は上の空で返事をしていた。
「気に掛けてくれてありがとう。」と言う気持ちと
「今はほっといて!」という気持ちがぐるぐる回っていた。
さて、僕の番だ!と言うところで目が覚めた。
その時、ふと思った。
夢の中で僕の隣にいた女子生徒。
現実にいた人かも知れない。
でも、中学のときなのか、高校の時なのかすら思い出せない。
名前も思い出せない。
確かに過去に会ったことのある人だ。それは確実。
実家に置いたままにしている、卒業アルバムを見てみたら、
きっと出てくると確信できる。
でも、現実では、そんな近くの席にいたこともないし、
ひょっとしたら、同じクラスになったこともないかも知れない。
突然、僕の夢に現れてきたその人が、妙に今でも引っ掛かってしまっている。