大髙氏が会長を務めるヨークベニマルは、福島県を中心に食品スーパーを展開する。業績は堅調で、2016年度はヨーカ堂のはるか上を行く営業利益140億円そんな、ヨークベニマルを作り上げた実力者、大高善興氏がイトーヨーカ堂取締役に就任です。創業家伊藤雅俊氏、二男の伊藤順朗氏とタッグを組み創家の意向も絡み再生に向けて舵を切りそうです。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長ですら、クビを切らされた創家の意向。『従業員や地域のことを考えると、簡単に店舗を閉めてはいけない』との錦の御旗を旗印にイトーヨーカ堂経営主導権争いは続きそうです。
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「きちんとしたフォーマットさえ作れば、成長の余地はある。必ずしも店舗を閉める必要はない」。イトーヨーカ堂の大髙善興取締役はそう本音を漏らす。
セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー、ヨーカ堂が苦境にあえいでいる。2017年2月までの既存店売上高は12カ月連続で前年同月割れ。2016年度は不良在庫の処分も重なり、2期連続の営業赤字となる見通しだ。
こうした中、同社は止血策として赤字店舗の閉鎖を進めてきた。2020年度までに収益改善の見込めない40店を閉鎖する。この方針に沿う形で、2016年4月のザ・プライス千住店閉店を皮切りに、次々とリストラが断行されてきた。そのスピードはほぼ方針に沿ったものだ。
店舗リストラをめぐり激しく対立
だが、今3月の役員人事が社内外に波紋を広げている。2016年1月に復帰した亀井淳氏が社長を退き、代わって常務執行役員の三枝富博氏が昇格。このトップ人事に合わせ、ヨークベニマルの会長を務める大髙氏と、創業者・伊藤雅俊氏の二男である伊藤順朗セブン&アイ常務執行役員がヨーカ堂の取締役に就任した。
大髙氏が会長を務めるヨークベニマルは、福島県を中心に食品スーパーを展開する。業績は堅調で、2016年度はヨーカ堂のはるか上を行く営業利益140億円(前期比5%増)を見込む。「大髙さんは食品スーパーのプロ。彼の知見を生かして、食品部門を強化したい」(三枝社長)。
一方で大髙氏は冒頭の発言のように店舗リストラには否定的な姿勢を示す。あるセブン&アイ幹部は「大髙氏は以前から『従業員や地域のことを考えると、簡単に店舗を閉めてはいけない』と強く主張していた」と明かす。こうした経緯もあり、「(ヨーカ堂前社長の)亀井氏と大髙氏が店舗リストラをめぐり、激しく対立していた」(別のセブン&アイ関係者)という。
さらに伊藤氏が取締役となったことも今後の店舗閉鎖に影響しそうだ。「グループ全体の大局からヨーカ堂の課題を指摘してもらう」(三枝社長)のが表向きの就任理由である。ただ、言うまでもなくヨーカ堂はグループの祖業。そのリストラに、伊藤氏が一定の牽制機能を果たすことも十分に考えられる。
不採算店の閉鎖が進まなければ、より重要になるのが既存店の立て直しだ。そのカギを握る部署が、2016年10月に誕生したオペレーションサポート部(OS)だ。
OSの役割は店舗と本部の連携強化を図ること。100人を超える部員が、週に4日は店に入り現場の課題を洗い出し、1日は本社で各店の課題や取り組みを共有する。
高橋信OS部長は「これまでは店と現場の意思疎通がうまくいっていない面があった。両者をつなぐ“通訳”が必要だった」と話す。背景にあるのが3年前に始めた「独立運営店舗」という施策だ。
■独自仕入れでコストが4割高のケースも
ヨーカ堂は画一的な店舗運営が低迷の原因ととらえ、各店に権限を与え、地域の嗜好に合わせた品ぞろえを進めてきた。確かに店ごとの独自色を出す点では効果があったが、非効率な部分も散見された。
たとえば、関東圏のある店舗では弁当や総菜の品ぞろえを強化したあまり、食材や工程が増えすぎて現場に負荷がかかっていた。ほかにも、全国で売れる住居関連の商品を地方店が独自に仕入れ、コストが4割も高くなったケースがあったという。
OSの発足に合わせて、2016年秋から地域ごとに分けられていた仕入れ機能を再び本部に集約した。「OSを媒介として、商品をしっかり現場にマッチングさせていく」(高橋部長)。
もちろん、店舗を閉鎖せずヨーカ堂を再生できれば、それが理想的だ。ただ、これまで何度もそうしようとしてできなかった現実がある。仮にリストラが遅れれば、ヨーカ堂にとって致命傷となるおそれも否定できない。
又吉 龍吾