不動産頼み脱却を目指し、中国・習政権は経済成長率かさ上げのために、EVなど「新質」と称する新産業分野の増産の大号令をかけ、EV、リチウムイオン電池、太陽光パネルなどで世界最大の市場シェアを築き上げた。「新質」に集中的に補助金を投入し、それらの生産力強化に努めてきた。リチウムイオン電池などの材料に使われる鉱物資源の獲得に向け、共産党が支配する政府と企業、金融機関が一体となって東南アジアや中南米などでの鉱山開発に全力を挙げている。こうして、中国は昨年までにEV市場で65%、車載用電池市場で約7割のシェアを持つようになった。中国はこれらのサプライチェーン(供給網)を独占しているわけだ。しかし、それらは生産過剰で値崩れを起こし、不動産バブル崩壊に続きEVバブル崩壊危機に突入しつつある。テスラの上海工場も撤退するようだ。
共産党支配の中国はバブル崩壊後の日本と同じ道は歩まない。
1980~90年代に日本が対米輸出で経済飛躍を遂げ、1990~2000年代には韓国、台湾、香港などのアジアNIESが離陸し、2000年代以降中国経済が高成長を遂げたが、その起点はすべてドルの散布にあったといえる。
この対外黒字体質の定着、恒常的貯蓄余剰が日中経済に大きなゆがみをもたらした。本来であれば国内需要の増加により対外不均衡が是正されるべきであるのに、健全な内需拡大は出来なかった。
対米黒字の積み上がりが、日本や中国における通貨の過剰発行をもたらし、その後の不動産バブル形成の原因になった。
ドル散布をした米国内は安価な輸入品により購買力が押し上げられた。この対外債務の積み上げをともなう米国経済の成長と生活水準の向上は持続性があるものかが問われるが、それはドル覇権が今後も維持されるかどうかにかかっているだろう。米国が積み上げた対外純債務は過去の経常収支赤字額累計で15兆ドル、対外資産負債残高に記録される対外純債務では18兆ドルと巨額である。
この返済をただちに迫られればドルは急落し、米国は大インフレに陥る。しかしドル覇権の維持が確かであれば、対米債権はドルという通貨保有であるから、返済を求める必要がなくなる。中国人民元が急落しても米ドルは下がらない。つまり米国国民の生活水準を維持するためには、だれが大統領になってもドル覇権を今後も持続するであろう。