境界性パーソナリティ障害の女性が 主人公という映画、
「たとえば檸檬」 が公開されています。
〔劇場: シネマート六本木
監督: 片嶋一貴 脚本: 吉川二郎
主演: 韓英恵 (かんはなえ) 有森也実
オフィシャルサイト: http://www.dogsugar.co.jp/lemon 〕
二十歳のカオリ (韓) は、 彫金の才能に恵まれながらも、
母親の過干渉と暴力から 逃れられず、 母の放埒さに苦しんでいます。
40才の香織 (有森) は、 大手企業の秘書を務めていますが、
一方で万引きや不倫, かりそめの情事を繰り返し、 引きこもりの娘も持っています。
(香織は 境界性パーソナリティ障害と診断されます。)
何の接点もない二つの話が 並行して進んでいきますが、
やがて 二人の予想外の関係に 観客は気付き、 引き込まれていきます。
そのストーリー構成や、 最後に解き明かされる因縁は 見事です。
母親の呪縛から 抜け出そうともがき、 母親の死さえ望む カオリと、
奔放に振る舞いながら、 陰では激しく苦悩する 香織。
それぞれ独立した物語が やがて融合し、
母娘間に引き継がれる 確執が浮かび上がってくるのです。
母と娘の 歪んだ愛情と救いがたい憎しみ、 連鎖する葛藤が テーマの作品です。
母性愛神話など なぶるように踏みにじり、 痛々しい悲劇が展開します。
娘から全てを奪い、 愛がありながらも愛することができない 苦悩を抱える母親。
母親の無惨な最期もありますが、
そこから 悲劇の連鎖を断ち切る 一抹の希望が指し示されます。
監督と脚本家は、 あくまで 母娘の愛憎の映画を 作りたかったのでしょう。
しかし僕としては、 やはり
境界性パーソナリティ障害がどう描かれるのか という観点から観てしまいます。
その意味では期待外れでした。
この映画では、 パーソナリティ障害は後付けの感があり、
万引きや性依存などがパーソナリティ障害という 間違いやすい印象を与えかねず、
描かれたくない描かれ方がされていました。
(次の記事に続く)