「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「たとえば檸檬」 (2)

2013年01月09日 20時35分11秒 | 映画
 
(前の記事からの続き)

 映画では BPDの発症の時期が 不自然と思われますし、

 幻聴や極端な幻覚 (妄想) は 統合失調症レベルの症状です。

(心子やBPDの人は、

 過去の記憶が塗り替えられて 心的事実に縛られてしまうのは 茶飯事ですが、

 現在存在しないものが 聞こえたり見えたりするのは、

 BPDの特徴ではありません。)

 香織を 境界性パーソナリティ障害と診断する女医 (内田春菊) も、

 「こんな医者は嫌だ」 という お笑いで扱われるようなものに感じました。

 香織に イエスノーで答えさせる

 定型の質問 (「他人に見捨てられるのは恐い」 他) をしたり、 答を強要したり。

 でもこの女医は、 病気を治せる医者として 登場しています。

 以下は、 女医による境界性パーソナリティ障害の説明です。

 「総合的に判断した結果、 境界性人格障害の疑いが 濃厚と思われます。

 ボーダーラインとも呼ばれています。

 神経症と精神病の狭間にあって、 分類が極めて困難な症例です。

 多くの場合、 幼少期に受けた精神的ダメージが 原因と言われています。

 特に母親がボーダーの場合、 子供もその影響を 強く受ける傾向があります。

 取り敢えず 1週間分のお薬を出しておきます。」

 BPDに関わっている人たちの間では、 今どきこんなことは言う医者は 笑い物です。

 (「“人格”障害」 という言い方も。)

 神経症と精神病の境界という分け方は 何十年も前の話ですし、

 原因は 第一に先天的なものであって、 子育てに問題がない 誠実な親は沢山います。

 父親でなく母親がボーダーだと、

 子への影響が強いという話も あまり聞いたことがありません。

(ボーダーが 男性 (父親) より女性 (母親) に

 非常に多いということはあるとしても。)

 それに、  「1週間分のお薬」 って何でしょう?

 グループセラピーも 患者には受け入れがたいもので、

 作品の中でも 香織は腹を立てて 出て行ってしまいます。

 映画の打ち上げのとき 内田春菊が、

 「香織の病気を酷くして すみませんでした」 と言ったら、

 若いスタッフから  「そうだよ」 という声が上ったそうです。

 睡眠療法で 記憶を辿るという治療も、 現在では不適切でしょう。

(次の記事に続く)
 
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