大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 2月23日 夢

2022-02-23 14:19:29 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 2月23日 夢





 高校時代、夢の中で2歳の時に他界したはずの曾祖母が入院して見舞っている夢を見ました。
私は曾祖母の顔は覚えていませんが、何故か塩せんべいを貰った記憶だけあります。
夢の中の曾祖母、逆光で顔だけは何故か見えずにいました。
 息もきれぎれな曾祖母を悲しんで私の母が、

「 辛いだろうに、出来る事なら代わってあげたい。」

そう言った途端、私の中で優しいとしか印象にない曾祖母がムクリと起き上がって、

「 じゃあ代わってみる?」

私はとても恐ろしくて飛び跳ねるように起きました。
 春先でまだ薄ら寒かったのに身体は汗でびっしょりです。
朝、母がパジャマが変わっていたことを問いましたが、あまりに縁起が悪い話なので言えずにいました。
 2ヵ月後、母は入院しました。
すぐさま夢のことを思い出しましたが、突然のことにそんなことを言っている暇もなく、その夢のことは忘れて、母のいない間は家事に学校にと忙しさに追われていました。

「 何か変な夢とか見た?」

母が退院何日か後に言った言葉です。
一瞬固まって慌てて否定しましたが、多分母も何かを見たんだと思いました。
でも何を見たのか未だに怖くて聞けていません。









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日々の恐怖 2月19日 母

2022-02-19 16:17:54 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 2月19日 母





 中学からの友人に聞いた話です。
彼女の出生時、大量出血などで母親は死亡した。
一度も我が子を抱きしめる事なく逝ったそうだ。
 父親は無口で優しかったが出張の多い人で、彼女は祖母に育てられたらしい。
彼女は昔からものすごく人に気を使い、とても明るい性格だった。
 36で遅くなったが結婚し、出産した。
無事に子供は生まれたものの、その頃から彼女は壊れていった。
どうしても我が子を愛せないらしい。
 ある日心配で見に行くと、泣き叫び汚物臭のする赤子がいた。
彼女はその傍らで、耳を塞いで震えていた。
 私に子供はいなかったが、とにかく赤ちゃんにミルクを飲ませ、オムツを換えてやり、当時出張中だった彼女の旦那に、すぐ戻るように電話を入れた。
急いでも帰りは夜になると言うので、それまでいることにした。
 子供のように泣きじゃくる彼女は、

「 どうやっても可愛いと思えない。」
「 泣かれると殺したくなる。」

と病的な発言だった。
 育児ノイローゼだったんだと思う。
夜には旦那も戻り、育児協力と彼女を診療内科に連れて行く事を約束させ、私はその場を後にした。
 その翌日の仕事帰り、彼女の事が気になって仕方なかった私は、すぐに彼女の家に向かった。
胸をしめつけられながら開けた玄関の中に立っていたのは、晴れやかな顔をした彼女だった。
そして腕には、ぐっすり眠る赤ちゃんがいた。

「 昨日はごめんね~。」

とあっけらかんとした彼女にあっけをとられ、私はその場に座り込んでしまった。
 で、落ち着いたところで話を聞いてみて驚いた。
昨夜泣き疲れて、子は旦那に任せ眠ってしまったらしい。
 そして夜中、少し息苦しく目を覚ますと、若い女の人が涙を浮かべ彼女を抱きしめていたそうだ。
あまりの事に固まっていると、

「 これが母親の愛情よ、覚えおきなさい。」

そして、

「 抱きしめてあげられなくてごめんね。」

と消えてしまったそうだ。
それは写真でしか見た事がない、彼女の母だった。
 それから彼女は居間へ行き、改めて我が子を抱きしめてみると、

「 今まで感じたことのない、愛しさと涙が溢れだした。」

と言っていた。
 愛せなかったのではなく、愛し方を知らなかったのだと思う。
それを、一度も彼女を抱けなかった母が教えにきたのだと思った。
 今では彼女は立派な親バカです。
ただひとつ、母親は自分より一回り以上若かったことが悔しいと笑っていた。









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日々の恐怖 2月13日 地蔵

2022-02-13 19:07:28 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 2月13日 地蔵





 中心市街地から車で十分ほども行けば、県内でも有名な山に行き着くことができる。
さほど高い山ではないが姿が美しく、また山裾は海ギリギリまでせり出した面白い地形だった。
 山の半分をぐるりと取り囲むように道路が走り、そのすぐ隣はもう海だった。
中心市街地へと向かうその道路は片側三車線で交通量もかなりのものだったが、走っていると両側から山と海が迫ってくるようで、少し緊張感があった。
 山裾に沿って、道路はゆるくカーブを描く。そのカーブが一番極まったところ、つまり山が一番海にせり出した箇所に、一体の地蔵が置かれていた。
地蔵は小学校高学年ほどの子供の背丈の大きなものだった。
いつでも花が供えられ、小さく微笑んだような優しい顔をしていた。
 ここは、昔から土砂崩れが頻繁に起こる場所だった。
異様にせり出した山裾は、古くからの土砂崩れでだんだん伸びていったからだといわれている。山は崩れるたびに、近くの集落や畑を飲み込んだ。
この地蔵は、土砂崩れの被害者を慰めるために建立された。
 ところが、いつの頃からかこの地蔵に、不名誉な噂が立つようになった。
地蔵は左手に宝珠を乗せ、右手はこちらに向けた形で地を指している。
遠目に見れば、右手でおいでおいでをしているようにも見える。
その手の形から、地蔵が事故を招いているという噂が立ってしまったのだ。
 よく見れば手の向きからそうでないことは明白なのだが、子供を中心にこの話が広まり、今では心霊スポットの一つとして数えられるようにまでなってしまった。

「 まったく、罰当たりな話ですよぅ。
肝試しだなんてそれだけでも失礼なのに、こんな風にゴミまで散らして帰って・・・。」

老婆はブツブツ言いながら、地蔵の周りに散乱したお菓子の袋や空き缶を拾い集めていた。朝の散歩のついでに地蔵に参るのは昔からだが、最近は特に夏場にはこんな風に、時折ゴミが散らかっているのだという。
 私はそれを手伝いながら、

「 そうですね。」

と頷いた。

「 お地蔵様が来てから、土砂崩れは起きていないんですよね?
霊験あらたかなお地蔵様だ。」
「 まぁ、土砂崩れはなぁ・・・・。」

老婆はどこか含みを持たせるようにいった。

「 地蔵様が来られてから、この道路で事故が増えたのはね、ほんとなんですよぅ。
まぁそれくらいの頃に道路を広くして、その分とばす輩が増えたからなんでしょうけど。
バカみたいにスピード出すから、大体は死亡事故になってねぇ。
それを地蔵様のせいにされて、いい迷惑ですよ、ねぇ・・・・。」

最後の一言を、老婆は地蔵に向けて言った。
地蔵はもちろん答えず、静かな微笑みをたたえたままだった。










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日々の恐怖 2月10日 なくしたもの

2022-02-10 19:52:28 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 2月10日 なくしたもの




 周囲を山に囲まれたその町は、朝霧で有名だった。
気温が下がると、放射冷却によって冷やされた空気が霧となる。
盆地では山から流れ込む冷気が霧を濃くし、さらに空気の循環が少ないため、霧は朝日が完全に昇るまで長く居座ることになる。
 周囲の山から見下ろせば、町が霧にすっぽりと覆われた、幻想的な景色を見ることができる。
町は白いベールに隠されているようでもあり、乳白色の湖に沈んでいるようでもあった。
 この町の中心には、一本の川が流れていた。
夏には蛍の群舞が見られる美しい川だった。
 この川には、不思議な噂があった。
川の周辺では、川霧も手伝ってより濃い霧が漂う。
その霧の中に、いるはずのない蛍が、

” スゥ~ッ・・・。”

と飛ぶのが見えることがあるという。
 朝霧が発生するのは気温が下がってからなので、蛍の成虫が飛び交う季節とは異なっている。
なので、霧の中で見つける蛍は、いわゆる蛍ではない。
 そんな蛍を追いかけていくと、もう亡くなってしまった会いたい人に、会えるのだという。
ある人は、蛍を追いかけた先に、背中を向けて立つ父親を見た。
ある人は、背後に友人の咳払いを聞いた。
ある人は、隣に立ってそっと手を握ってくれる妻の温かさを感じたという。

「 でもね、誰もがはっきりと会えたわけではないんですよ。
実は私もね、霧の中に蛍のような光を見たことはありますよ。
でも、話に聞くように死んだ人に会えるなんてことはなかった。
蛍に見えたのも、きっと朝日の反射かなんかでしょう。
正直、噂というより迷信ですよ、迷信。」

私にそう話してくれた男性を、次の朝霧深い河原で見かけた。
ウロウロと、乳白色の世界を歩き回っていた。
人は誰でも、なくしたものを求めずにはいられないのだろうと思う。








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日々の恐怖 2月7日 前の部屋

2022-02-07 20:49:02 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 2月7日 前の部屋





 彼女は家の玄関に、以前電池式の人感センサーライトを置いていたそうだ。
帰宅が大抵暗くなってからなので、いつも重宝していたという。
 しかし一年程前、電池切れなのか調子が悪かったことがあった。
点いて欲しい時には点かず、ありがちな話だが、何に反応したのか誰も通っていないのに点くこともあったという。
 ちょうどその頃から、知人は不眠気味だった。
眠れないというわけではないのだが、眠りが浅くすぐ起きる。
夜半に起きずとも、寝た気がしない朝を迎えることが多かったという。
 その傾向は段々悪化していき、夢遊病のような症状もではじめた。
ふと目が覚めると、寝ていたベッドから移動しているのだ。
はじめはベッドの隣に立っていた、それが寝室のドアの外、廊下の中ほどと、少しずつ玄関に向かっているようだった。
そしてそんな時はいつも、誰もいない玄関のセンサーライトが煌々と光っていたという。
 病院に行って薬も処方してもらったが、改善は見られなかった。
そしてある夜とうとう、目が覚めた場所は玄関で、しかも土下座のような形でうずくまっていた。
しかしそれは謝罪しているというよりは、まるで三つ指をついて客人を出迎えているようだったという。
 いよいよこれは大変だ、どうしたものかと悩んだが、不思議なことにその日以降、夢遊病はおろか不眠の症状さえピタリと治った。
夜中目覚めることはなく、朝も気持ちの良い目覚めだ。
今まではなんだったのかと思えるほどだった。
 そしてそれと同時に、電池切れだと思っていたのですが玄関のセンサーライトも、不調が全くなくなったのだという。
知人は、それを訝しむことなく純粋に喜んでいた。
 ところが、職場でポロっとその話をした時、一人の同僚から言われた。

「 それって、誰かを外からお迎えしたみたいで気味が悪いわね。
もう出迎える必要はなくなったから、あなたの夢遊病もライトも治ったんじゃないの?」

「 そう言われた途端ね、なんだかものすごい寒気がしたの。
私のなけなしの本能が、全力で同意しているみたいでね。
それで、家の中で何があったわけではないんだけど、すぐに引っ越したのよ。
それが良かったのか悪かったのか、それはわからないけど、なんだかスッキリしたわ。」

 私は大きく頷いた。
話の途中から、知人の同僚と同じことを想像してしまっていたのだ。

「 前の部屋、こないだ通ったらまだカーテンもかかってなくて、入居者はいないみたい。
いずれは誰かが入るんでしょうけど・・・・。」

知人がお迎えしたかもしれない誰かは、まだその部屋にいるのだろうか。










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日々の恐怖 2月4日 昔の友達(3)

2022-02-04 17:40:59 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 2月4日 昔の友達(3)





 自分にも子供がいるように彼にも息子がいて、それが子供時代の彼に瓜二つでも、おかしくはなかった。
少年は突然のことに目を見開いていた。
 やっぱり止した方が良かったか、と知人が後悔して謝ろうとした時、

「 おにいちゃ~ん・・・。」

彼の妹らしき美少女が駆け寄ってきて、知人は言葉を失った。
目の前に並び立つのは、幼い頃の知人の思い出そのままだった。
 瓜二つのというレベルではない。
二人の前に立つ大人姿の自分の方が、場違いに感じるほどだったという。

「 〇〇って言う名前じゃないですけど・・・・・。」

少年はそう言って、右眉をピクリとはね上げ、小さく笑った。

「 向こうでお父さんたち待ってるから、行こう。」

そう言って、少女が兄の袖を引いた。
そして、ちらりと知人の方を見たが、その目は兄とは対照的に、冷たい程なんの感情も浮かんではいなかった。
 去っていく子供達を見つめながら、二人の行く先にはあの美しい両親が待っているのかと、知人はぼんやりそう思ったという。

「 失礼ですが、それはもしかしてあなたの勘違いでは?」

私の無礼な質問に、話し終わった知人は,

「 う~ん・・・・・・・。」

と首をひねった。

「 確かに・・・・・。
僕自身もね、半信半疑なんですよ。
常識的に考えて、あの子達だけ時が止まることなんて、あり得ませんから。
ただ・・・・。」
「 ただ・・・?」
「 あの男の子が、去り際にボソッと僕に言った気がしたんですよ。
いや、空耳じゃないですよ、多分・・・。
もう、後ろ姿だったんですけどね。

” 手紙、ごめんな。”

って。
僕が出していた手紙に返事を書けなかったことだとしたら、辻褄があうんですよね・・・。」

知人は、訝しげにそう言った。









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