日々の恐怖 7月20日 認知症と幻覚(3~8)
(3)
うちの祖母も要介護で幻視のあるタイプの認知症なんだが、
「 廊下を魚が泳いでいる。」
とかいうのは、幻だってわかる。
そういう時は、だいたい母がホウキ持ってきて、
「 はいはい、掃除したからいませんよ~。」
といなしている。
「 仏壇から女の人が出てきた。」
「 布団の回りに人がたくさん立っている。」
というのは、真剣に言われると、
“ まじに視えてるの・・・・?”
と勘ぐってしまう。
(4)
介護施設で働いてるけど認知症の人って幻覚だけじゃなくマジに視えてることもあると思う。
新しく入居したド認知の利用者が、
「 ここに知らない人がいる!」
って騒ぐもんだから特徴聞いたら、前に入居してて亡くなった利用者そのままだったってことがあった。
その人が入居する前に亡くなってるので、当然、面識は無い。
認知症になると、何かロックが外れやすいのかなって考えてます。
(5)
私の母は認知症ではなくて精神疾患だけど、母がある歌のサビを繰り返し歌っていて、でもワンフレーズだけ歌詞が抜けてララララ〜になってしまっていた。
よくあることだから特に何も言わず放置してたら、突然歌うのやめて何もない空中に向かって、
「 あ、はい、わかりました。
ありがとう。」
とお辞儀して、次に歌い出した時にはララララ〜だった部分の歌詞が正確に歌えていて驚いた。
やっぱり、幻じゃない何かが見えていたのかもしれない。
(6)
一時期、認知症の祖母の寝つきが悪い時に自分が寝付くまで付き添ってたんだけれど、
「 あそこの窓から男が覗いてる!」
とか、
「 そこの廊下に女が!」
とか、
「 重なった顔が!」
って言いまくってて、ホント怖かった。
窓には壁と同じような白い紙貼ったり、廊下は猫の為に半端に開けてたけど締めて回ったり、話に乗ってるといつの間にか言わなくなった。
築100年越えの家と新しい家を繋いでる家で、新しい方に祖母が寝てて、何かいるって言う方向が古い家の方ばかりだった。
今そっちに自分の部屋貰って寝てるけど、何か不安がある。
(7)
親戚がアルツハイマーで施設に入所してるんだけど、会いに行くとよく通路の鏡に向かって話している。
映ってる自分に喋ってるのかと思ったら、鏡の中に人がたくさんいるから一緒にご飯食べようって呼んでるんだと言うことだった。
それで、
「 ちょっと、来てみて・・・。」
と言うもんだからついて行って見てみたが、
「 ほら!」
の声に反して、当人以外誰も映ってない鏡だった。
(8)
施設の仕事をしています。
先日、幻覚系の認知のおばあちゃんが、慌てて職員を呼んでいた。
駆けつけた職員に、おばあちゃんは、
「 大変!トイレを流したら小さな人が一緒に流れてしまったの!
下に行って助けてあげて!」
と、困った様子で訴えた。
「 あら、じゃあすぐ下に行って助けてくるから安心してね。」
と、職員さんが答えると、おばあちゃんは安心して、すぐそのことは忘れていた。
そのやり取りは微笑ましくて思わず笑ってしまったが、戻ってきたその職員さんと、
「 案外本当にいるかもねぇ~。」
なんて笑いながら話すのは、よくあることです。
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