大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 8月31日 防犯カメラ(2)

2017-08-31 18:02:00 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月31日 防犯カメラ(2)




 エレベーターで3階に着くと、カメラが廊下を映している場所に向かう。
けれども誰もいない。
 廊下の突き当たりにある非常階段も念の為に扉を開けて確認したが、そこにも人のいる気配はない。

“ エレベーターの到着する音で逃げたのかもしれない。”

そう思って、エレベーターではなく階段を降りて警備室に戻りました。
 それは、非常階段ではなく普通の階段を降りて逃げてたのなら、もしかしたらばったりと会うかもしれないと思ったからです。
 結局、警備室に戻る間に出くわすことはなかったのですが、再びカメラの映像に眼を向けるといるんです、同じ場所に同じ体勢で女性がそこに。
 少しゾッとするものを感じながらも、

“ ああ、自分が警備室に戻ったから彼女も戻ってきたんだな・・・。”

と思い、今度は気付かれないよう、エレベーターではなく階段を昇って3階に向かうことにしました。
 ライトの電源を切って足音を殺して3階まで行き、カメラの場所に近づくと一気に走って、ライトを点けてその場所を照らします。
が、誰もいません。
 位置的にエレベーターの方に逃げたのなら警備員に出くわすので、非常階段の方に逃げたのかと思い、非常階段を先程の様に調べます。
ですが、やはりいません。

“ もしやこの階に自分の部屋があって、部屋に逃げ込んだのかも・・・・。”

とも考えましたが、それならドアの開閉音が聞こえるはずです。

“ そうだ、非常階段に逃げたのなら、非常ドアの開く音がしたはずだ。”

改めてそこに気付くと、冷たい悪寒が背中を走ります。
そして慌てて警備室に戻り通報した、というわけです。










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日々の恐怖 8月29日 防犯カメラ(1)

2017-08-29 19:47:51 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月29日 防犯カメラ(1)




 中学時代からの付き合いで、東京で警察官をやっている友人がいます。
警察の仕事をしていてもやはり不可解な事はあるようで、

「 警察の仕事やってると、そんなものより人間の方が怖くなるわ!」

と言っていた友人が、

「 まあ、それでも変な体験をしたって話は同僚とかから聞くよ。
その内の一つで同僚の先輩が体験した話、聞く?」

と言って、話してくれたものです。

 ある日の深夜、とあるマンションの警備室から、

「 防犯カメラに、血塗れの人が映っている。」

との通報が入ってきました。
 その先輩が対応して、

「 血塗れなら怪我をしているかもしれないから、一応救急車にも連絡した方が良くないですか?」

と言うと、その警備員が、

「 いや、それが、なんて言ったらいいのか、いなくなるんです、そこから・・・。」

と、歯切れが悪い感じで伝えてくる。

「 は?どういうことです?」

と訊ねると、警備員は話し始めた。
 その内容を湯約すると、

“ その事に気付いたのは20分程前で、3階の廊下を映しているカメラの画面にカメラに背を向けて座り込んでいる、どうやら女性らしき人物が映っている。
 髪は黒のロングで白っぽいワンピースという風体だったのだが、その白いワンピースに所々血の滲んだような赤い斑点が見えている。
多少画質が悪いとはいえ、防犯カメラから見て気付くくらいだから相当出血しているに違いない。
 仮に別の可能性、たとえばその女性が誰かを襲って付いた返り血だったにしても、それを確認して、事件ならば通報しなければならない。”

そう思いつつ、警備員は3階に向かったそうです。











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日々の恐怖 8月26日 初めてのバイト(4)

2017-08-26 21:04:17 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月26日 初めてのバイト(4)




 上司の話を聞きながら、不思議な心地がしたのを覚えている。

“ じゃあ、あのおじいさんは死人のお客様だったのか・・・。
ありがとうって言われたし、満足してもらえたのならいいなぁ・・・・。”

それからも毎日のように上司や調理場に怒鳴られながら、私は仕事を続けた。
 二ヶ月に一度、夏場には週1ぐらいの頻度で、様々な死人のお客様が訪れた。
葬式帰りらしい団体がやってきて、隅の席に座っているお客様にビールを持っていくと、実はその人が死んでいた、ということもあった。
 その家族は昔、うちの店の常連で、私が注文されたビールはその死んだ人の好きだった種類のビールだったそうだ。
団体は涙をこぼしながら笑い、上司の計らいでそのビールはサービスにした。
 働き始めて1年が経った頃、その上司が別の店に異動することになった。
バイト初期には失敗ばかりしていた私に、

「 俺が現役だったら辞めさせてたぞ。」

とまで言った上司だったが、私は彼をプロとして尊敬し続け、彼も私を孫のように可愛がってくれるまでになっていた。
 上司は鼻水を垂らす私の頭をポンポン叩き、目線を合わせながら言った。

「 ○○さんが来てから、リピーターのお客様が増えたよ。
まあ、中には幽霊のお客様もいたけどな。
○○さんの一生懸命で丁寧な接客に、きっと皆が満足してくれた。
俺が教えたことを、忘れちゃあ駄目だぞ。
今、お前はこの店の看板なんだからな。」

そうして彼は店を去った。
私は彼に叩きこまれた接客術と話術で、沢山のお客様を喜ばせ笑顔にした。
 専門学校を卒業すると同時に、ビアホールのアルバイトは辞めた。
死人のお客様以外にも、不思議なことの縁に恵まれた場所だった。
今もそこで働いている人々とは繋がっており、最近も誘われて飲みに行った。













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日々の恐怖 8月24日 初めてのバイト(3)

2017-08-24 18:48:31 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月24日 初めてのバイト(3)




 そうこうしているうちに閉店の時間になった。
広い店内に蛍の光が流れ、千鳥足のお客様が仲間に支えられ帰って行く。

“ きっと私の接客が悪かったんだ・・・。”

としょんぼり片付けをしていると、一緒に働いていた先輩がおずおずと話しかけてきた。

「 ねえ、○○さん、3卓に誰を案内してたの?」
「 えっ? おじいちゃんですよ、杖をついた。
先輩も見ていたじゃないですか。」

先輩は気味の悪いものを見るような顔で私を見下ろした。

「 俺には、○○さんが宙を支えるようにゆっくり3卓へ向かって、なにかを壁に立てかけて、コップとメニュー持ってって、笑顔で頭を下げたようにしか見えなかった。」
「 そんなはずありませんって、そんな、あの人が幽霊だっていうんですか。
足ありましたよ!透けてなかったし、服だって・・・。」

私は口を開けたまま固まった。

“ そうだ、服だ!”

 あのおじいさんはこのくそ暑い熱帯夜なのに、長袖長ズボンだった。
本当の違和感はここだったのだ。
 私と先輩が3卓を見つめて黙っていると、上司がやってきた。
先輩は、私が“誰か”をこの席に案内したのだと上司に話した。
 上司は一言、

「 そうか・・・・。」

と言った。
 そして、

「 この店は80年以上も昔からある店で、昔から地域に愛されてきたんだ。
毎週来る常連だっている。
ときには、もう死んじまった人も来る。
賑やかで、懐かしいんだろうな。
 俺も若い頃、一度だけそういう人を接客したことがあった。
でも、当時の俺は、まあ、不心得者だったんだよ。
 その人は俺に接客の悪さをきつく叱ると、その場で消えてしまったんだ。
驚いたよ。
それから後悔もした。
 死んだ人だって、来店したならそれはお客様だ。
俺は、今までどんな酷い接客をしてきたのか思い返して、恥ずかしくなった。
その日から、心を入れ替えて仕事に励んだよ。」

と続けた。











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日々の恐怖 8月22日 初めてのバイト(2)

2017-08-22 19:12:02 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月22日 初めてのバイト(2)




 慣れない接客と上司からの叱責に、涙も枯れ果てたある日のことだった。
杖をついた一人のみすぼらしいおじいさんが来店した。
 上司は他の客の対応で忙しく、私はしどろもどろになりながらおじいさんに接客した。
このお客様に満足していただきたい、その思いでいっぱいだった。
 おじいさんは私をちらっと見上げると、ただ一言、

「 水。」

と言った。

“ このおじいさん、暑いなか歩いてきて喉がカラカラなんだ。”

私はすぐに水を用意し運んだ。
 しかし、おじいさんの様子がどこか引っかかっていた。

“ なんだろう、なんだろう・・・・?”

と思いながら水を手渡すと、おじいさんはぐっぐっぐっとタンブラーをあおぎ、

「 ありがとう、お嬢さん。」

と言って笑ってくれた。
 私は嬉しくて、頭を下げその席を離れた。
注文がくるだろうとそのおじいさんに注意しながら、他の客席に接客する。
 が、ほんの少し目を放した隙におじいさんの姿が消えていた。
壁に立てかけていた杖もなくなっている。
 お手洗いにでも行ったのだろうかと考えていると、上司の声がインカムから流れてきた。

「 おーい、お前3卓に水とメニュー置きっぱなしだぞ、片付けなきゃ駄目だろう!」

あっと思った。
 私たちの店では客が来店すると、レジ係がインカムで店内中のスタッフに伝えるのだが、さっきのお客様が来店した時、レジは団体客で混んでいた。
だから、おじいさんに気づかなかったレジ係からインカムがなかったのだ。

“ 違和感の正体はこれだったのか・・・・。”

上司にそれを伝えて暫くしたが、おじいさんはいっこうに戻ってこなかった。

“ まさかお手洗いで倒れているのでは・・・・?”

と心配になり様子を伺ったが、お手洗いは空だった。
とすれば、出ていってしまったのだろうか。













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日々の恐怖 8月21日 初めてのバイト(1)

2017-08-21 21:38:57 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月21日 初めてのバイト(1)




 当時私は専門学校に入学したばかりで、生活費を稼ぐために人生初のアルバイトを始めた。
ところが、人生初で就業経験もなく、おまけにとても背の低すぎた私は、色々なところの面接を落とされまくっていた。
これがアルバイト面接の洗礼か…としょんぼりしたのを覚えている。
 そうしているうちに、やっと雇ってもらえた店があり、私は舞い上がって喜んだ。
そこは巨大なビアホールだった。
雇っているバイトの数だけでも140人を超える大きな店で、小学校の体育館よりも大きかった。
 また、歴史もあり、80年以上営業し続けてきただけあって古くからの常連が多く訪れた。
稼ぎどきの夏場には、小さな滝のある涼しい前庭に沢山のテーブルと椅子を並べ、ビアガーデンとして開店した。
 店は内外問わず多くの人で賑わった。
隣の席の人が誕生日会なら、周りの席の人々も手拍子で祝ってあげたり、店の一角から大合唱が聞こえてきたり、陽気な雰囲気がたちこめる居心地のよい場所だった。
 ここまで書くと、ちょっとイイ店に思えるかもしれない、客側にとっては。
店員としてみれば地獄のような忙しさだった。
私と同期で入った人間は3日と経たないうちに全員辞めた。
 私は人生初のアルバイトであったし、実家は農家で肉体労働には慣れていたので、こんなものかと思っていた。
毎日上司に怒鳴られながらも、慣れない接客術を磨いていった。











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日々の恐怖 8月20日 寺掃除

2017-08-20 19:09:48 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月20日 寺掃除




 数年前お寺で働いてた時に経験した話です。
当時俺は就職浪人と言う名のニートで、バイトもせずほぼ引きこもりに近い生活をしてたんだけど、祖母が亡くなってお世話になった住職に近況を聞かれて、素直に働いてない事を話したら、お寺の掃除とか簡単な仕事をさせてもらえる事になった。
 事件があった日は、一人で留守番しながら本堂の掃除をしてたんだけど、ちょうど廊下の曲がり角の所から、知らない爺さんがこっちを覗いてる感じがした。
 たまにお参りに来る人はいたけどその爺さんは妙だった。
ただひたすら俺の方を見てる視線を感じるんだけど、こっちからは焦点が合わないと言うか、そこに居るのも知らない顔の爺さんとも認識出来るのにそこには誰もいない。
 まあ廊下から覗いてるだけだったから、とりあえず気のせいって事にして掃除に戻ったんだけど、今度は本堂の中を爺さんが覗きこんで来た。
障子は開けっ放しなのに入っては来ず、ひたすら体を隠すようにして顔だけ覗いてる。
 おまけにこの時期は窓を開けてても結構暑いはずの室内で、冷房もかけず動いてるのにどんどん体が冷えてく。
流石にヤバい奴なんじゃとか住職に電話するかとか考え始めたら、隣のアパートに住んでてあんまりお寺の方には来ない老僧(先代住職、当時80歳)が突然現れた。

「 特に用事はなかったけど何か来てみたら、玄関で呼んだのに誰も返事しないから様子を見に来た。」

と言った後、仏様に挨拶して帰ってったんだけど、気がついたら例の爺さんは居なくなってたし、いつもの暑さに戻ってた。
 それから住職が帰ってきた時にこの事を話したら、

「 そういう事があったらひたすら無視、体を叩いてシッシッとか、あんたの相手はしないよって言ってやりなさい。」

って教えてもらった。
 あとそう言うのは絶対に部屋の中には入って来ないから、出来るだけどっかの部屋に居るようにってのと、廊下で子供が遊んでる事もあるからとか、笑顔で言われてちょっと怖かった。
 ちなみにこの子供は廊下じゃなくて、駐車場に続く外階段の方で遊んでる声を聞いたかもしれない。(やっぱり中には入って来なかった。)
老僧にはお盆法要の時に何で急に来たのか聞いてみたけど、ただ本当に気まぐれだったらしい。











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日々の恐怖 8月16日 プール

2017-08-16 19:39:04 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月16日 プール




 数年前、市営プールで監視員のバイトをしたときの体験です。
そのプールでは50分に1回、利用者全員を上がらせて10分休憩を入れる。
そして底に誰か沈んでいないか、落ちていないかなどを上から確認するんだが、その時、僕はハッキリ、プールの中央に男の子が俯せに沈んでいるのを見た。
 黒い水泳パンツと水泳帽で、小学校3,4年という感じだった。
潜水中で上がれのホイッスルが聞こえないのかなとも思ったが、その子はゆらゆらと水影に揺れるだけで、いつまでも動かない。
 ヤバイ!と助けに飛び込んだんだが、いくら探しても、プールの底には誰もいなかった。
変だなあ、天井のライトが水に映ったのを見間違えたのかなと、首をひねりながらプールから上がったら、プールサイドで気まずそうな顔をして僕を見ている先輩と目が合った。
 あとで聞いたら、そのプールでは底に沈んでる子供を目撃して、誰もいないプールに飛び込む新人監視員がたまに出るらしい。
でも、不思議なことに、そこでは過去1度も死亡事故は起きていないということだった。
 僕が少年を見たのは1度きりだったが、何となく気味が悪いので今年は監視員バイトに応募しなかった。
少年を目撃したあと、雨でもないのにアパートの玄関前が濡れていたり、生まれて初めて原因不明のジンマシンが出たりと変なことが続いたし、その市営スポーツセンターは何となく嫌な感じがして利用しなくなっている。













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しづめばこ 8月14日 P502

2017-08-14 19:07:56 | C,しづめばこ



 しづめばこ 8月14日 P502  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 8月12日 怖い話が大好き(6)

2017-08-12 18:59:49 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月12日 怖い話が大好き(6)




 車系霊現象の定番“手形”だ。
左側の後部座席のドアを見てみる、が何もない。
埃だらけのままで、何かが触れたり擦れたりした跡もない。
 一応全体をよく見たが何もない。
無いならいい、無くていいんだ。
 あの子供は見間違いで、信号は誤作動だった。
これで一件落着だ。
 そこで、昨日車に置きっぱなしにした荷物を取ろうと、左側の後部座席のドアを開けた。

“ コロン。”

と、何かが落ちた。
 地面に落ちたそれをよく見てみる。
水色の丸くて平べったい大きめのボタンだ。
 絶対にオレの服のものじゃない。
昨日は友達も乗せてない。
オレの車は友達の家に置いて、友達の車で遊んだからだ。
 どうしても昨日見た子供と関係あるものと考えてしまう。
子供服や園児服のボタンに、どうしても見えてしまう。
 もう素手では触れない。
車からティッシュを3枚取りボタンの上に乗せて、そのままつまみ上げぐしゃりと包んだ。
 今度はコレをどうするかだ。
その辺に捨てたら何か悪い事が起こりそうな気がする。

“ もうこうなったらしょうがない・・・・。”

まだ明るい今ならばと、オレは昨日の交差点へと向かった。
 現場に着き、車から降りて少し周りを見て回った。

“ もしかしたら、花束でも供えているんじゃないか・・・?”

と思ったが、何もなかった。
 オレは昨日子供の背中が見えた辺りにいき、ボタンをティッシュから取り出して林に放り投げた。

“ 返したからな、頼んだぞ!”

と心の中で言い、途中で買ったコーラをドボドボと道路の脇に流した。
 傍から見ればゴミと飲み物を捨てただけの、けしからん野朗だが、俺なりの供養のつもりだった。
 帰り道、

“ 子供に言い聞かせるには、言葉が少し足りなかったかな・・・。
ちゃんと伝わったかな・・・・?”

と少し不安になったが、その後何もないので大丈夫だったのだろう。
友達とは今でも遊んでいるが、その道は使わず遠回りして帰っている。














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日々の恐怖 8月9日 怖い話が大好き(5)

2017-08-09 19:49:23 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月9日 怖い話が大好き(5)




 その場を離れてもまだ怖い。

“ 実は乗ってました!”

なんて話もよくあるからだ。
 10分ほど走ったところのコンビニに車を止めて、ようやく人心地がついた。
店内へ入り読みたくもない雑誌を取り、立ち読みする振りをして自分の車をちらちら観察する。

『 ふざけやがって!
用があるなら、出てきてみろってんだ!』

 居もしない相手に心で話しかける。
明るい店内にいるので強気だ。
 5分ほどそうしていたが、やはり異常はない。
さすがに落ち着いてきた。
 喉が渇いたので、コーラでも買おうと手を伸ばしたがやめた。

“ だめだ、コーラなんて子供の大好物じゃないか!
コーラに惹かれてついてくるかもしれない!”

そこで子供の嫌いなブラックの缶コーヒーを2本買った。
 ばかばかしいと思うでしょう。
オレも思う。
ただその時は必死だった。
 店を出て、一本を一気に飲み干しゴミ箱へ捨てる。
気合を入れ直して車へ乗り、もう一本をあけた。

『 さあ、ブラックコーヒーも飲めないお子様はお帰りください。』

と心で言い放ち、家へと車を走らせた。
 その後、道中何もなく無事家までたどり着き、今日は眠れんぞと思いながら、ビール飲みつつネットしてるうちに、いつの間にか眠っていた。
 翌日、一つだけ確認しなければならないことがあった。












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日々の恐怖 8月8日 怖い話が大好き(4)

2017-08-08 18:58:51 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月8日 怖い話が大好き(4)




 もう信号は青になってる。

“ ここから離れないと・・・。”

と思うのだが、その前に別の可能性に気付く。

“ 霊じゃなくて本当の子供だったら?”

 突然現れたあれに気が動転して霊的なものと思っていたが、そもそもオレには霊感はない。
オレに見えたとしたら生きてる普通の子供かも知れない。
 あるじゃないか、深夜、山道で子供が出てきてオバケかと逃げたら殺人犯から逃げてたって話。
さすがに殺人事件はないだろうが、家から抜け出したとか、特に障害のある子なんかだと何するか判らない。
 何処で見聞きした知識か憶えてないが、そういう子供は危機感があまりないとか。
何が危険かがよく判らないので思いも寄らぬ行動をするとか、間違っていたらすまない。
とにかく、車の前や下に入り込んでたりしないとも限らない。
 降りて確認すればいいだけだが、やはり怖い。
まだ霊の可能性もあるのだから。
 しかし現実的に考えて、車を降りて霊に出くわすのと、降りずに発進して事故を起こすのでは、どう考えても避けなければならないのは後者だ。

“ どうせ見間違いだろ・・・。”

と自分に言い聞かせて、ベルトを外してドアを開ける。

“ 開かない!?”

心臓がキュッと縮んだ気がした。
 ドアが開かない、もう一度ノブを引いたが開かない。
そしてすぐに気付く、さっきドアをロックしたことに、アホかオレは。
 外に出て上下前後左右を確認したがやっぱり何もない。
一応交差点の左右の道路も見てみたが何もない。生きてる普通の子供ではなさそうだ。

“ じゃあやっぱりさっきのは・・・。
もういいや、さっさといこう。”

 車に戻ろうと歩き出した時、突然景色の色が変わった。
慌てて振り返ると信号が黄色に変わっている。

“ うそだろ!”

もう一度左右の道路を見てみたが車なんて何処にもいない。
だが一つ、ある物を見つけてしまった。

“ くそ!押しボタンもあったのか!”

 信号柱の下に小さなランプが点いている。
歩行者用の押しボタンだ。
さっきみた子供の姿と何かが噛みあった気がして急いで車に戻り、信号を無視して逃げ出した。













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日々の恐怖 8月6日 怖い話が大好き(3)

2017-08-06 19:25:45 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月6日 怖い話が大好き(3)




 さっきまではゴミ袋かなんかが引っかかってるだけかも、と思っていた。
こんな時はお経を唱えるといい、という話はよくある。
 しかしその時のオレは、

「 もう勘弁してくれ、頼むから勘弁してくれ、ホントマジで勘弁してくれ。」

と、バージョン違いの勘弁してくれを繰り返すしか出来なかった。
 その祈りが通じたわけでもないだろうが、その後何も起こらない。
よくある話なら、バンバンと車を叩く音がしたり、

『 ボクヲヒイタノハオマエダロ?』

なんて声が聞こえたりするところだが、何も起こらない。
 どれくらい経ったか、30秒?40秒?何も起こらないので少し冷静になれた。

“ このままではいられない、どうにかしないと・・・・。
だが、何をするにもまずは目を開けないと・・・・。”

そうなると目を閉じた事に後悔する。
 今まで読んだ車系怖い話のいろんなパターンが浮かんでくる。
目を開けたとき足にしがみついてたり、フロントガラスにへばりついてたり、助手席にすわってたり・・・ 。
どれも最悪の展開だ。
目を開ける勇気がでない。
 その時ふと頭に浮かんだもう一つの最悪。
エンジンが切れる。
一度切れたら最後、オレが行方不明になって話が終わる。

“ 冗談じゃない、今のうちになんとかしないと・・!”

とりあえず足をバタバタ動かして、何にも捕まれてないことを確認する。

“ 大丈夫だ。”

 少し深呼吸し、大きく息を吸い込んだところで、

「 コノヤロー!」

と気合を入れて目を開けた。

“ 足元には何もない。
前、助手席、何もない。
そして助手席側のミラー・・・、何もない!?

あちこち見回してみたが何もいない。

“ 消えた?見間違い?”

オレは吸い込んだ息を一気に吐き出した。











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日々の恐怖 8月5日 怖い話が大好き(2)

2017-08-05 17:56:32 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 8月5日 怖い話が大好き(2)




 その日もいつものように友達と遊んだ帰り、その信号に差し掛かると案の定黄色に変わった。

“ またか・・・・。”

と車を止めると一瞬車が軽く揺れた。

“ 突風でも吹いたかな?”

と思ったが木々も揺れず音もしない。

“ なんだったんだ?”

と周囲を見回し、ミラーを確認する。
 運転席側は何もない。
そして左の助手席側を見たとき、ハンマーで心臓を殴られたみたいなドカンという鼓動とともに全身が硬直した。
 なんかいた。
ミラーになにか映ってる。
もう心臓バクバクでパニックになりそうだったが、とにかくそれが何か確認しようとよく見てみた。
 信号の明かりで照らされたそれは、小さな子供の背中のように見えた。
こっちに背中を向けて肩を後部座席のドアにくっつけて寄りかかり、しゃがんでいるように見える。
しかし頭が見えない。

“ 首なし・・・?”

いや、わずかに見えている。

“ うなだれているだけか・・・?”

ミラーから目を離さずに、オレはドアロックのスイッチを手探りで探して押した。
 それは、あれがドアを開けて入ってくるかも、と思ったからだ。

“ ガコン!”

という思ったよりもドアロックの大きな音がして、

“ ヤバイ!”

と思ったのと同時に、子供のうなだれていた頭が起き上がった。
 起き上がった頭がゆっくりと、音のした助手席のドアの方に向き始めた。。
ハッキリと見えた。
横顔の輪郭。
鼻があって口がある。
明らかに人の顔だ。
 オレは思わず目を閉じ、下を向き両手で顔を覆った。

“ くそ!完全に人じゃねえか!”

と心で叫ぶ。












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しづめばこ 8月3日 P501

2017-08-03 18:16:28 | C,しづめばこ



 しづめばこ 8月3日 P501  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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