大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 7月30日 異国の悪魔(1)

2023-07-30 11:33:49 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 7月30日 異国の悪魔(1)






 十数年くらい前、俺の親父がインドネシアに出張した時の話。
親父は語学堪能な人だから、現地のガイド、中国支社の人、日本の同僚の三者通訳みたいな感じで行っていた。
 郊外の工場行った帰り、夜になってきた頃にスコールにあって、街灯もガードレールもなく舗装もされてない山路を車で走ってたらしい。
二台に分乗してて、親父は後続の方に乗っていた。
すると前の車がスリップ、親父の乗ってた車もそれ避けようとして横転した。
 前の車は山肌を回転しながらズルズル落ちて、みんな骨折してたり手足ザックリ切ってたり、死人はいないけどかなり酷い状態だった。
後続の方もガラスはめちゃくちゃで、負傷っぷりはおんなじ感じの中、親父だけが奇跡的に右手の側面を削っただけで済んで、血もそんなに出てなかった。
 ガイドが言うには歩いて二十分くらいのところに集落があるらしく、親父は仕方なく一人で集落へ向かった。
一本道だから迷いはしなかった。
それで、とりあえず集落の人に事情を話して金を握らせて車出して貰い、怪我人を運んで来てもらう事に成功した。
 親父はその間、集落にもしかしたら医者がいるかもと探してたが、シャーマンみたいなのしかいなかった。
シャーマンって結構気難しい人が多くて、この集落にいる奴も最初は外国人は帰れって感じだったようだ。
でもシャーマン、なんとなく親父の何かが気になったらしく、親父の持ち物を全部見せれば他の怪我人をそれなりに治療してやるし、
朝一で街の病院へ連れてってやる、って言い出した。










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日々の恐怖 7月24日 空き地

2023-07-24 16:02:35 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 7月24日 空き地






 俺のうちは親父が地元企業に勤めていたから、生まれてから一度も引っ越しをしたことがなく、生まれた時から高校を卒業するまで18年間、同じ所に住んでいた。
(大学は東京の私大だったのでそれ以降一人暮らし)
 家と同じ並びで4軒ほど離れた家に、おじいさんが一人暮らしをしていた。
俺が地元を離れる時もぴんぴんしてたから、実際はそれほど年じゃない初老の人で、子ども目線だから年寄りに見えたのかも知れない。
 近所づきあいはあまりしない人だけど偏屈ということもなくて、普通だった。
おじいさんの家は敷地の奥まった所に建ってて、前は小さな空き地みたいになっていた。
駐車スペースみたいな感じだが、車はなかった。
あとコンクリートやアスファルトで固めてもないから、夏は雑草が伸びて、たまにおじいさんが草刈りしてた。
 親からは、

「 ご近所の人には挨拶しろ!」

と言われてて、おじいさんも挨拶すれば返してくれた。
 でも一つだけ普通じゃないことがあった。
1ヶ月に数回の割合で、家の窓や、あるいは家の前に立って、誰もいないその空き地に向かって、

「 出て行け!」

とか、

「 出て行きなさい!」

と怒鳴っていることがあった。
しかもその時は一回じゃなく何度も怒鳴るし、普段はマトモで、たまに変になる人かと思っていた。
 小学校の高学年にはなってたある日、学校帰りに角を曲がって、あとは家まで一直線という時、その、

「 出て行け!」

と怒鳴ってるのに出くわした。
 その家の前を通って4軒目が俺の家。
出くわしたことは前にもあったし、

” またか、やだな・・・・。”

と思いつつ通り過ぎようとした。
 そしたら何故かその時だけ、あの空きスペースにたくさん人がいた。
大人じゃなくて、その時の俺くらいの子どもばかり。
男の子も女の子もいた。
みんな道路に背を向けて、おじいさんのほうを見て微動だにしなかった。
 残念なことに、俺はその場を離れず見ていたらしいのに、子ども達がどうしたかは何故か記憶がない。
覚えているのは、おじいさんが、

「 見えたんだろう、すまんな。」

と言ったことだ。
その時は、もう子どもたちはどこへ行ったのかいなくなっていた。
 その時の会話はこんな感じ。

「 あの子たちはなんですか?」
「 わからない。
俺も見えるだけでどうにも出来ない。
ただ、ああやって強気で怒鳴りつけないと、家の中にも入ってくる。」

そう言われた時、ちょっとぞわっとした。
子どもたちは別に半透明とかぼんやりではなく、その場に存在しているようにしか見えなかった。
 家に帰って話したら、お袋も知ってたし、仕事から帰ってきた親父も至って普通に、

「 見ちゃったか。
気にすんな。
この辺に住んでる人は、みんな見てるから。
なんかの加減で見えたり、見えなかったりするんだけどな~。」

と言ったんでびっくりした。
だからおじいさんの奇行にも見える怒鳴り声を、誰もおかしいと言わず普通に接してたんだ。
でもうちの近所も、もっと広い範囲の地域でも、いっぱい子どもが死んだ事件とかはまったく聞いたことはないし、誰もそんなことがあったと知ってる人もいない。
 思い出すと、長髪で天パの子とか確かいたような気がして、当時も子ども達と普通に思って、それ以外の違和感はなかったように思う。
俺の出身地は工業都市で港や鉄工所、造船会社もあるし、戦時中は空襲の激しい地域だったのは間違いないけど、服装も古くさくはなかったと思う。













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日々の恐怖 7月17日 左手(5)

2023-07-17 10:33:27 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 7月17日 左手(5)






「 それ以来さ、寝る時はずっと左手吊ってんのよ。
もう30年だぜ。」

Kさんは力なく笑うとリストバンドを捲って左手首を見せてくれた。

「 だからさ、手首が擦れすぎてこんななっちゃった。」

同じ場所で擦り傷を何度も繰り返すと、こんななんとも言えない跡になるのか。

「 左手ちょっと長いのもそのせいですか?」

と、ぶっちゃけついでに聞いてみた。

「 多分そうだと思う。
こうなると右手と両足も吊しとけば良かったなって今は思うよ。」

そう言うとKさんは普段のようにからっと笑った。

「 お祓いとかは行ったんですか?」
「 行った行った。
何回もお祓いしてもらった。
あの祠にも行って何回も謝ったけどダメ。
許してくんない。」
「 投げた石は?」
「 探したけど結局分かんない。
まあただの石だからね。
あの時投げなきゃって、今でも後悔してるよ。」

今、この場で自分が思いつく程度の対策なんて全部やってるに決まってるのに、俺は浅はかな質問を重ねたことを申し訳なく思いつつ、

「 なんかスイマセン。
何の役にも立たないのに話だけさせちゃって・・・。」

と詫びた。

「 いいのいいの。
別に隠してる話でもないし、俺がしっかりしてたら左手も悪さしないからね。」

初めて聞いた俺には超怖い話だけど、Kさんの中ではこの怪奇現象と折り合いが付いてるのだろう。

「 まあでも、たぶん俺が死ぬ時は左手に殺されるんだと思うよ。」

そう言ってKさんはこの話を終わらせた。
 それからほどなくして俺は転職し、Kさんとの付き合いも途絶えた。
もう10年も前の話だ。
Kさんが生きてるとしたら今は還暦手前くらい。
きっと今でも寝る時は左手を吊っているのだろう。











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日々の恐怖 7月10日 左手(4)

2023-07-10 11:46:01 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 7月10日 左手(4)






 異変が起きたのは彼女が亡くなって7日目の夜だった。
ベッドで寝ていたKさんは、激しい息苦しさで目を覚ました。

「 ハッ、ハッ、ハッ・・・・。」

呼吸を整えながら周囲を見るが、おかしな所は何もない。
再び横になって眠りにつくが、また息苦しさで目を覚ます。
まるで誰かに首を絞められているようだった。
 たまらなくなったKさんはもう眠るのはやめようと思い、顔を洗おうと洗面所に行き鏡を見てギョッとした。
首に手で絞めた赤い跡がくっきりと残っている。

「 なんだよ、これ・・・・。」

そこで初めて心霊現象が頭を過ったKさんは、部屋に戻ると電気をつけたまま布団をかぶってガタガタと震えた。
が、それでも睡魔がやって来る。
ウトウトするKさんを再び息苦しさが襲う。
 布団を跳ね上げたKさんは、そこで初めて自分の首を絞める物の正体を見た。
それは左手だった。
眠りにつくと左手が勝手にKさんの首を絞めに来る。
困り果てたKさんはベットの横にあるラックに紐をかけ、左手を吊った状態で寝た。












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日々の恐怖 7月4日 左手(3)

2023-07-04 22:09:19 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 7月4日 左手(3)





 彼女は祠に手をつっこむと無造作に石を掴み、

「 ねえ、せっかくだから、おみやげにこれ持って帰ろうか?」

と、Kさんに差し出した。
Kさんは彼女から石を受け取ると、

「 やめとけよ、バカらしい。」

と言いながら、元に戻せば良かったのに、石を林の奥に放り投げてしまった。
肝試しはこれで終わったが、その翌日に大事件が起こった。


 電車通学だったKさんは、いつものように駅で彼女と待ち合わせ、2人で電車が来るのを待っていた。
ホームでの彼女はかなり様子が変だったらしい。
酔っ払ったようにふらふらしてて、今にも倒れそう。

「 おい危ないぞ。
体調悪いのか?」

心配するKさんの問いかけに彼女は、

「 大丈夫、大丈夫。」

と言うだけで相変わらずふらふらしている。
そのまま彼女は身体を揺らしながら、線路に落ちそうになった。

「 危ない!!」

Kさんは左手で彼女の腕を掴み、転落を阻止する。
が、なぜか左手がKさんの意思に反して、一旦掴んだ彼女の腕を放してしまった。
彼女はそのまま倒れ込み、上半身がホームからはみ出たところを入線してきた電車にはねられた。
突然の出来事にKさんはへたり込み、泣きながら彼女の名前を呼び続けていた。
不幸中の幸いか、周囲にいた人達がKさんは彼女を助けようとしていたと証言してくれたおかげで、事件は不幸な事故として処理された。
しかし、Kさんは強い自責の念に苛まれた。












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