龍平はベッドからサッサと降りて扉に向かった。
俺は体を思うように動かせず、ベッドでモタモタしていた。
「 遅い!」
扉を半分開けて俺を待っていた龍平が、痺れを切らして様子を見に通路に出て行った。
俺は痛みをこらえながら、大急ぎで車椅子に乗った。
そして、龍平が開けた扉の隙間から、必死で通路に出ようとした。
でも、車椅子がゆっくり閉まって来た扉に引っ掛かって前に進めない。
“ ガタッ、ガタッ。”
右手で車輪を動かして、前後に行ったり来たりする。
「 くそ~っ!」
通路から龍平の声がした。
「 何してんにゃ、もう、はよせェ~!」
「 車椅子、引っ掛かった!」
「 もう、手間の掛かるやっちゃなァ!」
龍平が戻って来て、引っ掛かっていた扉を大きく開いた。
そして、素早く扉の隙間から車椅子の後ろに回り、車椅子を病室から押し出した。
「 よし!出たぞ!!」
車椅子ごと押し出された俺は、通路をキョロキョロ見たが人影は無い。
非常灯が暗く点いている通路が左右に伸びている。
「 いないぞ!
どっちに行けばいい?」
「 エレベーターや。」
「 エレベーター?」
「 そうや。」
「 上、下?」
「 上や。
エレベーターで、上に行ったんや。
俺が通路に出たとき、姿はもう見えへんかったけど、エレベーターの数字が
上に上がって行くのが見えたんや。
だから、エレベーターや。
エレベーターに行くで!」
「 分かった!」
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