俺は速攻で、両親に手術はダメと念を押しておいた方が良さそうだと思った。
俺が疑念の眼で見ていると、タヌキは突然左手で右の腕を掻き始めた。
“ ポリポリポリポリ。”
俺は右の腕を見た。
“ 蚤でもいるのかな?”
特に蚤が隠れるほど毛むくじゃらではない。
タヌキは俺が右手を見ているのを見て、ニコッと笑って言った。
「 この右手が神の手です。」
「 え、神の手?」
「 そうです、神の手です。」
「 孫の手だったら知ってますけど。」
「 いや、孫の手じゃなくて神の手。」
「 はあ・・・。」
「 ゴッドハンドですよ、ゴッドハンド。」
「 ゴッドハンドって、何ですか?」
「 ホラ、手術の神様ですよ。
この右手が奇跡を呼ぶのですよ。
奇跡を呼ぶから神の手です。
スゴイ技術を持ってるとかのとき言うでしょう。」
「 はあ・・・。」
「 私は手術の神様ですから、安心して手術を受けられますよ。」
「 いや、ヤッパ、手術はちょっと・・・・。」
「 う~ん、そうですかァ・・・・。」
突然、タヌキは両肩をグルグル回してから右手に拳を作り、人差し指を一本立てて天井を指差した。
“ 何かのまじないか?”
俺は思わず天井を見た。
特に天井に神様はいない。
そして、タヌキの右手は俺の方にゆっくりと下げられ、人差し指が俺の顔の正面で止まった。
タヌキは確信を持って俺に言った。
「 君は最高の医者に巡り合ったのだ!」
俺はタヌキの人差し指を右に避けながら斜めにタヌキの顔を見た。
タヌキは自信満々の顔を右に向け、人差し指をベッドに向けて言った。
「 じゃ、一応、鎖骨固定帯で肩の形を整えて固定しますからね。
それから、三角巾でも腕を固定しますから安静にしていて下さい。
ジタバタすると、ポッキリ折れちゃいますからね。
ポッキリ折れたら、確実、手術するんだけどなァ・・・。
まあ、左足は打撲だけですから、湿布をしておけば治ります。
それから、痛み止めも出して置きましょう。
じゃ、処置をしますからこっちに来て下さい。」
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