大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道263

2009-10-27 22:10:33 | E,霧の狐道
 面会の終わった山本爺の小物入れの上には、大きな果物カゴが置いてあった。
俺は素直に、それがスゴイナァと思って言った。

「 う~ん、果物、いっぱいだ!!」

 山本爺はチラッと俺を見ると、布団から片足を下ろして体を支え、左手を伸ばして、果物カゴからリンゴを一つ取り出した。

“ あ、俺にくれるのかな・・・。
 そりゃ、当然だよな。
 この前、リンゴあげたもんな。
 あらっ!?”

甘かった。
 山本爺は取り出したリンゴ一つを持ったまま片足をベッドに戻し、再びゴソゴソと布団に入っていった。
そして、枕で上半身を支え、布団を頭から被ってリンゴを齧り始めた。

「 シャリシャリシャリ。」

斜めに盛り上がった布団の頂上辺りからリンゴを齧る音が聞こえて来る。

“ やっぱ、くれないな・・・。
 そうだよな、くれるわけ無いよな。”

俺は山本爺と大学生風の面会人との会話を思い出して考えた。

“ 山本爺って、大学の先生、かな?
 なんとか関数とか言ってたから、数学か・・・?
 あの訳の分からない性格は、数学者だったら、それで普通かも・・・。”

相変わらずシャリシャリと言う音が続いている。
 山本爺を眺めていても仕方ないので、俺はベッドまで戻った。
そして、ベッドの枕元にある小物入れの引出しを開けた。
由紀ちゃんのお守りを仕舞うためだ。

“ お守り、キチンと仕舞っておこう!
 これ、何処かで落としたりしたら大変だ。
 これがあるおかげで、昨日は無事だったんだから・・・・。”

俺は大事なお守りをベッドの小物入れに仕舞い込んだ。






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霧の狐道262

2009-10-18 18:59:24 | E,霧の狐道
 面会人は大学生風の男二人で、山本爺にノートを見せていた。
山本爺はベッドの布団から眼だけを出しながら、何かモゴモゴ言っている。
布団で口が隠れているから、山本爺の声はくぐもって聞き取れない。
 大学生風の男二人のうちの一人が山本爺に言った。

「 先生、この数式は、モジュラー関数を使って解けばいいんですか?」
「 モゴモゴモゴ・・・。」
「 えっ・・・・。」
「 モゴモゴモゴ・・・。」
「 あ、そうか・・・。」
「 モゴモゴ・・・。」
「 あ、そうなんですか、分かりました。」
「 モゴモゴモゴ・・・。」
「 ホントに、ありがとうございました。」
「 モゴモゴ・・・。」
「 助かりました。」
「 モゴモゴモゴモゴ・・・。」
「 はい、じゃ、帰ります。
 先生も早く良くなって下さい!」
「 モゴ・・・。」

 山本爺のモゴが終わると、大学生風の男二人は大きく礼をして帰って行った。
どうも、面会の終わりの方に戻って来たようだ。

“ もう少し早く帰って来たら、山本爺の素性が分かったのに・・・。”

俺は惜しいことをしたなと思った。







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霧の狐道261

2009-10-13 18:41:02 | E,霧の狐道
 俺は諦めて窓の正面を見る。
川の向こうの太い道には、多くの自動車が元気にせわしなく走っている。

“ あれと比べりゃ、駐車場の自動車は、しばしの休憩ってとこか・・・。
 そうだよな、この敷地の外は普通の生活があるんだよな。
  俺もどっちかと言うと休憩か・・・。
 それに・・・、ずっと休憩ってイヤだな。
 長いの困るよな。”

 俺の頭の中の引出しから、狸小路やお揚げ婆や女の子や訳の分からん黒いヤツが顔を出す。
引出しがパタンパタンと開いたり閉まったりしながら、順にこいつ等の顔がヒョコヒョコ出たり入ったりするのだ。

“ ううう、気が滅入る。
 取り敢えず、病室に戻ろう。”

 俺は窓から部屋へと車椅子の向きを変えた。
のどかな風景と裏腹に、俺の心は重く沈んでいた。




 俺は談話室から病室に戻った。
病室に一歩入って、俺は立ち止まった。

“ あれっ!?
 面会者がいる・・・。”

驚いたことに、病室には山本爺の面会人が二人もいたのだ。

“ 誰かな?
 山本爺の子供にしては若すぎるような・・・。”






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霧の狐道260

2009-10-11 17:49:03 | E,霧の狐道
 入院した次の日に、看護婦さんに病院の中を案内してもらったとき、玄関は一箇所で人の流れはそこに集約されると看護婦さんが言っていた。
怪しい人が入って来ないように、門衛さんと玄関の案内で眼を光らせていると言う話だった。
もっとも、案内されたときに見た玄関の外の景色は、玄関口の大きなガラス越しにチラッと見ただけだった。
 次に、俺はオデコを窓ガラスに付けたまま上目遣いに上を見た。

“ 見えないな・・・。”

青い空は見えるが、角度的に建物の屋上は見えない。

“ 今、誰か落ちて来て眼が合ったら怖いよな・・・。”

碌でも無いイメージしか浮かばない。
 俺は上目遣いのまま、眼を左右に動かす。

“ どっから、どう向きに落ちたのかな?”

分からないまま、視線は雲が所々浮かんだ青空を左右する。

“ 何処か、分からないな・・・・。”

これは龍平に詳しく聞いて見るしか手は無い。





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霧の狐道259

2009-10-06 18:46:10 | E,霧の狐道
 俺は窓にオデコをくっ付けて、窓の真下を見ようとした。
でも、建物の真下は、窓を開けて乗り出さないと見えない。
 ちょうど真下は見えなかったが、病院の建物に沿って遥か下に、建物に垂直に駐車場の白い線が付けてあり、その白い線の間に自動車が建物の方に頭を向けて何台も止まっていた。
利用者が外来か職員かは分からないが、空きも無くズラッとたくさんの自動車が停めてある。
その一つ一つの自動車全体は見えないが、自動車の尻の先の並びだけは見えた。
ちょうど、おもちゃのミニカーの尻が箱からはみ出したみたいな感じだ。

 俺は病院の敷地から、徐々に外の世界を眺めた。
建物から順に外に辿ると、自動車の駐車場、駐車場の通路道、低い木々が左右に繋がって、その向こうが金網のフェンス、フェンスの外は2mぐらいの小さいドブ川があって、その向こうに太めの道が左右に走っている。
 幹線道路なのか、たくさんのちっこい自動車たちが、引っ切り無しに左から右へ、右から左へとセコセコ走っている。
道の向こうの並びは、病院の付属施設らしい建物やマンションや民家が並んでいる。
そのマンションの一階はコンビニや喫茶店が入っていて、人の出入りも見える。
 左に顔を振ると、病院の玄関前のような感じのところがあった。
左右に伸びたフェンスの真ん中辺りに広めの橋があって、自動車や外来の人の行き来が見える。
 橋の向こう袂にはバス停がある。

“ あれって、きっと山藤中央病院前って名前だろうな・・・。”

当たり前だが、遠すぎてバス停の丸い看板の名前は見えない。
 そして、橋の病院側の袂には門衛さんの建物が建っていて、警備員の格好をした人が人の出入りを見張っている。

“ 出入り口はあそこだな。
 俺はカラオケ趣味の爺婆の軽トラで、荷物みたいにあそこから運び込ま
 れたんだなァ・・・。
 来たときは夜だったし、体がヨレヨレだったから、病院の外の状態をゆ
 っくり見てられ無かったからなァ・・・。”






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