日々の恐怖 11月20日 病院関連話(12) ご遺体
「 前のホストとは違う話なんだけど。」
と、彼女は言う。
看護師の給料なんてさして高いものではない。
けれど基本、家と職場の往復だけなんで貯まるいっぽう。
中にはネットでブランド品を買いあさったり、周りの顰蹙の目をものともせず長期休暇を取って海外旅行に行く強者もいるけど。
先輩の1人が真面目な人で、次の師長候補くらいのベテランだった。
でも、ホストクラブに嵌った。
あるホストに入れあげて入れあげて、おそらく一千万以上はつぎ込んでたんじゃないかと。
そのホストも図々しい奴で、先輩の家(一人暮らし)に入り浸って、そして病院にまで通っていた。
まあ肝臓が悪いのは分かるから内科に来てたんだと思う。
そこまではまあ良い。(良くないが)
そして、先輩を使って薬の横流しをさせていた。
処方箋というものは先生以外絶対に作ってはいけない。(違法行為)
でも先生から事務局に渡る際に人手を渡る。
そこを利用して、処方箋の指示書をすり替えていたらしい。
民間では入手困難な薬を格安で入手し、ネットで売りさばいていたんだと。
で、そのホストに入れ込んでいた(看護師ではない)別の女が、それを薄々気付いていて、ストーカーまがいの事をして証拠を掴み警察に通報した。
これは想像だけど、その証拠をちらつかせてホスト男を自分のところに呼び戻したかったんじゃないかな。
でもイザコザして、結果的に男の手は後ろに回った。
そして簡単にゲロしてしまい、先輩まで警察のお世話になる羽目になった。
まあやっていた事は明らかな犯罪行為だけど。
男の方は前科もあって実刑。先輩は執行猶予だったけど、さすがに職場に居られず退職した。
長かったけどここまでが前振り。
これは奇縁というのか、彼女(先輩の方ね)の看護師学校時代の友人がある病院に勤めていて、同窓会的な場所で久しぶりに会ったの。
その病院は警察から委託されて死体の検死とかもやってる病院で、最近お世話したご遺体の話を話していて、件のホスト男だとすぐに気づいたんだって。
「 あれはカマを掘られて抵抗して、リンチにあったんだね。
でも、あそこまで凄惨なのは見たことない。」
と友人。
「 たぶん先輩の恨みが何かを伝ってその場に届いたんだね。」
と彼女。
女の恨みは恐ろしい。
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