大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道239

2009-06-28 19:26:55 | E,霧の狐道
その声に女の子はこちらをゆっくり見る。

“ ちょっと、ヤバイかな・・・。”

 俺と龍平は少し体を引いて低くした。
でも、女の子はすぐに首を回して、病室の扉の方に顔の向きを変える。
そして、そのまま扉に向かって、黒い影と半透明な山本爺を後ろに従え進んで行った。

“ 出て行きそうだな・・・。”

扉が“ギッ!”と言う音と共に開いた。
 スルスルと三人はそのまま扉から出て行く。
扉が閉まって、俺は龍平の方を向いて言った。

「 出て行ったな。」
「 今日のところは、そうやな。」
「 ホラ、黒い影がムクムクだろ。」

龍平は、少し震えながら俺に返した。

「 黒い影なんてもんやないで・・・。
 グチャグチャに潰れた男や・・・。」
「 えっ、俺には黒い影しか見えないけど・・・。」
「 あ~、強烈なものを見てしもた・・・。」
「 龍平には、そう見えるのか・・・。」

俺は龍平ほど鮮明に見えなくて良かったと正直思った。



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霧の狐道238

2009-06-25 18:42:03 | E,霧の狐道
 俺と龍平は布団から眼だけを出して女の子を見詰める。
女の子は白い顔をこちらに向け、俺の眼を見て言った。

「 でも、明日は特別な日、必ず遊べるわ。
 ふふふ・・・。」

俺は由紀ちゃんのお守りをギュッと握った。
女の子は向きを変え、田中爺のベッドに進んだ。

「 寝てる・・。」

 そして、次に山本爺のベッドに近付く。
ベッドの横に立った女の子は、盛り上がっている布団に右手を翳した。
すると、半透明な山本爺が布団を突き抜け、ベッドを降りて女の子の横に立った。
 布団の大きな盛り上がりはプシュっと潰れて低くなり、人が寝ている程度の膨らみを残して平たくなる。
龍平が小さな声で俺に訊いた。

「 あれは・・・?」
「 分からん?
 昨日は、あんなの無かった・・・。」

 女の子は、半透明な山本爺を従え空きベッドに進む。
そして、右手でベッドの上を丸く擦った。
ベッドからは、昨日と同じように黒い影が起き上がりベッドを降りて女の子の横に立つ。
それを見て、龍平が声を詰まらせるのが聞こえた。

「 うっ・・・。」




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霧の狐道237

2009-06-22 20:07:29 | E,霧の狐道
龍平は布団から眼を出して、扉の方を見始めた。

“ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん。”

音が近付いて来る。
 扉の前で音が止まる。
扉がス~ッと開いた。
赤い着物の女の子が音も無く入って来る。
左手には赤い鞠を持っている。
俺と龍平はジッとしていた。

「 ごくん。」

龍平の生唾を飲む音が聞こえる.
俺は、手から汗が噴き出す。
 扉から入ってきた女の子は、俺と龍平の寝ているベッドの足元で一旦止まった。

「 うふっ、二人・・・。」

女の子の白い顔に口元の赤さが引き立つ。
女の子は言った。

「 そうなの・・・・・。」



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霧の狐道236

2009-06-19 20:07:45 | E,霧の狐道
 龍平が俺に顔を近付けて言った。

「 それより、音がするで・・。」

耳を澄ますと、遠くから鞠をつく音が、田中爺のいびきの途切れ途切れの隙間に、小さく聞こえて来る。

“ てんてんてん、てんてんてん、てんてんてん。”

俺は龍平に言った。

「 来た・・・。」
「 そうらしいな・・。」

俺は由紀ちゃんのお守りを握り締めた。

「 ゴホン!」

山本爺が、咳を一つした。

「 山本爺、起きてるな。」
「 わいもそう思う。
 あの音、聞こえてるんやろか?」
「 おそらく・・。」

 山本爺の布団は大きく盛り上がっている。
布団を被って座っているのだろう。

“ う、ぐぐぐぐぐ、ぐっ!
 ・・・・・・・・・。”

田中爺のいびきが、突然、止んだ。
龍平が俺に訊いた。

「 死んだ?」
「 生きてるよ。」




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霧の狐道235

2009-06-15 20:55:56 | E,霧の狐道
俺はちょっと壁を見てから龍平に言った。

「 玄関からじゃないんだけど・・・。」
「 玄関でなかったら、どっから来るんだよ?」
「 壁から出て来る・・・。」
「 えっ、そいつ等って、壁に住んでるんか?」
「 いや、壁の向こうの何処か遠いところ・・・。」
「 遠いところから飛んで来るんか?」
「 お経と共に飛んで来て、壁に赤い輪っかを作って、そこからニョロンと出
 て来るんだ。」
「 う~ん・・・、信じないと言うことではないんだけど・・・。
 で、ヘビ次郎ってのは・・・?」
「 お揚げ婆さんは、ヘビ次郎に乗っかって来るんだ。」
「 えっ、お揚げ婆さんってヘビに乗っかって来るんか?」
「 ああ、そうなんだ・・・。
 初日はガマ太郎の乗ってやって来て、二日目は弟のヘビ次郎だよ。」
「 ・・・・・・・????」

龍平の眼がジワジワと疑い始めている。

「 ガマ太郎って、カエルか?」
「 そう。」
「 それっておかしいで、ガマ太郎がカエルだったら、ガマ太郎の弟もカエル
 だろ。
 どうして、弟がヘビなんだよ?」
「 それはお揚げ婆さんに聞いて見ないと分からないなァ。
 ん・・・・・。
 これって、日替わりだな。
 じゃ、明日は何に乗って来るんだろ?
 龍平、分かる?」
「 あ~、もう、言ってることが分からん。
 それ、分からん、それ、理解不能・・・。
  あっ、そうか、分かった。
 変な夢でも見たな。
 プレッシャーに弱いな、貴志。」
「 えっとォ・・・・・。」
「 ハイ、もう、漫才、オシマイ、オシマイ!」



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霧の狐道234

2009-06-10 19:11:34 | E,霧の狐道
 俺が眼を覚ましたことに気付いた龍平が、俺の方に向き直って言った。

「 なんちゅういびきや。
 ホント寝られん。
 貴志、おまえ、よく寝られるなァ~。」
「 いや、その・・・・。」

俺は、ずっと寝ていたのか寝ていないのか、どうもよく分からなかったので返事のしようが無い。
 俺は試しにお揚げ婆さんとヘビ次郎について、龍平が何か知っているかどうか訊いて見ることにした。

「 龍平、ちょっと訊くけど、何か見なかった?」
「 ん・・・・?」
「 いや・・・、龍平は俺より早く起きていただろ。」
「 ああ。」
「 だから、俺が起きる前にさァ、この病室で何か怪しいヤツとか見なかった
 かなっと思って・・。」
「 怪しいヤツ・・・・?」
「 その、さあ・・・。
 ええっと・・、お揚げ婆さんとかヘビ次郎とか、そんな感じのヤツ・・・?」
「 何、言ってんだよ、貴志。
 真面目な顔して冗談かァ?
 その、お揚げ婆さんって誰だよ?
 ヘビ次郎って、何だよ?」
「 いや、お揚げ婆さんはお揚げ婆さんと言う婆さんで、ヘビ次郎はガマ太郎
 の弟のヘビ・・・・。」
「 どうして婆さんに、お揚げが付いてるんだよ??
 頭にお挙げを乗っけた婆さんか?」
「 いや、お揚げの取り合いをした婆さんなんだけど・・・。」
「 貴志が、か?」
「 そう・・・。」
「 何時?」
「 この病院に入る前・・・。」
「 で、そいつに恨まれてるってことか?」
「 たぶん・・・。」
「 それって、かなり怪しい格好をしてる?」
「 うん、かなり怪しい。」
「 じゃ、そんなヤツ、夜中に入って来れないぞ。
 守衛さんに、玄関で阻止されてるよ。」




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霧の狐道233

2009-06-07 19:12:04 | E,霧の狐道
  §13 夜



「 もうすぐだ!」

龍平の声が耳元で聞こえた。

「 おい、起きろ!
 2時になるぞ!」

俺は眼を開けた。
暗い天井が見える。
でも、俺はまだ眼を開けたまま、ぼ~っとしていた。
これが夢か現実か明確ではなかったからだ。

“ 俺、起きたのかな・・・?
 龍平に呼ばれて眼が開いたから、ホントに起きたってことかな・・。”

田中爺のいびきが聞こえる。

“ ぐごごごごごごぉ~、ぐごごごごごごぉ~。
 ズ~、ズ~、ズ~。”

 俺は右に寝ている龍平を見た。
龍平は枕元にあった時計を斜めにし、扉のすりガラス窓から僅かに漏れる光にかざして見ていた。

“ これって、現実っぽいな・・・。”

俺は意識が徐々にはっきりして来る。




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霧の狐道232

2009-06-02 20:08:17 | E,霧の狐道
 俺はお守りの角度を変えて見たが、どうしても暗い中では図柄は見えない。

“ あれっ、さっきのって夢かな??
 そう言えば、昨日、お揚げ婆さんがレム睡眠中に現れるって言ってたな・・。
 さっき目覚めたように思うんだけど、今、目覚めたからさっきのは夢の中で
 目覚めた夢だったのかな。
 じゃ、今、目覚めたこれも夢かも知れないぞ?
 もう、どれが夢でどれが現実か、何が何だか分からなくなって来たぞ・・。”

もう一度横を見ると、左手を突っ張ったまま龍平はす~す~寝ている。

“ う~~ん、これは・・・??
 お守りが効くって思ったのも夢だったら、効くかどうか分からなくなって来
 たぞ。
 効かなかったら、ちょっとヤバイかもしれないぞ。
  女の子に取り憑かれたら、大変だ。
 いや、もう取り憑かれてるのか・・。
 ああ、もう、、ヤバイな、ヤバイな。
 でも、効くような気もするし・・・。
 龍平も居るし、心強いことは確かだし・・・。
 ・・・、今、何時かな?”

 龍平の左手を除けて、枕元の時計を見るとまだ1時だ。
まだ、2時まで時間がある。

“ ええい、もう、考えるのは止めだ。
 体力を消耗するだけだ。
 まあ、何とかなるだろう・・・。
 取り敢えず、もう、ちょっと眠っておこう。”

ヤバイときの現実逃避だ。
俺は布団を首まで引っ張って,再度、眠りに付くことにした。

“ 今度は変な夢は見ないように・・・。”

俺が眼を瞑ると、暗い病室に静けさが広がった。



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